第284話 草原でバッファローを狩るのです

 この国ではかなり珍しいと思われる怪しい服を着た集団が、コソコソを草原を進んで行く。



「いた!アイツにしよう」

「いい感じで1体だけ別行動をしてるね」

「じゃあタマちゃんだけ残して私達は後退しようか」

「ガイアとペチコは、タマとアタシらの中間地点でしゃがんで待機な!」

「了解した」

「ワクワクするにゃ!」



 レオナねえ達が、最後尾を歩くボクとラン姉ちゃんの所まで走って来た。



「クーヤとランも後退だ!アタシらの姿が見えたらバッファローが近寄って来ないかもしれないからな」

「アイアイサーーーーー!」

「はいはーい」



 まったく障害物の無い、だだっ広い草原なので、結構後ろの方まで下がってから身を潜めた。そしてタマねえとボク達の間くらいに、悪そうなお兄さんとぺち子姉ちゃんがしゃがみ込んだ。



 こっちを見ていたタマねえが、レオナねえの合図を受け取り反転した。

 そして大きく振りかぶって、第一球を・・・投げました!!


 うん、遠すぎて何も見えませんね。

 障害物でもあれば隠れて覗き見が出来ただろうけど、こんな草原ではなあ・・・。


 向こうを見ているタマねえが、相手の怒りを誘う謎の踊りで挑発している。


「プププッ!」

「タマは何をやってんだ?」

「バッファローを怒らせてるんじゃない?」

「あっ!こっちに走って来た!」



『ナモーーーーーーーーーーーーーーー!!』



 ちょっと間抜けな怒りの鳴き声をあげながらタマねえを追いかけていたバッファローの前に、剣を持った悪そうなお兄さんとぺち子姉ちゃんが立ちはだかった。


 怒れるバッファローは『邪魔だ!』と言わんばかりに二人に突撃して行ったけど、紙一重で躱した悪そうなお兄さんとぺち子姉ちゃんが、左右から剣で斬りつけた。



「おーーー、やっぱり二人とも結構つえーな!」

「全然余裕そうだね」

「うん。魔法の援護も必要ない感じだよ」

「あの二人なら、2体同時に相手しても大丈夫な気がしますね」



 それから数回攻撃を加えた所で、バッファローが倒れて動かなくなった。


 盗賊と戦った時もやってたけど、苦しみが長引かないようにしっかりと息の根を止める悪そうなお兄さんが、相変わらず慈悲深いですね。


 戦闘が終わったので、拍手をしながら二人の元に駆け寄って行った。



「全然余裕だったな」

「ジャーキーのために頑張ったにゃ!」

「俺はともかくそっちの獣人が強いからな。何にしてもこれくらいの強さの魔物ならば、俺の部下共でも何とかなりそうだ」

「でも獲物を運ぶのがちょっと大変かもね。パンダ工房でバッファローを運ぶための専用馬車を作ってもらうといいかも」

「あーーーーー、その手があったか!パンダ工房の馬車はウチでも1台購入したんだが、マジで全然揺れないからスゲー感動したぞ!」



 おお~!悪そうなお兄さんの組織でもパンダ工房の馬車を使っていたとは!


 パンダ工房の馬車は、リーフスプリングどころかコイルスプリング式のサスペンションですからね。そりゃあ乗り心地も最強に決まってます!


 倒れていたバッファローは、レオナねえ専属のハム助が回収した。



「よし、次のはぐれバッファローを探すぞ!」

「2体同時でもいける?」

「ガイア、2体同時も試すか?」

「そうだな・・・、1体で行動しているバッファローを探すのも大変そうだから、2体同時に相手するパターンも体験しておくか」

「真のジャーキー職人を目指すにゃら、最低でも1対1でアイツを倒せにゃきゃダメにゃ!」

「いや、俺は適切な人材を派遣するだけだから、ジャーキー職人にはならんぞ」

「ムムム!じゃあランにゃんが戦うしかにゃいにゃ」


 いきなり戦闘を強要されたラン姉ちゃんは当然ぶちキレた。


「戦闘なんて無理に決まってるじゃないのさ!!それに私はアンタに巻き込まれて、仕方なくジャーキーを作ってるだけなんだからね!」


 何このツンデレチックなセリフ。

 いや、言うほどデレてはいないな。ただの苦情だ。



 結局悪そうなお兄さんとぺち子姉ちゃんの二人が戦闘係を続行することになり、次のバッファローを探しに移動を開始した。




 ◇




「クソガーーーーー!5体も狩っちまった」

「しょうがないよ。少し離れた位置にいたバッファローまで、タマちゃんの挑発ダンスに釣られるとは思わなかったし」

「効果があり過ぎた!これはタマも予想外」

「いや、これはこれで悪くないかもしれん。予定通り4体だけ俺達で解体して、1体は持ち帰って部下に解体させる」

「なるほど!どうせ解体も教える必要がありますからね~」

「じゃあその1体は部下達に食わせていいぞ。あの美味さを知れば仕事にやり甲斐も出るだろ。赤身の肉はジャーキーにするから渡せないが」

「おっ、そいつはありがたい!赤身の肉は明日にでも持って来る」

「ん?赤身だけでも結構な量だよ?あ~、ハム吉を連れて来るのか!」

「そういうことだ」



 ちょっと狩り過ぎちゃったけど、それはそれで有効な使い道があるので問題なしということになった。


 そしてグリフォンに乗っていつもの場所まで飛んで行き、全員へとへとになりながら4体ものバッファローを解体した。


 ボクとラン姉ちゃんは、モルモットを召喚して後ろで遊んでただけですが!






 ************************************************************






 我が家へと帰宅し、夕食とお風呂を済ませて寛ぎタイムに入ったところで、クリスお姉ちゃんに待ち望んでいたブツを手渡された。



「こ、これは・・・、ハゲヅラじゃないですか!!」



 なんてこった!忙しすぎて彼女に色々依頼してたことすらすっかり忘れてた。

 そういえば最近はハゲヅラを装着する機会も無かったもんな。



「服の完成はまだだけど、これは簡単だから先に作ったのよ」

「クリスお姉ちゃんありがとう!よし、早速試してみますか!」

「オイみんな気を付けろ!クーヤがハゲを光らせるぞ!!」



 晴れ舞台なので、スタンドミラーの前に立ってしっかりハゲヅラを装着した。



「じゃあ行きますぞー――――!!」



 家族が注目する中、ハゲを光らせるために集中する。



「・・・・・・・・・・・・・・・」



「おい、まだか?」



「あの~、頭から魔力を流すのってどうやるんですかね?」



 なんということでしょう・・・。

 ハゲヅラを光らせるには、頭から魔力を流さなければならなかったのです!


 うわ~、こりゃマジで難しいぞ!?

 

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