第71話・事後


わりぃな。楽しませてもらった上、こんなに」


とある夜の街、ホテルのベッドの上で会話を交わす男女が2人。

一方は180cmはあるだろう長身で、髪を金色に染めたアラフォーの男。

もう一方はまだ20才前後くらいの、ワンレングスの長髪の女性で―――


「ふにゃあぁああ~……

 楽しませてもらったのはこっちの方よ。腰が溶けるかと思ったじゃ

 ないのぉ~♪」


彼女はくねくねと腰を動かし、胸を押し付けるかのよう男の片腕に抱き着く。


「だから言ったろ? 俺と遊ぶのは高くつくって」


「本当にそうよぉ~、もうあなた以外じゃ満足出来ないわぁ♪

 ねぇ、私の専属にならなぁい?」


「そんな事言って、安く済ませようってハラか?

 ちゃんとイイ子で金づるにならなきゃ、楽しませてやらねーぞ?」


「あぁんもう、意地悪ぅ~♪」


男女は全裸でいちゃつくが、そこに第三者の声が響く。


「まったく……こういう勘違い男がいるから私の仕事が増えるんですよ」


「あぁ? 誰だ?」


その声に男が反応して上半身を起こすが、


「……え?」


急に風景が変わり―――そこはホテルの部屋ではなく、寒々とした

公園の茂みの中で、


「なな、何だココはぁ!?」


彼は慌てて立ち上がるが、全裸という事は変わっておらず、

思わず身を隠す物を探す。


そして女の方はと言うと、


「誰ニャ!? アタイの邪魔をするのは!」


その目は明らかに肉食動物のそれで、さらに顔にはうっすらと体毛が生え、

耳は猫のように三角となり、口元からはキバを生やす。


猫又ねこまた……ね。低級もいいところだけど、一応人間に害を及ぼしている

 みたいだし―――」




そこにいたのは、ポニーテールをした若い女性で……

しかし外見は外国の特殊部隊のような格好をしており、


「なっ、何だよテメェは!」


「助けに来たんです、感謝してください。


 あなたもまあ、まあそんなゴミみたいな男を食べるのはいいけど、

 お腹の中にってのは頂けないわね」


男の言う事に彼女は答えるが、明らかに人間ではない外見の女性は、


「こんなマズそうな男、頼まれたって食べないニャ!

 それに人間なんて食べてもたかが知れているニャ!


 それよりお金をもらった方が、毎日うまい牛丼ざんまいが

 出来るのニャ!!」


「あー……今時はそうなんですね。

 でもあなた、お金を上げる方じゃなかったんですか?」


そこでアラフォーの男は、もらったお金を確認するが、


「なっ何だよこりゃあ!? 魚の骨じゃねぇか!」


「当たり前だニャ! 誰がお前なんかにお金なんか払うかニャ!!

 ほんの少しでも夢を見させてやったんだから、こっちがもらって

 当然ニャ!」


「てめぇ、ベッドの中じゃあんなに喜んでいたじゃねぇかよ!」


「はー? まだ夢から覚めていないのかニャ?

 まったく、邪魔が入らなければせめてだまされた分だけは、

 気持ち良く眠れただろうにニャ」


人間と人外の男女が言い争う光景に飽きたのか、乱入した女性は

ため息をついて、


「いい加減にしてくれません?

 あなた、見逃してあげるからもうどこかへ行ってください」


「うみゅう~、見かけによらず結構お金持っていたのにぃ~……

 ああ、アタイの牛丼特盛卵セットがぁ~……」


「いいから行きなさい。見逃してくれる人ばかりじゃないんだから」


それを聞くと、猫又と呼ばれた彼女は猫が逃げるように、

四つんいで逃げ去った。


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