第85話・銀の部屋
「何と言うか、災難だったのう」
「しかし、まさか同じ職場の人間とは……世間は狭いものです」
家で一緒に昼食を食べているのは、山の
『陰陽師っぽい人がやって来た』という情報を他の人外3人組経由で
共有したところ、詳しい話を聞きたいという事でやって来た。
まあ本音は手料理が食べたい、というところだろうけど。
「主様としてはその、大丈夫なんですか?
そういう人間がこの家に通って来るというのは」
10才を少し過ぎたくらいに見える、赤い肌をした少女はいったん
食べ物から箸を放すと、
「別にそやつも問答無用というわけではなかろう。
それにお主らの仕事仲間じゃ、襲い掛かってでも来ない限りどうもせんよ」
外見とは真逆の大人の意見が返される。
「それに主様は、別段悪さをしているわけでもありませんし」
「そもそも、襲われるような理由は無いかと」
「いやあ、そうでもないぞ?
妖怪絶対殺すマンのような連中はおる。
目と目が合ったら即バトルみたいな」
「野生動物か何かか……」
人間なのだから、意思疎通出来る相手とはせめて最初に
話し合ってからにして欲しいものだ。
俺が呆れるように話すと、
「むしろ受け入れているミツや裕子のような存在が
異質なものは排除するのが人の
ま、来ても返り討ちにする自信はあるがの」
主様は一息つくとお茶を飲み、
「それでどうなのだ、銀。その娘と付き合うのか?」
「うぶべっ!?」
突然話を振られた
「今じゃ土蔵の二階のミツの部屋が愛の巣だもんねー」
「うらやましい限りですわ」
倉ぼっこと
彼女たち(男の娘含む)の言う通り、俺の秘密基地だったあの部屋は―――
今では
「まあこれでカップルが2組か。
理奈、詩音。お主らも頑張るのじゃぞ」
主様に話を振られた2人は顔を見合わせ、
「えぇえ~……だって相手がぁ~……」
「そ、そういう主様は?」
「んなっ!? ア、アタイはお役目というものがあってだな、その」
そこできゃあきゃあと騒ぐ彼女たちをよそに、後片付けという名目で
俺と銀はこっそり部屋から撤退した。
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