第65話・最終試験後・05


「やっぱり銀ちゃんの水系の妖力がすごかったんだよねー。

 アレだけでほぼ銃を無効化出来たもん」


黒髪ロングストレートの高校生くらいの少女がお箸の先をくるくると

回しながら語り、


「ネットで情報を調べておいて良かったっぺよお。

 今の銃器は水に濡れたところで、撃てなくなる事は無いんだべ」


アイドルのような目鼻立ちの、短髪の黒髪に褐色肌の青年が答える。


「最初は、『詩音しおん』が連中の一人―――

 軽トラの運転手をだまして本拠地まで案内させたんだっけか」


「くすくすくす……♪

 よく騙されてくれましたわ、二重の意味で♪」


和風の着物をまとった、シルバーの長髪の美女が口元を隠し笑う。

外見上はこんなだが、性別は俺と同じ男だ。


「理奈はセキュリティシステムの権限を奪って、各所のドアロックを

 外したと―――

 ずいぶんと近代戦に適応したものだな」


「詳しい事は僕にもよくわからないけど、その敷地か建物内にあるものなら

 僕が入った時点で支配出来るようになるっぽいよ。


 それと、機械には映らないように訓練したのも効いたかな」


理奈りながその時の事を思い出しながら語る。

俺が一番驚いたのはそこだ。


何でも鬼っ子……ぬし様の訓練メニューの1つにそれがあり、


『人間の目は騙せて当たり前じゃ。

 現代なら、絡繰りカラクリの目をあざむく事が出来ねば、な』


そう言われ、スマホは各自持っていたので、それに映らなくなるまで修行を

させられたのだという。


「どういう仕組みなんだろうな?」


「それはオラたちにもわからないっぺ」


「でもそのおかげで、相手はかなり混乱していましたからね。

 監視カメラに映らない存在が、目の前にいればそれは驚くでしょう」


銀と詩音しおんが俺の疑問に答え、食事を続行する。


「まあ何にせよ、これで一段落ついたわけだ。

 本格的に俺が東京に行くようになるけど、俺が不在でも大丈夫か?」


今までは身内にトラブルがあったという理由で、裕子さんの会社へは

顔を出していなかったけど―――

今後は週に一度は出社しなければならないのだ。


「う~ん……ミツの手料理が食べられなくなるのは辛いなぁ」


「ていうか覚えろよ。

 今まではお前らが小さかったから、火や刃物を使うのは危ないと思って

 あんまり手伝わせなかったけどさ。


 その身長なら、台所は十分使えるだろ」


「まあ、煮るくらいならオラでも大丈夫と思うべ」


「あ! じゃあ今度奥方様に料理を習ってもいいですか!?」


そんな会話をしつつ、俺たちは昼食を終えた。


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