第285話 光るハゲ
結局昨日はハゲを光らせることが出来ずに寝る時間になってしまったので、勝負は次の日へ持ち越しとなった。
「ぶわーっはっはっはっはっはっはっは!」
「ししょーがハゲてるにゃ!アホにゃ!」
「変なメガネも着けてるし、何がしたいんだコイツは?」
「クーヤはハゲを光らせるために集中してる。今は話し掛けちゃダメ」
「アホは放っといて行くぞ!」
西門で弟子達と合流しで大爆笑されるも、今日は忙しいのでイチイチ相手なんかしていられません!
ネジポイントでグリフォンに乗り換え、グルミーダの森へ向かって飛び立った。
風でハゲヅラが飛んで行くと取りに戻るのが大変なので、飛行中はハゲヅラを外したが、グルミーダの森に到着した直後に再びハゲヅラを装着する。
まだ始まったばかりだ。ボクは何としても今日中にハゲを光らせてみせるぞ!
「ねえクーヤちゃん、今日は木片も作るんだったよね?」
ナナお姉ちゃんに話し掛けられ、本日の予定を思い出した。
「そうでした!まずはあの木を探さなきゃ!」
「確かヨークノルの木だったよな?」
「ん?燻製に使う木片って種類が決まっているのか?」
「変な木を使うと、変な匂いのジャーキーになっちゃうよ」
「そんにゃのダメにゃ!ヨークノルを探すにゃ」
グルミーダの森に入り、ヨークノルの木を見つけては枝を回収していき、スプーンポイントへと到着した。
ナナお姉ちゃんに頼んで枝を乾燥してもらい、前回やったようにフードプロセッサーで枝を粉々にしていく。
ガリガリガリガリ ガガッ!
「やっぱり壊れた。フードプロセッサー消えろ。フードプロセッサー召喚!」
そしてまたガリガリやって、もう一度フードプロセッサーを壊したところで、何か良い作戦が無いかみんなに聞いてみた。
「ボクはフードプロセッサーが壊れるのを前提に、こうやって木っ端を作ってたんだけど、もっと他にいい方法ってないかなあ?」
「木を粉々にする方法か・・・」
「魔法じゃダメなの?」
「えーとねえ、風魔法で切断するのは簡単に出来るんだけど、粉々にするっていうのが難しいんだ~」
「魔法職をいっぱい集めて風魔法を一斉に当てるとかは?」
「それなら木の幹でもズタズタに出来るとは思うけど、魔法職を集めるのに結構お金が掛かっちゃうよ?」
「冒険者はそんな仕事やらんぞ?学生のアルバイトには丁度いいかもだが」
みんなの話をボケ―っと聞いていたぺち子姉ちゃんが口を開いた。
「壊れにゃいフードプロセッサーを作ればいいにゃ」
ん?壊れないフードプロセッサーですと!?
なるほど・・・その発想は無かった。どうもボクは日本の製品を信頼し過ぎてるというか、『これ以上の物など無いのだからどうしようもない』って勝手に思い込んでしまっていたみたいだ。
そうだよな、最初から木の枝を砕くつもりで作れば出来そうな気がする。要はカッター部分を分厚く頑丈に作ればいいのだ。切るというよりもぶん殴る感じで。
ただそうなるとパワーも必要になるから、そこだけ問題かな?
帰りにパンダ工房に寄って、ベイダーさんに相談してみよう!
「ぺち子姉ちゃんそれだーーーーー!ベイダーさんなら作れるような気がする!」
「なるほど!すでに惜しいとこまでいってるんだから、それを改良すればいいだけの話だったのか」
「頑張れば魔法で何とかなりそうな気がすると、どうしてもそっちの方向で考えちゃうんだよね~」
「わかる!じゃあ木片作りはもうやめるのかな?」
「木片の残りが少なくなってきたから、やっぱり全部やっちゃいます。アイリスお姉ちゃん達はグルミーダ狩りに行っても大丈夫だよ」
「そうだね~、ただ見てるだけじゃ時間がもったいないし」
「んじゃハゲチームはそれが終わってからいつも通りに動いてくれ。美少女チームはしゅっぱーーーつ!」
「ちょっと!それじゃあ私達が全員ハゲみたいじゃない!!しかも自分らだけ美少女チームとかムカツクわね!」
当然ランねえちゃんの文句など完全スルーされ、美少女チームは森の中へと消えていった。
「一人じゃ大変なので、次はハゲ2号に任せます!」
「ハゲ2号って誰よ?」
「ぺち子姉ちゃん」
「もしかしてハゲ3号は私じゃないでしょうね?」
「正解です!」
ハゲ頭をピシャっと叩かれた。
「にゃはははは!ハゲ2号の実力を見せてやるにゃ!」
そう言ったぺち子姉ちゃんが、乾燥した枝をパキッと折ってから、フードプロセッサーに投入した。
ガリガリガリガリ
◇
プリンお姉ちゃんがグルミーダを盾で弾き返し、同時に燻製作りもスタート。
もう三人の弟子たちはやり方がわかっているので、肉を並べる時だけ師匠がチェックし、後は一切口出しせず好きなようにやらせる。
よし、ボクはハゲを光らせることに集中だ!
「やっぱり火力の調節が難しいにゃね~」
「もちろん難しいけど、それよりも暑いわ!」
「火力を安定させることが出来れば、炎から離れられるんだがな」
「後ろのハゲも極めてないみたいだから、自分達で必勝法を見つけるしかないわ」
そう言った後、ラン姉ちゃんが後ろを振り返った。
「フフッ、あーーーーーっはっはっはっはっはっはっは!!」
「なに笑ってんだよ?」
「後ろのハゲが微動だにしないでメッチャ真剣な顔してるんだもん!」
「頑張ればハゲって光るもんにゃ?」
「光るわけねーだろ!あのガキはちょっと頭がおかしいんだ。変に関わるとお前らも馬鹿になるぞ」
そのまま2時間が経過し、場所を変えて本日2回目のジャーキー作りが始まった。
ハゲはまだ光らない。
「今何時だ?」
「自分で時計を見ればいいじゃないの!」
「後ろを見ると真剣な表情のハゲが目に入るから腹筋が破壊される」
「私も笑い過ぎてすでに腹筋がボロボロなんですけど!」
・・・ん?なんか今、頭に異変を感じたぞ?
「プハッ!!あーーーっはっはっはっはっはっはっはっは!!ゲホッ、くくッ、ぶわーーーっはっはっはっはっは!!ハ、ハゲ、光ってるーーーーー!!」
「なんだと!?」
悪そうなお兄さんが後ろを向いて黒眼鏡を外した。
「ブホッ!!くくッ、うわははははははははははははははははは!!」
「にゃはははははははははははははははははははははははははは!!」
「あーーーーーっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!」
これは!?もしかしてハゲを光らせることに成功したのか!?
「ねえねえ!もしかして光ってるの!?」
「ククク、フーーーッ、ふーーーッ、マジでハゲを光らせるとは・・・ククッ!」
「めっちゃ光ってるにゃ!!光りすぎて隙間から光が漏れてるにゃ!!」
「アホすぎるーーーーーーーーーー!!」
「本当に!?よっしゃああああああああああ!!やっと成功したーーーーー!!」
そうか、この感じか!!
今の感覚を忘れないようにしなければ。
でも光が漏れてるとか言ってるし、光量の調節が出来るようにならないとな。
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