第118話・初勤務


「えー、では……

 今日からサーバー管理部門で働いて頂く校倉あぜくらさんです。


 と言ってもリモートワークですが」


「校倉理奈りなといいます。

 みなさん、よろしくお願いしますっ!」


俺と武田さんが勤めている会社で、一人の新入社員の女の子が頭を下げる。


まだあどけなさを残す外見に、セミロングの髪―――

そう、彼女は倉ぼっこだ。


それがどうして東京の俺の職場にいるのかと言うと、

あれはぬし様と弥月みつきさんの兄が晴れてカップルになった後、


『それでぇ~』


『結局アタシたちはどうするんですか?』


という、理奈&詩音からの訴えがあり、


先に琉絆空るきあさんと舞桜まおさんの仲を正式に認めてもらうという

目標が出来た今、すぐにどうこうという事は無いだろうと鬼っ子から

話があり、


つまり当分は山から動かない、という事で落ち着いた。

まあ彼も両親の説得に時間はかかるだろうしな。


そしてその間に自分たちも動きたい(出会いを見つけたい)、

という要望で―――

PCと相性の良い理奈は自分たちの会社に来た、というわけだ。


なお、銀は推古銀すいこ・ぎん

詩音は和泉詩音いずみ・しおんという名前をもらった。


理奈・銀・詩音の名前はそのまま継承してくれたらしい。


姓名は琉絆空さんが戸籍を作る際、担当者に適当に考えてもらったと

言っていたが……


理奈の場合、校倉とは―――

古い高床式の倉を意味し、正倉院しょうそういんの宝物庫にも使われている形式。


銀の場合は河童の中国名である水虎すいこから、

詩音の場合は『芦屋道満大内鑑あしやどうまんおおうちかがみ』で、

安倍晴明あべのせいめいの母親である狐が残したとされる和歌、


恋しくば たずね来てみよ 和泉いずみなる

信太しのだの森の うらみくずの葉


という一首から、和泉の字を取ったのだという。


この事から、かなり学がある人物だという事が伺える。


ちなみに銀は留守番だが、俺の遠縁という事になっているので

人間として老舗旅館『源一げんいち』の人たちが来たら対応して

もらっていたりする。

また詩音も東京に出て来ていて……こっちは秋葉原のメイド喫茶に

勤める事になった。


加奈さんの知り合い経由で面接してもらったらしいのだが、

最初に男だと断ったものの、そこで働くメイドたちから

是非にと言われ、


理奈と同じく俺と裕子さんのスケジュールに合わせ、週1~3の割合で

勤務している。

(メイド喫茶は土日もやっているので、俺が週末に上京する場合は

そこで働く感じ)


というか彼女(?)の相手は結局男女どちらになるのだろうか―――

そんな事を考えながら勤務時間が始まった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る