第5話 剣と魔法の世界
俺の名は
生まれた時から絶望的に運が無く、21歳の若さでその生涯に幕を下ろした。
裕福な家庭ではなかったけど、優しい両親に守られながらすくすくと成長した。
兄弟はいない。いや、実は兄がいたらしいのだけど、生まれてすぐ亡くなったと聞いている。
俺の運の悪さは筋金入りだ。
毎年骨折する人間なんて、俺以外に存在するとはとても思えない。普通に生活をしていて骨折することなんて、人生に1回か2回あるかどうかだろ?
20歳までの間に、事故に巻き込まれて5回ほど生死を彷徨った。
そして最期は左右からトラックに挟まれ即死と来たもんだ。
横断歩道を渡った俺が間抜けだったのだろう。
信号が青か赤かなんて、俺にはほとんど意味を成さないからな。
そもそも横断歩道を渡っていて、車に左右から挟まれるってのがおかしい。
何度も悲惨な目に合っている俺が信号を見逃すわけがない。すなわち、どちらのトラックも信号無視ってことだろ?しかも片方は逆走してるじゃねえか!
トラックの正面衝突だし、人は死んでるしで、あの現場もう無茶苦茶だろ。
何がどうなったらこんなことになるんだよ・・・。
中学に入った頃、両親が事故死した。
運がマイナスに振り切っている俺のせいで、事故に巻き込まれたんだと思う。
中学生になったばかりだった当時の自分には理解出来なかったけど、今にして思えば、アレは間違いなく俺と一緒にいたせいだ。
両親は、事故から俺を守る為に死んでいった。
死の間際に優しい笑顔だけを残して。
クソみたいな運命を背負った俺の親だったばかりに、本当に可哀相なことをしてしまった。どうせ若くして死ぬ運命ならば、両親より先に死にたかったよ・・・。
そうすれば二人とも、もっと長く生きられただろうに。
―――だが筋金入りだった運の悪さが、死後に逆転することとなる。
転生ルーレットという神のふざけた遊戯で、俺は奇跡を起こしたのだ。
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目を開くと景色がぼやけていた。
無意識に右手で目を擦ると、少しずつ見えるようになってきた。
右手が水に濡れてビショビショだ。・・・もしかして俺は泣いていたのか?
って、なんだこの小っちゃい手は!?
バッ
慌てて立ち上がった。
・・・原っぱ、だよな?なんで俺はこんな所で寝て、・・・あっ!!
横断歩道で凄惨な死を迎えた後に不思議な空間で起きた、あの奇跡のような出来事が、滝のように頭の中に流れ込んで来る。
―――すべてを思い出した。
死後の転生ルーレットで、俺は見事、『ショタ(5)』を的中させたのだ。
そうだよ!俺はショタに生まれ変わって、剣と魔法の世界へとやって来たのだ!
思わず自分の身体に目が行った。
おおっ、小っちゃい!全部小っちゃいぞ!!
手の平なんて紅葉の葉っぱみたいだし、足なんて・・・、ん?
なんか象牙色のゴワゴワした服を着てるな。
ルーレットをやってた時は確か、白いTシャツ・ジーパン・ジャケットという、事故に遭う直前のラフな格好をしていたハズだ。
おそらくこれが『レミセラート』という世界の標準的な服装なのだろう。
あのファンキーな神様が用意してくれたのかな?
しかし、なんだか地味だなあ・・・。
まだ自分の顔を確認できてないけど、この服じゃショタの可愛らしさも半減だ。
辺りを見回してみる。
最初は原っぱだと思ったけど、よく見たら鬱蒼と茂る樹々に囲まれており・・・。
ぐぬぬぬぬ、たぶん森ってほどでもないのかな?背が低いから、すべてが大きく見えるんだよね。
そして左側には、朽ち果てた感じの屋敷が見える。
なんか木の蔦なんかが絡まっていて、お化け屋敷って感じだ。
あの家に人が住んでるとはとても思えないな・・・。
右側を見ると、たぶん屋敷までの道なのかな?草は伸び放題だけど、真っ直ぐ歩いて行けばどこかに出ることができそうだ。
さて、俺は一体どう動けば良いのだろう?
つーか、説明もナシに原っぱにポイって酷くねえか?
あ!そういやファンキー神様から連絡があるんじゃなかったっけか?確か『細かいことは転生後に伝える』とか言ってたハズ。
・・・ここで待ってればいいの?獣とか出たら怖いんだけど。
か弱いショタをこんなお化け屋敷の横に出すなんて、ちょっと有り得ねえぞ!
でもあの性格が捻くれているファンキー神様が、転生者を割れ物のように丁寧に扱うとも考えにくい。
そうだ!獣で思い出したけど、俺の職業って召喚士じゃん!
一体どうやって召喚するんだろか?そもそも、こんなショタが召喚魔法なんて使えるのかな?たぶんレベル1とかだろ。
ちなみに召喚士というのは、モンスターなんかを呼び出し、それを使役して戦わせたりする職業のハズだ。
強力なモンスターを呼び出すとか、もうワクワクが止まりません!!
たぶんレベル1なら、へなちょこモンスターしか召喚出来ないだろうけどさ。
あっ!ここが異世界ならば、自分のスキルを見たり出来るのが定番だよな!?
そうか・・・、とうとうあのセリフを言う時が来たのですな!!
「ステータス!」
おおっ!声が澄んでいてめっちゃ可愛いぞ!!さすがショタだけのことはあるな!
・・・・・・しかし何も出ないぞ。違う言い方なのか?
「ステータスウィンドウ!」「システム!」「システムウィンドウ!」
出ねえ・・・。
いきなりの難関ですか。もしかするとだけど、冒険者ギルドでしかステータスを見ることが出来ないパターンの可能性もあるな。
そもそも召喚士って魔法使いとも違うから、すぐ試すことすら出来ないやん。
どうやって召喚したらいいんだ?っていうか俺、召喚獣なんて持ってるの?
名前:クーヤ
職業:召喚士
【召喚獣リスト】
・なし
「うわっ!」
おおおおおおおおおおおおお!ステータス出たーーーーーー!!
目の前に出るとかじゃなく、頭の中に画面が出現した感じで、想像してたのとはちょっと違うけどね。
「・・・・・・・・・」
まず名前さあ、俺の本名は
なんで『クーヤ』になってんのよ?・・・まあ可愛いからそれはいいか。
しかし異世界だからか苗字は無くなってしまったみたいだな。
『
ってかね・・・、簡略化されすぎだろ!!
レベルとか、力とか、知力とか、そういうの期待してたのに何も無いしさ。
こんなん1回見たらもう見なくていいわ!
ああ、でも召喚獣リストとかあるから、召喚獣をゲットしたら見るようになるのかもしれないな。今は『なし』になってるけど。
どうやって入手すればいいんだろなあ・・・。
うーん・・・、とりあえずファンキー神様から連絡が来たら聞いてみるか。
―――それから2時間くらい待ったけど、ファンキー神様から連絡は来なかった。
・・・・・・あの野郎!!
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