第175話・妖怪(人間ベース)の組織01


「で、どうなんだ?」


「目ぼしいチンピラに配って実験を繰り返しちゃいますが……

 それで警察のお世話になるヤツが続出しましてね」


「ちょっと派手にやり過ぎよ、あなた達」


都内・某所にあるマンションの一室。


そこでスーツ姿や私服の二十代と思われる男女が、5人ほど集まって

話し合っていた。


「警察はどう見るかな?」


短髪の細面の男がタバコに火をつけながら独り言のようにつぶやくと、


「さすがにオカルト対策班なんざ作る事は無いだろうが」


「薬が絡んでいるからね。

 あと、協力を要請するという事は十分考えられるわ」


サラリーマン風の男と、眼鏡をかけた秘書風の女性が意見を語り、


「まあいい。薬の提供も足がつくような下手な方法は取っていないしな。


 それより例の件だが……」


「低級妖怪を仲間にするかどうかってヤツか?」


「私たちはあくまでも人間ベースだけで行動するって決めたじゃないの」


タバコを吸っていた男はいったんそれを灰皿に置いて、


「なぁに、コマだ。使える手先はあっても困らん」


それを聞いた他の男女は頭をかいたり飲み物に口を付けたりして、


「言っておくが、人間としての常識が通用しないぞあの連中」


「この前、化け猫に会ったけど―――

 野生動物が意思疎通出来るようになった、ってレベルよ?


 私たちみたいに、合法的に考えて動けるタマじゃないわ」


否定的な意見が続く中、それでも最初に低級妖怪を仲間にすると

言い出した男は話を続け、


「別に行動を共にするって意味じゃない。

 あくまでも下っ端として使うって意味だ。


 警察に目をつけられる可能性が出てきた以上、ダミーは必要だと

 思うがね」


それを聞いた他の4人は顔を見合わせ、


「そういう意味なら……アリっちゃアリか?」


「駒は駒でも捨て駒ですか」


「確かに、その方がかく乱出来そうね」


と、それぞれがうなずき合い―――

そこで話は一段落した。


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