第139話・初顔合わせ02


多少の騒動の後、俺たちは家の中へと話し合いの場を移し―――


改めて弥月みつきさんのご両親と舞桜まおさんが対峙して座っていた。

そして鬼である彼女の隣りには当然、琉絆空るきあさんもいて、


その両側を固めるように、俺と裕子さん、そして他ギャラリーが見守っていた。


「では改めまして……

 琉絆空と加奈かなの父です」


「母です。今回、琉絆空の協力者になってくれたとの事で」


玄関先のトラブルでやや緊張が解けたのか、お互いにリラックスしながら

会話に入ったと思われ、


隠橘おきつ舞桜さんは、ここ一帯のあやかしを統べる主だ。

 その実力は俺も確認している。

 一族の協力者となるのは申し分ないと思う」


「いつも琉絆空殿にはお世話になっております。

 どうぞよろしく―――」


まずは差し障りの無い挨拶から始まった。


「しかし、その……

 先ほどお母さまの実家の衣装と伺いましたが」


巫女風の衣装を見て、舞桜さんがたずねると、


「ああ、妻が弥月みつき家の者だったのですよ。

 私はそちらへ婿入むこいりした形で」


武人のような面持ちの旦那さんが答える。


「親父、その顔と体つきで文系だからな……」


「どう見ても道場主とか武道やってそうなのに」


息子と娘2人が呆れながら説明し、


「え? じゃあお仕事は何をしておられるんですか?」


思わず俺が割って入って質問してしまう。


「学者です。東京の大学で客員教授をしています」


「ええ……そんな人がどうして妖を狩る一族の人と」


裕子さんも参戦し、疑問をつい口にすると、


「ウチの夫は民俗学みんぞくがくを専攻しておりまして。

 また一族としても、歴史やそれぞれの土地に詳しい方々との交流が

 ありました。


 夫とはその時に出会ったんですよ」


あー、それなら納得もいく。

直接戦わなくとも、その地の歴史や伝承に詳しい人間がいるというのは

この上ない支援となる。


それを聞いていた人外3人組も、


「確かにお父さんの方は、見た時にそれほど『力』は感じなかったので

 おかしいと思っていたべ」


「お母さんは見た目とは裏腹に、すさまじい『力』を感じたけどねー」


「ですが、その―――

 どうしても2人の成人している子供の母親とは思えないのですが」


銀と理奈、詩音も会話に加わって、その言葉に周囲がウンウンとうなずく。


「恐らく、霊力れいりょくとか神通力じんずうりきとか言われるものが関係しているんでしょう。

 女としては嬉しい事なのでしょうが、それなりに不便を感じる事も

 あるんですよ?」


「……俺の小学校と中学校の卒業式、卒業生と間違えられたもんな」


「私の高校の時は、どこの妹さんかと言われたんだっけ」


母の後に息子と娘がツッコミを入れ―――

くだけた感じで話は進んでいった。


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