第212話・見張り01


「頼みたい事がある」


琉絆空るきあが特別第六課のメンバーに対し告げる。


「例のメイド喫茶に、火を操るあやかしが現れたとの事ですが―――

 そこを見張れと」


女性職員が書類を見ながら聞き返す。


「恐らくソイツが飛縁魔ひのえんまだ。

 それに雪女とも一緒だったらしい」


「聞いています。

 それに、40代くらいの男性が火傷で運ばれた事件がありましたが、

 彼女―――飛縁魔が関与している疑いが強いとも」


「その妖2名が詩音さんをスカウトに現れ……またそこに立ち寄る

 可能性が高いとの事ですが。


 でもどうして私たちなんですか?」


他の女性職員も彼に問う。


彼―――琉絆空の指示は、女性を中心としてメイド喫茶を見張れ、

という事だったからだ。


「ですが、通常こういう店では男の客の方が不審がられないのでは」


男性職員が手を挙げて当然の疑問を口にする。


「まあ、通常なら男性客かカップルがせいぜいなんだろうけど……

 あの店は今は女性客が中心らしい」


そして琉絆空は、野狐である『詩音』の覚醒後の姿をスマホで見せる。


「おぉ~……噂には聞いていましたが美人さんですねぇ」


「確かにこの人なら、女性客がメインになるかも」


同性と思って女性メンバーはその画像を見つめるが、


「えっとまあ、何ていうか……


 彼は……和泉詩音いずみ・しおんは男だ」


「は?」


「へ?」


言い辛そうな彼の口ら出た言葉に、まず男性職員たちが口をポカンと開け、


「この狐娘さんが?」


「男だ」


「生物学分類上?」


「性別は男性となる」


と、琉絆空と複数の女性職員のやり取りが続き―――


「いやいやいやっ!?

 アレですか!? 化けているからですか!?」


「それは関係無いと思う。

 幼馴染の人間がいるが、ずっと女性だと思い込んでいたようだし」


「確かにまあ、今時性別不詳の人間もいるっちゃいますけど……

 言われなきゃわからんでしょこんなの」


今度は男性職員との対応に追われる。


「ほんじゃはーい! はいはい!

 アタシから行きまーす!!」


「いや別に1人だけで行くって話じゃないでしょ!?

 2人同時に行っても……!」


「時間ずらして行くのはどうです!?

 1日3交代制にして―――」


と、なぜか始まった女性陣の争いを横目に、


「それで我々は」


「男性職員はバックアップしてくれ。

 こちらも弥月みつき家か妖、どちらか1人を必ず

 寄越すから」


と、そのメイド喫茶の見張りについて詰めていった。


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