第315話・エピローグ3・END


「すごいな……!

 これが野狐たちの住むお屋敷か」


「屋敷というか、もはや御殿ごてんですわね」


「早く入ろー!!」


詩音と女子高生3人組の結婚から半年後、野狐たちの拠点が完成したとの事で

そのお披露目パーティーに呼ばれたのだが、


何かの旅館かアトラクション施設かと思うくらいの、広大な純和風の建物に

俺も裕子も理奈も目を奪われる。


「まあこれでいいんじゃないっぺか。

 あの4人も今後はここに泊まるべ」


「部長もその~……

 彼女たちが来る度に一つ屋根の下、ベッドインプロレスを

 繰り広げられるのはいろいろと~……」


褐色肌の青年・川童かわこの銀と、ポニーテールの女性、加奈さん……

俺たちと同じカップル組が言い辛そうに語る。


まあ言われてみればな―――

詩音が帰郷する=俺の家に泊まる=寝室が一階と二階に

別れているとはいえ、


無限の体力を持つ女子高生3人組を相手にしている、

詩音との『あの時』の声がどうしても……


「そうだな、精神的には楽になりそうだ」


俺がそう言うと、裕子と理奈がうんうんと同意してうなずく。


「これはミツ様!

 本日はようこそおでくだされました……!」


長い銀髪をたなびかせた、覚醒後の詩音が俺たちを出迎える。


「お邪魔するよ。

 立派なお屋敷を建てたようで何よりだ」


「いえいえ!

 これもぬし様、引いてはミツ様の人徳じんとくによるものでございましょう」


それを聞いて気恥しくなる。

そもそも俺はもう『』であって人ではない。


それにこの屋敷を建てた財源は鬼の舞桜まおさんだ。

そして発注先はもちろん島村建設。


『大判三十枚あれば足りるか?』

『誠心誠意、やらせて頂きます!!』


というやり取りがあったとかなかったとか。

琉絆空るきあさんもすっかり管理者として馴染んでいるし、

今はカップルで山の守護をになっている。


そして今回は『事情』を知っている者しか招待されていない。

いわゆる近況報告と情報共有の場でもあった。


まず俺は『魔』となったが―――

『魔』は自分の眷属を作る事が出来るらしい。


そして寿命を共有させる事も出来るのだという。


そこで弥月みつき兄妹・銀と舞桜さんのカップル組が、俺の眷属にと

申し出て来た。


もちろん、裕子と理奈もだ。

さらに詩音とあの女子高生3人組も……


やはりみんな、愛する者と時を重ねたいのだろう。


雲外鏡うんがいきょうさんの研究もあるが、確実な手法があるのならと

全員で話し合った上でそれを選択。


後はまあ、主に人間の女性陣から『早く時間を止めろ』という切実なお願いも

あったのだが。


かくして俺は、野狐たちも含め―――

実質上、この土地のあやかしたちのおさに収まったのである。


「しかし、ミツ様に『魔』を託したあのお2人はいったい

 どうなさるのでしょうか」


詩音の言葉に、全員の視線が俺に集まる。


山本五郎左衛門さんもと・ごろうざえもんさんに神野悪五郎しんの・あくごろうさん……


実際にあの2人は長年のライバルでもあったらしいのだが、


どうあっても勝負がつかず、またお互いに手の内を知り尽くしており、

諦めかけていたところ、


人間の作り出した『ゲーム』なるものに出会った。


将棋やトランプなどはもちろん把握していたものの、コンピューターを使った

対戦ゲームを知り、


また己の魔力やそれまでの戦い方が全く通用しない、新しい勝負方法に

彼らはハマっていき、


その対戦にしばらく専念するため、俺と雲外鏡さんを『後継』に

指名したのであった。


聞いてみれば馬鹿馬鹿しい理由なのだが、当人たちはいたって真剣であり、


また一時的にしろ妖の上位存在である彼らがその活動を停止する事は、

どんな影響を及ぼすかわからない、という事情もあったとの事。


まあどんな形であれ、こちらは懸念されていた寿命問題をクリア出来たのだ。

WinWin、という事にしておこう。


後は結婚、という事になるが―――

これは人間社会で暮らす以上、正式にはどちらかとしか入籍出来ないよなあ、

とこの前2人に相談したところ、


『そんなの、僕が役所のPCに侵入してどうとでもするからいーよー。

 バレたらコンピューターのバグだったって通るし』


と、理奈から解決策というか爆弾発言を聞かされ、さらにその事は

裕子や女子高生3人組ともすでに話し合って決めていたとの事。


まあその時はその時だ……ウン。


「おう、来たかミツ! 新しい主様よ」


「何か押し付けるような形になってすいません」


廊下の奥から、舞桜さん(大人Ver)と琉絆空さんが駆け寄ってくる。

そう、今回はお屋敷のお披露目と同時にもう1つ目的があった。


それは、俺がこの一帯の主として―――

舞桜さんから代替わりした事を公表する事。


成り行きではあるが、まあ何とかなるだろう。

しかし人間社会ではまったく出世出来なかった俺が、妖の長となるとは。

世の中、何がどうなるかわからないものだ。


「じゃあ行こうか、裕子、理奈。

 今後ともよろしくな」


「はい、満浩みつひろさん」


「こちらこそ、ミツ!」


そして俺は2人に挟まれながら、廊下の奥を目指し歩き始めた。




ロートルの妖怪同伴世渡り記




―――END―――






――――――――――――――――――――――




『ロートルの妖怪同伴世渡り記』後書き




最後までご愛読頂き、ありがとうございました。

アンミンです。


カクヨムでは二作目の小説となります。

一作目の『ゲーセンダンジョン繁盛記』より、やや長くなった

作品になりました。


それでも評価ポイントは前作が終わった時以上の372、

PV数28万、小説フォローは320と少し下回りましたが、

きちんと完結まで書けた事と、最後まで読者の方々が

お付き合い頂けた事に感謝しかありません。


カクヨムではまた別の形で小説を投稿しようと思いますので、

どうかご期待ください。




その時まで失礼いたします。






他は、こちらも楽しみください。




『■異世界と女神とアンカーと』

https://ncode.syosetu.com/n8440ez/


『掛け合いコント』

https://ncode.syosetu.com/n4688hn/


『百怪』

https://ncode.syosetu.com/n1471fr/


『私には常識しか通用しません』

https://ncode.syosetu.com/n7254gb/


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【完結】ロートルの妖怪同伴世渡り記 アンミン @annmin

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