第283話・対応01


「……ぜつ!」


しゃ……」


とある地方、閑静な田舎の風景が広がる屋敷で―――

何らかの意図を持った言葉が交わされる。


「合言葉、間違いありません」


「お通りください」


門番らしき屈強な男たちが、現代には似つかわしくない衣装に身を包み、

複数の訪問者を通す。


広大な屋敷の中、客は複数の部屋に選り分けられていき……

代表格と思われる、40代~60代の男女が奥の一室に集められる。


「来おったか、風道ふうどうの」


おぼろの、久しぶりじゃな」


部屋に入った面々はそれぞれあいさつを交わし、

司会者役らしき男が中央に収まると、静寂が訪れる。


「さて、集まってもらったのは他でもない。


 弥月みつき一族―――

 我々と同じく、あやかしを狩る一族だが、


 ついぞ最近、鬼を始め次々と妖怪どもを協力者として取り込んだらしい」


その言葉に、正座した中・老年層の者たちはざわつき始め、


「その話は聞き及んでおります」


「あそこの長男が、確か鬼の娘っ子と結婚したとか……」


「その妹は河童と―――」


比較的若い層からは問題視するような声は出ない。しかし、


「鬼はまあわかるがの」


「河童、それに倉ぼっこだとか野狐やことか、取るに足らない妖怪どもと

 手を組んでおるのは見過ごせぬ」


「近頃はやれコンピューターだの何だのと、道具頼りになっておるのも

 気に入らぬわ」


そして年齢が上から数えた方が早い層からは、否定的な意見が上がる。


十六夜いざよいの、そうは言われてもな。

 あちらは鬼で大幅に戦力が上がっておるのだ。


 それに別段、敵対しているわけでもない」


司会役の男が彼らをなだめるも、


「ではなぜ我らを集めたのだ?」


「弥月家の動きに対抗するためではないのか?」


各家の長老格と思われる者たちは、不満と疑問を口にする。


「何も敵対するだけが対抗策ではあるまい。

 今後の我らの在り方も同時に協議しなくては……という事だ」


その言葉にさらに場がざわつき始め、


「我らの在り方―――だと?」


「よもや弥月家と同じく、妖どもとの共存などという夢物語を見よ、

 という事ではあるまいな?」


すぐに反発する意見が飛ぶものの、


「弥月家とて、そんなお題目は唱えておりませぬ。


 ただ我らとしても、対応するためには変わらねばならない、

 という事を申し上げております」


「どういう事だ?」


そこで集まった長老格の者たちは、彼の話に耳を傾けた。


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