第294話・対応05


「……相分かった。


 その方らは下がるがよい。次の指示を待て」


「はい」


「わかりました」


老人の命令を受け、若者たち3名は退室し―――

一気に平均年齢が上がった室内で、議論は継続する。


「あの3人の報告を事実として、我々はどう動くべきか……」


そこでメンバーの中では比較的若い、司会役の男が手を挙げ、


「ひとまず、有効性はわかったのではないかと。


 人に紛れて暮らしているあやかしどもも、それなりに役立っておる

 ようですし―――


 もちろん、長期的に見なければわからない事もありましょうが」


「であれば……

 今しばらくは様子見か?」


「我ら風道ふうどうはそれで良いと思う。

 おぼろの、お主はどうだ?」


「異論無し―――と言いたいところだが、想定外過ぎる。


 それに若い連中の言う事も無視出来ぬ。

 無関心といおうか、実害が無ければ放っておけという者も少なくない」


「これも時代の流れかのう……」


と、様子見という名の現状維持で話が進み、終わろうとしていた時、


「この茶番は何だ?」


と、1人の老人が発言しそちらへ視線が集まる。


十六夜いざよいの―――」


そう呼ばれた老人はそのまま立ち上がり、


「結局のところ、妖怪どもを見逃せという話ではないか。

 だから若い世代が腑抜ふぬけになるのよ」


「聞き捨てなりませんな。


 それに彼らは弥月みつき家と協力体制にある。

 それごと敵対せよと?」


司会役のアラフォーくらいの男が制するも、


「たわけた事を。

 我らはあやかしを狩る一族であり、それが使命であり宿命。


 あちらがそれの味方となるならば敵よ」


「落ち着け、十六夜の。

 向こうには鬼もおるのだぞ?


 それを知っての上でか?」


「それに弥月家はコンピュータでも何でも使う。

 最新技術を持った妖怪どもが相手になる事も……」


他の長老格の者も彼を止めに入るが、


「知った事か!

 わかっているのは、放置し続けたら今以上の脅威となる、それだけよ!!


 貴様らはせいぜい、いつまでも妖どもが共存を望んでいると夢でも

 語っておればよい!!」


そう言うや否や、十六夜の長老は乱暴にふすまを開けて出て行き、

後には困惑した他の長老と司会役の男たちが残された。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る