第221話・分析05


「はい。もしもし武田ですが―――弥月みつきさん?」


会社でスマホに連絡を受けた彼女は、琉絆空るきあからの話に対応する。


「加奈さんは出社していますけど……え? 違う?

 校倉あぜくらさんの方ですか?」


妹ではなく、倉ぼっこの理奈を指名してきた事で裕子は戸惑うが、


「はあ……はあ、なるほど。少々お待ちください」


事務的に受け答えると、彼女はそのまま同じ社内にいる

理奈のところへと向かった。




「データがどこから送られたかわかるかって?」


裕子は理奈を一番狭い会議室へと呼び出すと、スマホを渡して直接

琉絆空と話してもらう。


「んー、リアルタイムでチクチクして来ているような状態だったらすぐに

 わかるんだけど。

 PCその子との相性次第かなー。


 んー……わかった。

 とにかくPCを見せてもらえればいいよー。

 うん、現地まで行く必要は無いと思う」


倉ぼっこ・理奈が以前ハッカー攻撃を受けていた際、逆にたどって相手の

PCを乗っ取った事を知っていた琉絆空は、データのやり取りもわかるかと

電話してきたのである。


そして通話を済ませた彼女は裕子にスマホを返すと、


「何だったの?」


「犯人が送って来たらしい動画があるから―――

 その送り先を突き止められないかって。


 そのPCが特別第六課に到着次第、僕に見て欲しいんだって」


それを聞いた武田は目を白黒させて、


「そんな事までわかるの?」


「やった事無いからわかんない。

 とにかく数日中にそのPCが届くみたいだから、やってみるよー」


あっさり何気なく答える彼女に、裕子は両腕を組んで、


「でもそれが出来たとしたら、本当に反則級の能力よ。

 あー、会社ウチにスカウトしてホント良かったわ。


 でもそこまで可能だとすると……

 データのやり取りに関してはほぼ無敵になるわね。

 むしろ出来ない事は無い、みたいな」


「でもアナログだとちょっとマズいよ。

 単にUSBとか物質媒体で送られて来たら、さすがにわからないもん」


「そこは古い手段が勝っちゃうかー」


人間とあやかしはそんな話をしつつ、会議室を後にした。


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