第233話・作戦06


「本当に男なのか……!?」


「『飛縁魔ひのえんま』や『雪女』より美人さんじゃねーか」


ボサボサの短髪をした『烏天狗からすてんぐ』と、人畜無害と言ったモブ顔の

煙羅煙羅えんらえんら』が驚きの声を上げる。


とあるマンションの一室―――そこに5人の人外が集まり、

野狐やこである詩音と『ミツヤ』を迎え入れていた。


「どうですか、『雲外鏡うんがいきょう』様!」


「またとない逸品ですよこの兄弟は……!

 ビジュアル的な意味で! ビジュアル的な意味で!!」


眼鏡をかけた秘書風の女性、『飛縁魔』と、短髪のボーイッシュな

女性『雪女』は共に興奮しながら語る。


「どうでもいいが『煙羅煙羅』を両側から火と氷で攻めるのはやめてやれ。

 余計な一言だったとは思うが」


細面の、まだ20代そこそこに見える彼らのリーダー、『雲外鏡』は

彼女たちに注意を促す。


「そういえば、人間の協力者はいるのか?

 やはりああいう店で働いているところを見ると」


「はい、お化粧とか買い物とかで親しくなりまして」


「アタシはただ預かってもらうというお話だったのですが、

 なぜかなし崩しに……」


長いストレートのシルバーヘアーを揺らしながら、詩音と、

その弟(という事になっている)のおかっぱ頭の美少年、『ミツヤ』が

続けて出た問いに答える。


「ウチの『仕事』についてはどこまで?」


『烏天狗』の質問に、彼女たちはそちらへ振り向き、


「ここに案内される道中で聞きましたが―――」


「復讐とか恨みを晴らす? というのを聞きました」


そこでようやく両側からの拘束が解かれた『煙羅煙羅』が、


「ま、ボランティアじゃないけどねぇ。


 中には対象からもらうっていうのもあるけど、

 それだとたいていタダ働き」


「そういう場合は、新たな情報源ソースとなってもらうか……

 他の悪党の情報を仕入れる事に使っているが」


苦笑しながらソファに座り直し、補足するように『烏天狗』が続く。


「君たちもあやかしなら―――

 人間の本性というものを知っていると思うがね。


 我々は元人間だから、それこそ身を以て理解しているよ」


『雲外鏡』の言葉に、他のメンバーは自嘲気味に笑う。


「これで、ここの人たちは全員?」


「そうね。あと全員が元人間の妖よ」


「他に質問はあるかしら?」


詩音の問いに『飛縁魔』と『雪女』が答え、


「じゃあ……アタシたちのメンバーを紹介しても?」


「何?」


彼女の言葉とその視線の先を『雲外鏡』が追うと―――

ベランダに、4人の男女がいつの間にか立っていた。


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