第358話 トイレ工事を引き受ける条件

 最強便器くんを体験して感動したレミお姉ちゃん親子でしたが、最後にママさんがとんでも発言をしました!


 なんとスタジオ・モコティーは、便器屋さんになるらしいですよ?


 まあアニメなんて何年後に完成するかもわからない状態ですから、それ以外のことで稼がなきゃならないってのは確かなのですが・・・。



 とりあえずリビングに戻って来た。



「ティアナ姉ちゃん、モコねえ、便器屋さんに就職おめでとう!」



 ワー パチパチパチパチパチパチ



 急転直下の便器屋さん爆誕に、リビングは拍手喝采雨あられだ。

 もちろんレオナねえやアイリスお姉ちゃんなんかは大爆笑していますが!



「モコピ、緊急事態だよ!就職先がアニメ制作会社じゃなくて便器屋さんになっちゃったよ!?」

「ふざけんじゃないです!先生に会社の説明会のことを聞かれた時に『便器を作ることがわたしの生き甲斐です』って言ったら、笑い者になるじゃないですか!!」


「「ぶわーーーーーっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!」」


「でもねえ、正直アニメの完成まで数年かかると思うのよね~。それまで会社を存続させるには他のことで稼がなきゃいけないじゃない?」

「ぐぬぬ、確かに会社が倒産してしまっては夢も潰えてしまうわけですが・・・」

「だからね、もう便器くんを作って売りまくるしかないの!それにアレ程の便器なのだから、飛ぶように売れてお金持ちになれるわよん?」

「お金持ち!?モコピ、便器屋さんもアリかもしれない!!」

「ねえママ、私があの便器くんのコピー品を完成させる前提で話してない?確かにコピー出来そうな気はするけど、クーヤちゃんの許可をとらなきゃダメよ!」


 レミお姉ちゃんのその言葉に、ママさんがハッとした顔になった。


「自分で便器作って売る予定もないですし、それが会社のためになるのなら勝手に作って構わないですよ~。それになぜかボクも社員みたいですし?」

「さすがクーヤちゃん太っ腹ね!素敵だったので専務に昇進したわよ♪」


 なにィ!?なんてヌルい会社なんだ!


「タマねえ大変です!いきなり専務まで大出世しました!!」

「さすクー」

「おーい、まだ会社が建ってねえぞ~!ってか、そろそろ土地を見にいかね?」

「あ、そうだったわね!じゃあとりあえず視察に行きましょうか~」



 というわけで、ロープを潜ってゾロゾロと隣の土地へ侵入しました。



「このロープの内側全部が買った土地だぜ!」

「本当に広いわね~!あのお屋敷が邪魔だけど」

「なるほど・・・。この広さなら、二階建てのアパートを建てても、その隣に会社を建てることが出来そうね」

「入り口は道路側になるから、アタシん側にアパートを置くか会社を置くかで話し合いかな?」

「それなら会社は反対側がいいわね」

「理由は?」

「会社経営が上手くいって建物を大きくしたくなった時、こちら側に広げるのは無理でしょう?」

「なるほど!向こうの土地が買えるかどうかはさて置き、ウチは絶対に売る気ねえしな!」

「クーヤちゃんの家がなかったら、そもそもここに会社を作る意味がないわ」



 レミお姉ちゃんのママさんって、実はすごい人なのかもしれない・・・。

 土地を見た瞬間、向こう側に広げることまで考えるなんてビックリですよ!


 いや、ボクんちの隣に拘る必要もないと思うんですけどね!

 なぜかそこだけは譲れない条件らしい。



 どんな建物にするか話しながら敷地内をぐるっと一周し、家の中に戻って来た。



 レオナねえとママさんで土地の権利書を広げながら話し合いが始まったので、ボク達はレミお姉ちゃんとトイレ工事の作戦会議中。


 水道管はレミお姉ちゃんが作れるみたいなんだけど、魔術師マジシャン賢者セージの土魔法で、地面を掘って壁を壊して水道管を設置する必要があり、トイレの床の改造もしなければならないようだ。


 さすがのレミお姉ちゃんでもすぐ終わらせるのは不可能なので、四日くらいかかるんじゃないかという話になった。もちろん土魔法要員はティアナお姉ちゃんかナナお姉ちゃんということになる。



「というわけで、完成するまでクーヤちゃんの部屋に泊まり込みで頑張るわね!」



 ・・・はい?



「ちょっとお待ちなさい。泊まり込む必要なくないですか!?」

「あるに決まってるじゃない!クーヤちゃんと一緒に寝て、クーヤちゃんと一緒に食事をして、クーヤちゃんと一緒にお風呂に入ることで、明日への活力になるの!」

「しまった!これは孔明の罠だ!!」

「またクーヤが意味不明なこと叫んでる」

「あの~、10万ピリンお支払いしますので、家から通う感じにはなりませんか?」

「お金の問題じゃないわ!私のエネルギーを回復させるには、クーヤちゃんをハムハムするしかないの♪」

「タマねえ、頼む人を間違えたかも!」

「もう諦めた方がいい」

「これほどの工事だと、業者さんに頼んだらたぶん1週間から2週間コースだと思うですよ?」

「ぐぬぬぬ・・・、すでにあの便器くんで頭がいっぱいなのに、2週間も待てるわけないじゃないですか!!」


 黙って話を聞いていたナナお姉ちゃんがビシッと手を上げた。


「はい、そこの方どうぞ」

「お手伝いする条件として、ウチにも便器くんが欲しいです!」

「なるほど、ナナお姉ちゃんも便器くんを御所望と・・・。オリジナルの便器くんは一つしかないので、レミお姉ちゃんがコピーできるかどうかですね~」


 それを聞いたレミお姉ちゃんの目が光った。


「私の家のトイレにも便器くんが欲しいから、トイレ工事をする前に調べまくっていいかしら?」

「便器くんは無事ボクの召喚獣になりましたので、たとえぶっ壊してしまっても新品に戻せるから好きにして構いませんですよ」

「召喚獣??」

「ん~、どう説明すればいいんだろ?・・・あ、そうだ!ラーメン召喚!」



 目の前にラーメンが出現した。



「タマねえ、このラーメンをバールで叩き割ってください!」



 バールを召喚すると、タマねえがすかさずキャッチした。



「叩き割る?・・・あ、意味わかった!」



 パリーーーーーン!



 タマねえは床を傷付けずに、ラーメンどんぶりだけパカッと半分に割ってくれた。

 当然、麺がグチャっと床に落下し、足もとはスープで大惨事となる。



「ええええええええええッ!?ちょ、床が酷いことになっちゃったわよ!?」


 当たり前なんですが、レミお姉ちゃんが慌てふためいてます。


「これもボクの召喚獣なのです。それがどういう意味を持つのか実際にお見せしましょう!・・・ラーメンくんごめんね~。消えてください」


 ラーメンが消えたので、床に広がったスープも消え去った。


「ラーメン召喚!」


 そして、割れる前の元気なラーメンとなって復活。



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



 レミお姉ちゃんは、目の前で起きた摩訶不思議現象に呆然としている。



「見ての通りラーメンはボクの召喚獣ですので、壊れても復活できるのです。そして同じように便器くんも召喚獣だから、壊してしまっても大丈夫なのです!」



 レミお姉ちゃんがラーメンを見ながら一言呟いた。



「うん。実際に目の前で起きた現象なのに、理解不能なのよーーーーー!!」



 デスヨネーーーーー!

 やっぱり『クーヤちゃんが謎生物だから』で納得してもらうしかないかも。

 

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