第119話・初仕事・理奈視点02


僕の名前は理奈。

倉ぼっこというあやかしなの。


そして今僕は、人間社会で仕事に就いていた。


僕はもともと家屋敷を守る妖で―――

名前をもらってからは、建物に関する事ならばたいていは制御出来るように

なっていた。


PCの管理者権限もそれに入るようで……

なので僕は今、この会社のサーバ管理に関する仕事を任された。


PCの扱いはミツの物で少しは慣れていたものの、詳しい事までは

わからず―――

なので、僕に与えられた権限の中でサーバに何か起こったら、教えて

欲しいとの事だった。


僕に取っても初仕事。

まあ何かあったらゆーちゃん(武田裕子)から自分を呼んで、と言われて

いるので、無理の無い範囲でやっていこうかなと思う。


「……んっ?」


そこで僕は異常に気付く。

与えられたPCを通して、何か訴えてきているような―――


「何かどこかからつつかれているっぽいなー。

 ウイルス対策やファイヤーウォール系はあるけど」


僕はどうしたものかと悩んでいると、


「どうかしたの? 校倉あぜくらさん」


ちょうどそこへゆーちゃんが様子見なのか来てくれたので、


「あ、ゆー……じゃなくて武田部長。

 何かつつかれているみたいです、この子」


僕がPCを指さして説明すると、


「……! ちょっと待って。校倉さんもついて来てくれる?」


彼女は早足で僕と一緒にそこを離れ、すぐに他の責任者らしき男性の

机に向かい、何やら話し合いに入る。


その男性は僕に向かって質問して来たので、


「えーと、何かつつかれているっぽいんです。

 それであの子、PCが疲れて来てるってゆーか」


「あ、ええと―――と、とにかく調べてくれる?

 外部攻撃を受けているのは間違い無いと思うから」


「は、はあ」


ミツより少し若そうなその男性がキーボードに何やら打ち込むと、


「あ、ホントだ。どうも海外からっぽいなー。

 しかしどうやって気付いたの? こんなの」


「え? だからあのPCがつつかれているーって」


そこでゆっちーがすかさず入り、


「あ、校倉さんは何か直感でわかるっていうか。

 ただ腕は確かなので―――」


「あー……まあ今の若い子は子供の頃からPCがあるのが当たり前の

 生活ですし、そういう人っていますよね。

 うらやましいです。


 わかりました、後はこっちで対応しますんでー」


早々に会話を切り上げ、ゆっちーの指示で僕は自分の机に戻った。


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