第24話・遠方より人来たる・02


「お久しぶりです、安武やすべさん」


「いえ、本当に遠いところ―――わざわざお疲れ様です、武田さん」


セミロングに眼鏡の、秘書風の彼女が車から降りて挨拶する。

数日後、指定した日に武田さんは本当にやって来た。


来客があるという事で、この日は旅館『源一』の方々には遠慮してもらい、

また獲物も一通り全て持って行って頂き……

何とか女性の来客を迎え入れる準備は整えられ、ひとまず俺は安堵していた。


「母方の祖父の実家なんですよ。誰も引き取り手がいなから自分が

 受け継いだ次第でして」


「それでも素敵なところだと思いますわ」


社交辞令的な言葉をもらい、ふと彼女の停めた車に目をやる。


「お一人で来られたのですか?」


「あ、はい。今日のところは一人で―――」


そんな事を話しながら、仕事部屋となっている居間へと彼女を案内した。




         ◇トイレ

    裏口■──|

     風呂◇─◇台所

         |

       居間□  大広間

         |  □□□ 居間←【仕事部屋】

    縁側■──□□─□□□─□─■縁側

       広間□□ □□□ |

         |   |  □寝室

階段(2Fへ)◆─■玄関 □居間

             |

             ■縁側




ちなみに室内はというとこんな感じになっていて、俺の仕事部屋は

右上の居間となっている。


そこで俺は飲み物を用意し、軽く雑談から話始めた。


「しかし部長ですか。出世しましたね」


「いえ、これも満浩みつひろさん……い、いえ。安武さんの

 おかげだと思っておりますので」


あれ? 俺のフルネーム知っていたっけ?

名刺は渡しているし知っていたところで不思議じゃないけど。


「いえ、武田さんの実力でしょう。

 それで私を自分のプロジェクトに、というのはあぁああっ!?」


「はいぃっ!?」


俺が思わず大声を上げてしまうと同時に彼女も驚いてしまう。


いつの間にか倉ぼっこ・川童かわこ野狐やこの3人が

部屋に入って来ていたからだ。


一応人間Verではあるが、見えないのをいい事に武田さんの周囲で

顔をのぞき込んだり、手をひらひらさせ始め―――


後でどういうお仕置きをしてやろうか、と思っていると、


「あのう、安武さん。

 この子たちは親戚の子なのでしょうか。


 それとも近所の子……ですか?」


そう彼女が言った途端、人外三人組はピタッ、と動きを止め、


「……えっ」


「まさか」


「アタシたちの事―――見えているのですか?」


武田さんがうなずくと、倉ぼっこ・川童・野狐は悲鳴にも似た叫びを上げた。


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