第169話・弥月一族の戦力として02


東京……と言っても23区ではなく、多摩に近い自然豊かな地域。


そこのとある山奥にある大きな和風の屋敷に、大勢の人間が

集まり始めていた。


「鬼が来る、と聞いたが」


「それはこちらも聞いている。

 もし本当だとすれば、弥月みつき一族初めての快挙かいきょだ」


普通の洋装の人間もいるが、半分ほどは和装に身を包んだ者たちで―――

それだけでも異質な人間の集まりという事がわかる。


「そういえば、座敷童ざしきわらしや河童、野狐やこも来ると言っておったが」


「そいつらは戦力になるのか?」


「さてなあ。まあ鬼さえ味方につけばそれでいいだろう」


と、彼らの中では人外3人組は戦力にカウントされておらず……


「しかし、それらを取り込んだのは例の一家だろう?」


「パワーバランスからいっても歪な状態となるな」


「だが妖を協力者とするのは一族の承認無しでは出来ぬ。

 そこに付けこむ余地はあろうよ」


と、それぞれの思惑を口にしながら、広間へと場所を移していった。




「よく来てくださいました。


 すでに連絡は受けていると思いますが……

 司法機関より公式に協力打診を受けました」


「それに伴い、これまで一族ウチに協力してきた妖たちのお披露目ひろめをと」


琉絆空るきあと加奈の両親が、二列に別れた一方の中から挨拶する。


「琉絆空にございます」


そして中肉中背の細マッチョタイプの青年が頭を下げ、その隣りで、


隠橘舞桜おきつ・まおと申します。


 東北のとある山の主を務めておりました。

 琉絆空殿とは末永くの関係にて、支えたいと思っておりますので」


赤い肌のナイスバディを持つ鬼娘の出現、そしてその言葉に周囲はざわめく。


「(さすがに文句を言う人はいないか)」


「(問題はあの子たちだけど……)」


俺と裕子さんは一応協力者・関係者という事で同席を認められたが、

ほとんど末席で、


そして加奈さんと銀は理奈・詩音と一緒の登場という事で―――

その出番を待っていたのだが、


「これから座敷童、河童、狐でしたかね?」


「鬼の後にそれはなあ」


「まあ牧歌的でよろしいではないですか」


と、消極的ながらも受け入れる言葉が聞こえる中、その3人の登場を告げる

ふすまが開いた。


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