第76話・アナザーアクション・02


「……ここから先は歩きですね」


まだ20歳そこそこのポニーテールの女性が、バイクを停めて歩き出す。


山深い東北の田舎道は、舗装ほそうこそされているが周囲に民家はほとんど無く―――


「ストリートビューにすら無い場所なんて思いもしなかったです。

 だからこそ、あやかしどもの住処すみかになっているんでしょうけど」


バイクレーサーのようなライダースーツに身を包んだ彼女……

弥月みつき加奈かなは目的地である安武やすべ満浩みつひろの家近くにまで来ていた。


「職場への様子伺いで、武田部長と安武さんが東京にいるのはわかっています。

 つまりあの2人に知られず、調査が出来るという事―――


 部長が妖に関わっているとは思いませんけど、もしだまされて

 いるのだとしたら、部長が知らないうちに処理しませんと」


そして彼女は歩を進める。

一本道の集落道しゅうらくどうで、道幅は広いが両側をうっそうとした木々が囲いのように

生い茂る。


すでに季節は秋口に差し掛かっていたが……

そんな中、弥月は女性にしては早足で歩き続けた。




「…………」


そんな中、一匹の狐が離れた小高い丘から、彼女を見下ろしていたが―――

すぐに身をひるがえし、姿を消す。


そして10分ほどすると、同じ場所に昔ながらの和風な着物に身を包んだ、

シルバーの長髪の妖が彼女を見下ろしていた。


「家の周囲を見守っている野狐の1人が報せてくれましたけど、

 裕子様でもお母さまでも無いですね……


 ミツ様の知り合いでしょうか?

 でもそれなら、何らかの連絡をしてくるはず。


 いったん迷わせて、その間に確認を取る事にしましょう」


そう言うと詩音しおんは、自分の『術』を発動させた。


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