第123話 街の守護神を置きに行く

 孤児院の人達は全員パンダ工房に避難させることが出来た。


 やはりボロい建物じゃ不安が大きかったのだろう。ショタの言うことを素直に聞いてくれたので、その日は色々と準備をし、次の日の朝にパンダ工房へと避難した。


 パンダ工房ならば屈強なマッチョ戦士が何人もいるし、現在冒険者ギルドに出入り禁止のぺち子姉ちゃんもいる。


 戦闘力があるのにギルドに入れないのは何だかな~って思うけど、おかげでパンダ工房を守ってくれるのだから、ウチらとしてはラッキーだったかも!


 この有事にギルドからお声が掛からなかったのは、しばらく謹慎中だったから忘れられてるような気もするけどね。


 ラン姉ちゃんも、家族を連れて早速パンダ工房へと避難したらしい。


 彼女は職場のマッチョ達を良く知っているから、自分の家より安全って考えたんだと思う。ボクとしても知り合いは1ヶ所に固まっていて欲しいから助かるよ。


 当然ウチの家族もパンダ工房に避難する予定だ。

 今日の夕方頃、タマねえのご家族と一緒に工房へ向かうことになってる。


 人間が魔物の肉を喰らうように、魔物にとっても人間は食料なので、実は家を空けるってのは家を守ることにも繋がるのです。


 家の中に誰もいなけりゃ、魔物が家を襲う理由も無くなるからね。


 でもほとんどの人は家に閉じ籠る選択をするんじゃないかな?

 普通の家庭はマッチョ達と交友関係なんて無いですもん。


 それに戦闘職がみんな出払ってる状態だから、街の守りが突破されたらもうすべがないのですよ。戦えない者が何人集まろうがただの烏合の衆ですからね。


 運が悪けりゃどこにいたって死ぬだろうし、避難先で惨たらしく死ぬくらいならば自分の家で死にたい気もするよね。


 死ぬことを前提とした最低な仮説だけどさ。



 そして夕方頃タマねえのご家族を連れてパンダ工房へと向かい、なぜかウチの家族は社長室に一泊した。






 ************************************************************






 スタンピード当日の朝。東西南北の四つの門にゴーレムを配置するため、タマねえと共にまずは西門へと向かった。




「カロリーゼロなんかいねえじゃん!」

「あの意味の分からん噂は何だったんだ??」

「つーか魔物が街を守るとか意味わかんねぇんだよな~」

「スタンピードで街のヤツらも錯乱してんだよきっと」



 まだ早朝だというのに、もう何人もの冒険者達が門の様子を見に来ていた。

 何時に襲撃予定って言われても、その情報を完全に鵜吞みには出来ないからね。


 そうそう!少し前に大発見したのです!


 アイテム召喚で手に入れた物は遠くに出したりすることが出来ないんだけど、実は召喚獣ならば10メートル先とかに呼び出すことが出来るのです!


 というわけで、防壁の内側からゴーレムを召喚!



「ん?」



 仲間とスタンピードの対策を話し合っていた冒険者達のすぐ側に、カロリーゼロが3体出現した。



「うわああああああああああああああああ!!」

「魔物が出たぞ!!カロリー、・・・ん?」

「ああっ!噂のカロリーゼロじゃねえか!!」

「嘘だろ!?マジで街の守護神なのか??」

「いやでも街の外の方を向いたままだし、コイツらから敵意は感じられないぞ!」

「・・・うむ、確かにそんな感じだな?」

「スッゲーーーーーーー!!これはデケーぞ!街を守り切れるかもしれねえ!!」


 当然ながら冒険者達は大騒ぎだ。

 しかし頭が柔らかいのか誰も攻撃しようとはせず、例の噂を信じ始めた。


「名のあるテイマーの仕業かな?」

「まあ、そうとしか考えられんよな」

「でもカロリーゼロをテイム出来る奴なんかこの街にいたっけ?」

「聞いたことねえな。A級冒険者とかならば可能なのかもしれんが」

「近くにそれっぽいヤツいねえぞ??」


 おっと!そろそろ次のポイントに移動した方が良さそうだな。

 まさか防壁の裏側にいる子供が犯人だとは思わないだろうけどね。


「じゃあタマねえ、次は南門へ行こう」

「わかった」




 そして南門にも無事カロリーゼロを配置することに成功し、東門へと向かった。




「出たぞ!噂のカロリーゼロだ!!」

「スゲーーーーーーーーーーー!3体もいるぞ!!」

「いや、本当に大丈夫なのかコレ?こっちに攻撃して来ないよな?」

「思うんだが、コレを置いたのって絶対『黄色と黒』だろ・・・」

「間違いねえな」

「あの二人って本当に何者なんだ!?」


 おおう、バレてらっしゃる・・・。


「じゃあ最後に北門に配置して終了だ!」

「あと一つ!」



 防壁の裏から離れると、そこには悪そうなお兄さんがいた。



「さすがに貧民街スラムの住人達には犯人がバレてやがるな!」

「普段から召喚獣を見せ過ぎたようですね!」

「しかし良い時間帯だ。他はもう配置し終わったのか?」

「あと北門に配置したら終わりだよ!」

「北門か・・・」

「そろそろ行くけど、もうしばらくココに来ることは無いと思うから、防衛戦頑張ってね!!」

「おう、任せておけ!お前らも頑張れよ!!」

「いざとなったら特別攻撃隊を出すから大丈夫!敵と紛らわしいから最初は使えないけど」

「魔物のスタンピードなのにアレを出すのは拙いわな・・・」


 召喚士って職業柄、紛らわしいのはもうどうしようもない。

 召喚獣の色とかを変えられれば便利なのにさ!


 悪そうなお兄さんにチョコを渡した。


「おお、コレよコレ!」

「さっさと食べて!10分以内。タマも食べたいんだから」

「おい、あんま急かすんじゃねえ!まあすぐ食うけどよ」



 悪そうなお兄さんがチョコを齧り出した所で、北門に向かって出発した。



 そして他と同じく北門にもカロリーゼロを3体出したんだけど、例の噂を聞いていたらしく兵士達に攻撃されることは無かった。


 これでとりあえず最初のミッションは成功!


 再度タマねえに抱えられ、パンダ工房へと帰還したのだった。

 

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