第222話・分析06


「これがー?」


「ええ、例の動画が送られて来たPCです」


ストレートの黒髪を腰まで伸ばした、高校生くらいの童顔をした女性、

倉ぼっこの理奈が1台のPCを前に座る。


その後ろには俺と裕子さん、弥月みつきさんの兄の方もいて、


「すいません安武やすべさん。

 特別第六課まで来て頂いて―――」


「理奈が関わっている事ですから。

 それに俺も、弥月家の協力者ですからね」


中肉中背の青年、琉絆空るきあさんと言葉を交わし、


「私も加奈さんと『活動』を始めて長いですし」


眼鏡をかけたキャリアウーマン風の女性―――

俺の彼女である武田さんも続く。


そしてそんな俺たちを遠巻きに見つめる、第六課の職員たち。


「ええと……PCの前に座っている人があやかしでしょうか」


恐る恐る聞いてくる男性に理奈は笑顔で軽く手を振って、


「そーだよ! 倉ぼっこっていうんだ♪」


それを聞いた職員たちは男女混ざって顔を見合わせる。


「人間と変わらないな」


「でも、元々が人間のような姿かたちのタイプだから……」


と、口々に感想を述べてくる。

確かに俺も初対面だったら、理奈が妖怪だなんて信じないだろう。


「じゃあ校倉あぜくらさん、始めてくれ」


「あいよー」


琉絆空さんの指示で、理奈がPCに向かうと手慣れた感じで

キーボードに何かしら打ち込んでいく。


「普通にPC扱っているな―――」


「どう見ても、若いOLの子にしか見えません」


ギャラリーたちの反応を背中に、彼女は作業を続け、


「うん。そーそー。この動画を送って来たコ、わかる?


 え? あちこち寄っているから時間がかかるかも?」


「いくつかプロキシサーバーを経由しているのかも知れませんね。

 暗号化はどう?」


「ちょっと待って。

 んー、データ自体はそのまま送り付けた感じかな」


途中で裕子も混じり、サポートを行う。

理奈は直感的にPCと『対話』して作業を行うが、専門的な知識は

そこまでないらしい。


「向こうのPCに何かさせるー?」


「いや、そこまでやる必要はない。

 ただ発信元を突き止めればいいだけだから」


琉絆空さんが指示を出し、第六課の職員たちが見守る中……

作業は続けられた。


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