第150話・人間?01


「あぁん? アンタが相手してくれるってのかよ?」


男は突然腕をつかんだ詩音に向かい声を荒げるが、


「がっ!?」


体をひねるようにして、地面に顔を近付けさせ―――


「相手になるのなら……ね♪

 アタシ、これでもそこそこ強いのよ?」


野狐やこから覚醒した詩音は、同種族の中ではトップクラスの

戦闘能力を誇っており、


そこらのケンカが強い一般人など相手ではなかった。


「よりによってウチのお客さんに手を出すなんて。

 きちんと警察に引き渡してあげるわ」


そこで詩音は女子高生3人組に向かい、


「大丈夫だった?

 今日は何か閉店近くまでいたから、心配だったのよ」


実は『お土産』でテンションが上がっていた3人は、割り勘で

サイフの中身が続く限り滞在し、普段よりも帰りが遅くなって

いたのだ。


それを心配した詩音が3人の後を追い―――

この事態に遭遇、助け出したのである。


「怖かったです~!!」


「……ありがとう、詩音お姉さまぁ……!!」


水樹みずき一花いちかは泣きながらお礼を言うが、


「あ、ありがとうございます」


瑠奈るなの目には相変わらず狐耳としっぽが見えており、

助かったのもあってかやや混乱の中にいた。


「まっ、待ってくれ……ゲホゲホッ」


と、そこで詩音が組み伏せていた男がうめく。


「何? 警察が来るまで待っていなさい」


「い、いや、そうじゃねぇんだ。

 実は俺、持病があってよ……その薬だけでも飲ませてくれねぇか?

 発作が出てきたみたいだ」


男の言い分に詩音はため息をつき、


「そんな事言って、放したら逃げるつもりでしょ?」


「ま、マジだってマジ!!

 ゲホッゴホッ、嘘だと思うのなら俺のズボンの右ポケットを調べてくれ。

 そこに薬があるからよ……!

 それを飲ませてくれるだけでいいんだ、ゲホッ!!」


そこで詩音はふぅ、と一息ついて、


「えっと、悪いんだけどズボンのポケットを見てくれる?」


「あっ、ハイ」


そこで比較的落ち着いていた瑠奈が男のポケットをまさぐると、


「これ……ですかね?」


「あ、ああ。その錠剤をくれればいいから」


そのアラフォーと思われる男は、ねじられた反対側の腕を伸ばして

薬を受け取ると、


「……ありがとよ」


そう言って口の中に薬を放り込んだ。


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