11章 妖怪大戦争?

第301話・十六夜一族03


「やれやれ、サバイバルゲームってこんな感じかな」


「無線機とはずいぶん古めかしい……

 まあ電波が通じない場所だという事だから、仕方無いが」


十六夜いざよい一族の拠点で、東北の妖たちを襲撃する命を受けた集団が

自らの装備について感想を述べる。


彼らの姿は、真っ黒い僧衣のような衣装の上に特殊部隊を思わせる、

同じく黒い近代的なベストを身に着け、


そこにお札や呪い道具、無線機などを詰め込んでいた。


「最近は職質も多いしな。あ、ベストは手荷物の中に入れておけよ」


「どこからどう見ても怪しいしなー……

 むしろ職質されても文句を言えない完ぺきなち」


「宗教には甘いから身分証持っていればいいんじゃね?」


錫杖しゃくじょうはどうしますか?」


ガヤガヤと各々が装備を整えながら、口々に語る。

するとそこへ、長老と思われる老人が姿を現し、全員が一斉に黙って

頭を下げる。


「貴様らがこれまで十六夜一族として、厳しい訓練を受けて来たのは

 この日のためだ。


 あちらは人間も混ざっているらしいが、手に余るなら排除しろ。


 目標は鬼だ。かなわずとも一泡吹かせてやれ。

 可能ならば捕獲せよ」


長老の言葉を聞いていた若い1名が片手を挙げ、


「あの、この衣装脱いだらダメですかね?

 すごく目立つと思うんですが」


「それは十六夜一族の伝統的な戦服いくさふくじゃ!!

 お前は何を言うておるのか!!」


いきなりの怒声に彼はひるむが、それでも口を開き、


「いやだって、これから交通機関にも乗るわけでしょう!


 いくら何でも目立ち過ぎますし、これじゃ到着したぞーって

 相手に教えてやるようなモンですよ!?


 一応、奇襲に行くんですよね俺たち?」


その返しに老人は口をとがらせて、


「まったく……今時の若い者は口ばかり達者になりおって。


 わかった、現地での着替えを認めよう」


その答えに全員がホッとした表情になる。


「長老様はどちらで待機されますか?

 先に行った偵察組によると、宿泊施設はほとんど無いようですが」


それを聞いた老人は顔をしかめ、


「年寄り扱いするでないわ。

 山の中だろうが何だろうが、ワシは後方待機しておる。


 ではさっさと着替えい!!」


その言葉に彼らは黒い僧衣を脱ぎ始め―――

それぞれが普通の洋服や和装を着始めた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る