第33話・母の感想by人外3人組


母の襲来が終わった後、俺は半ば放心している人外3人組にお茶をお茶請けの

お菓子を用意してやった。

もちろんババアには何も出していない。


麻莉まり、あんなふうになっちゃったんだね」


「あの可愛かった麻莉ちゃんとは、とても思えないっぺよぉ……」


倉ぼっこと川童かわこは母の子供の頃を知っているせいか、

しみじみと悲し気に語る。


「……ミツ様のお母さま、『決まり! 決まり!』って言って

 帰られましたけど―――」


「虫の羽音はおとのようなモンだから気にするな。意味はねぇよ」


野狐やこの言葉に俺は事も無げに返す。


「だけど、何か仕掛けてきそうな感じはするなー」


「考え過ぎだろう……と言いたいところだが、人に迷惑をかける事に

 関しちゃ、卓越した才能を持っているからなあアイツら」


特に邪魔や妨害については、この身で痛いほど知っている。

この前もクソ兄貴がやらかしたばかりだし。

(■17話・18話 嫌がらせ01・02参照)


「だけど、どうして麻莉ちゃんはあんな兄の肩ばかり持つんだべ。

 妖怪のオラから見ても、まともに見えるのはミツの方だと思うんだべが……」


わんぱく坊主のような姿になっている川童が、その虎刈とらがりの頭をかきながら

疑問を口にする。


「さてなあ。そんなの俺の方が聞きたいよ」


俺が大きく息を吐くと、


「多分だけどねー、荒くれ者と男らしさを勘違いしているだけー」


「そうそう。ただの乱暴者や無宿人むしゅくにんを格好いいと思ってしまうんですよね、

 女って。

 まあ一時の麻疹はしかみたいなものですけど」


「わかるー。ただ力が強いだけでいいのなら、イノシシや熊とでも

 仲良くしておけばいいのにー」


「もういいお年のはずですのに、違いがわかっておられないんでしょうね」


女性同士で2人は盛り上がる。

いや野狐は厳密には生物学的? に男のはずなんだけど。


「……何で裕子さんは俺なんかを好きになったんだろうな?」


ふと沸いた疑問を思わず口にすると、


「そりゃ武田さんは大人だっぺ」


「その言い方は彼女に対して失礼だよー、ミツ」


川童と倉ぼっこがそれに反論し、


「まっとうな感性をしていれば、ミツ様に好意を寄せるのは至極しごく当然かと」


野狐の俺に対する評価の高さに少し気恥しくなる。


「ま、まあ―――警戒はしておいた方がいいか。

 アイツら本当に何してくるかわからんからなあ」


俺は腰を上げると、次の職場へ行くための荷物の整理に取り掛かった。


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