第23話・遠方より人来たる・01


「え? ああ、武田さんですか? お久しぶりです。はい……はい」


過去に関わった仕事の関係者からの電話に、俺は対応していた。


何でも今のプロジェクトに俺に参加して欲しいらしく、今の会社を辞めて

自分のところに来ないか、というお誘いで―――


そして出来れば直接話をしたいので、この家まで来てもいいか……

という流れになっていた。


「ここ、かなり遠いですよ? 何なら自分が東京まで行きますが」


『いえ、こちらが無理を言っているので―――

 出来れば私が行って交渉させて頂きたいと思います』


「は、はあ……それは助かりますけど」


半ば押し切られるような形で、俺は了承してしまった。

そして電話を切った後でいろいろと考える。


「女性を呼べるようなところ―――では無いよなぁ」


部屋数は多いが、庭というか広い敷地には天ぷら用の野ネズミ多数、

他小動物、水槽には川魚やエビ、カニなどなかなかワイルドな様相を

呈している。


そして問題は人外三人組だ。

見えないとはいえ、大人しくしてくれればいいのだが……


「どうしたの、ミツ?」


「さっきの電話は何だべか? またあの一応血は繋がっているアレか?」


倉ぼっこと川童かわこが現れ聞いてくる。

アレの事を『兄』とは言いたくないようだ。


「仕事の関係者だよ。何でも俺を今の職場から迎え入れたいんだってさ。

 それで交渉しに来るらしい」


「男性ですか? 女性ですか?」


さらに野狐やこも話に加わり―――


「武田さんは女性だけど。何か問題でもあるのか?

 人間の女性は会ってはならないとか……」


すると彼らはフルフルと首を左右に振って、


「そもそも見えないでしょー」


「大人でもオラたちの事が見えたのはミツが初めてだべ。

 そうそう来るわけねぇっぺよ」


「だから何の心配も無いと思いますよ? ミツ様」


そういやそうか、と俺は納得したが―――

これがフラグ建築だと気付いたのは、彼女が来てからの事に

なるのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る