第242話・依頼03・銀視点04
「何だい銀ちゃん、相談って」
『
みんなで話し合った翌日、
さっそくオラは働かせてもらっている老舗旅館『
板長に雑談がてら、話を振ってみた。
「知り合いがこっちに、ねえ。
それで住める場所かあ―――
ウチの従業員だったら、寮とか準備出来ると思うけど……」
考え込む板長に、オラは首を左右に振り、
「いや、まだ来ると決まったわけじゃないですだよ。
それにオラも
「あー、
それにいくら田舎の家が広いとはいえ、彼女持ちでもあるもんなあ。
その彼女さんもいずれこっちに来るつもりなんだろ?」
「加奈さんはそう言ってくれているだべ。
だからこそ、新たな居候について話をするのは気が引けるっぺよ」
そんなやり取りをしていると、女将さんが現れ、
「何の話だい?」
「あー、銀ちゃんの友達? がこっち来たがっているんだと。
何でも都会が合わないとかでさ。
ただ住む場所とかどうすんだ? って話していて」
それを聞いた女将さんはオラの顔をのぞき込むように近付いて、
「んー、若い人かい?」
「オラと同年代だべ、そんなに変わらないと思うだ」
オラの言葉に、女将さんは考え込む。
「何だ? もしかして住む場所に心当たりでも?」
「そういうわけじゃないんだけどさ、山ちゃんって知ってる?」
「あー、ウチに獲物を卸してくれる猟師の爺さんか」
板前の言葉通り、定期的にではないものの……
『源一』には何人か獲物の売買契約を結んでいる人がいるだ。
話している山ちゃんもそのうちの1人だべが―――
「その山ちゃんなんだけどさ、もう80近いし……
足腰がヤバめだから引退するって言ってたのよ。
東京に娘夫婦がいるから、そっちに呼ばれているんだって。
ただそうなると、家とか山小屋とか何とかしなきゃいけないんだけど、
こんな田舎、二束三文でも売れないでしょ?
それで困っててねえ」
そこで女将さんはオラに顔を向ける。
「もしその知り合いっていうのが買ってくれるんだったら、
渡りに船なんだけど」
「うーん、そいつも少しくらいは持っていると思うから、
いいと思うだべ。
けどいくらくらいするんだべ?」
「アッハッハ!
さっきも言ったでしょ? 二束三文って。
そうね、山小屋とか土地とか含めても―――
50万あれば余裕じゃない?」
「なるほど。場所はどのへんだべか」
「あー、今度会った時聞いてみるわね」
こうしてオラは、ひとまず候補地を見つける事に成功しただ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます