第313話・エピローグ1


』となるのを了承してから1ヶ月後―――


俺は裕子さん、理奈と一緒に都内の某ホテルに招待されていた。

川童かわこの銀や鬼の舞桜まおさん、弥月みつき兄妹も一緒だ。


「ではこれより……


 和泉いずみ家と―――卯月うづき家、速瀬はやせ家、もみじ家の

 婚姻こんいんの儀をり行いたいと思います」


司会のあいさつに、招待客が一斉にそちらを見る。


するとそこへ登場したのは……

おかっぱ頭の黒髪の、少女と見紛みまがうくらいの少年、覚醒前の詩音が

紋付袴もんつきばかまを着込み、


ツインテール&やや三白眼な少女、卯月瑠奈るなさんと、

ショートストレート&細目の、速瀬水樹みずきさん、

ポニーテール&丸顔&ジト目の椛一花いちかさんが、


白無垢しろむくの花嫁衣裳いしょうに身を包んで、会場内をかせる。

(なお覚醒後詩音は別の野狐やこが化けている)


そう、これは詩音とあの女子高生3人組の結婚式。


もちろん正式なものではなく、コスプレや『ごっこ』の延長―――

そう彼女たちの親族には伝えられている。


事の発端はこうだ。


いずれ詩音の嫁となる事を決めている3人組は一計を案じ、舞桜さんに相談。


そこで詩音を覚醒前の姿で、それぞれのご家族に引き合わせるのはどうか、

という案が出た。


詩音はもともと中学生くらいの外見であり、それを3人が、

「「「私たち、この子の彼女となりましたー♪」」」

と各々の自宅へ連れて行って披露。


高校生の彼女たちが、自分たちより年下の少年を連れて来て……

彼女宣言をしたところで誰もそれを本気とは受け取らず、


『よろしくお願いします』『頑張ってねー』と言質を取る事に成功。


さらにその後、詩音の祖父として野狐の長老が向かい、

『ぜひ孫のために、結婚式を挙げさせてもらえないだろうか?』

『生い先短いし、生きている間に孫の結婚式を見てみたい』

と3人の家族を説得。


彼らは遊びに付き合うような感覚でその事を承知し、

そして本日に至ったのだが―――


何せスポンサーが舞桜さんで、彼女の山に隠された財宝はまだまだあり、

大判だけでも数百枚になるとの事。

なお今回の件でその大判3枚ほどを使用したという。


『可愛い孫のためとはいえ、ホテルを貸切るとは』

『もしかしたらものすごい名家なのか?』

『詩音お姉さま、それにミツヤ君……

 たたずまいが違うとは思っていましたけど、

 高貴な家の出身でしたのね』


と、親族や詩音が働いているメイド喫茶の店員・お客さんからは

感嘆かんたんの声がれ、


しかも同族として出席している野狐たちは20名ほどで、

その面々は美男美女で構成されており、

(10名ほどは山や住処の警備で地元で待機)


『あの方々は独身かしら?』

『ほとんどが未婚だと聞いたぞ。過疎化している地方だから、

 出会いが少ないんだそうだ』

『良縁があればぜひ、と頼まれましたわ』

『それはそれは……♪』


と、縁結びの場の様相をていしていた。


そこへ、野狐の長老が各家の家族を回ってあいさつし、


「本日はこのような老いぼれのわがままを聞いて頂き―――

 感謝の念にえません。


 よろしければ、一度我が地元までお越し下され。

 今後ともどうか、末永くお付き合いを」


実は野狐たちが住んでいた山のふもとに、彼らの住む

屋敷が建築中で、


深々と頭を下げ訪問を乞う老人に、各家の方々も返礼し、

婚姻の儀式は終わりを告げた。


なお、引き出物には数十万円クラスの品物を用意。

また女子高生3人組が着用した花嫁衣裳は、そのまま彼女たちに

プレゼントされ、


帰宅した後、卯月さん・速瀬さん・椛さんの3人は両親から、

『絶対にあの良縁を逃がすな!!』

と全面的な同意・バックアップを取り付ける事に成功。


後の詩音の『妻たち』として、立場を固めていったのであった。


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