第75話 女性達が大興奮してしまう

 夕食後、恒例のアイテム召喚をするため、全員が所定の位置に着いた。

 そしてその中には、当然のようにタマねえもいる。



 ・・・正直、プレッシャーに押し潰されそうです。



 しょうもない物ばかり出て来たからスルーしてただけで、実は3日続けてハズレだったんですよね。


 [板チョコ]→[コーヒーセット]の連続大当たりで運を使い果たしたのか、その後は[黒板消し]→[ベニヤ板]→[田中くんの上靴(右)]という最悪な結果だった。


 当然『右靴だけ出てどうすんだよ!』ってツッコミはしたけど、どっちにしろ中古の上靴なんて出て来られても全く履きたいと思わないし、足のサイズも合わないしで、田中くんに迷惑をかけただけという・・・。


 マジックで上靴に『田中』とデカデカ書いてあったので、所有者は一目瞭然だった。しかし彼は、右の靴だけ行方不明になってしまったのです。


 田中くん、本当にスマン!

 リコーダーの持ち主と同一人物だと思うんだけど、彼は呪われてるのかもしれん。



 ・・・とまあ、そういうわけで、今日こそは良いアイテムを召喚して威厳を取り戻さねばなりません!



「今日こそは使えるモノをお願いします!アイテム召喚!!」



 ヴォン



 眩しい光が雲散すると、そこには生前何度も目にした10cm程度の小さな紙袋が出現していた。



「キターーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」



「え?クーヤくんが叫んでるってことは当たりなの!?」

「随分と小さな袋だな」

「クーヤくんが喜ぶモノっていうと、大体食べ物とか飲み物だよね」

「靴が出た時はぶん投げてた」



 手に持った瞬間、『おそらく』が『確信』に変わった。

 でも念の為、丁寧にテープを剥がして中身を確認し、匂いも嗅いだ。


 よっしゃあ!ハンバーガー来ましたーーーーーーーーーーーーーーーー!!


 しかも匂った感じ、作り立てで間違いありません!温かくはないけどね。

 これならば、このままストックしても問題無いよな?


 ・・・いや待て!どうせなら温めて、すぐかぶりつける状態でストックだろ!


 そういや、電子レンジってまだ一回も使ってないな。

 最初に手に入れた便利アイテムなのに、なんで忘れてたんだろ・・・。



「電子レンジ召喚!」



 久しぶりに四角い万能家電とご対面した。



「あーーーーっ!また新しいのが出て来た!」

「クーヤの奴、どんだけ隠し持ってるんだよ!!」

「今日召喚したのより、アレの方が凄そうじゃない!?」



 この電子レンジはおそらくほぼ新品だと思うんだけど、最新型のボタンがいっぱい付いたヤツじゃなく、レバーを捻るだけで勝手に起動するタイプだ。


 扉を開けて、ハンバーガーを入れ、レバーを捻る。

 その瞬間ランプでレンジ内が照らされ、下の台が回転を始めた。


 パンは温め過ぎると縮んで最悪なことになるから気を付けろ!


 ・・・3,2,1,ここだ!!



 チーーーーーン!



 クーヤちゃん自らレバーを戻し、レンジを強制終了させた。

 そして中からハンバーガーを取り出し、温め過ぎていないことを確認。



「よっしゃーーー!完璧じゃあああああああああああああああああ!!」



「もう全然意味が分からないけど、すごく喜んでるわね」

「アレは何なんだ!?中が光ってたぞ!」

「サッパリわからないけど、すごく便利な道具かもしれないね」



 よし、もうストックしても大丈夫だよな?・・・うん、抜かりはないハズだ。



「ストック!」



 ハンバーガーが消えた。

 召喚獣リストのバグった文字をハンバーガーに書き変える。



「ハンバーガー出て来い!」



 そしてイメージ通り、手に持つようにハンバーガーが出現。

 よし、ホカホカだ!さて、問題のお味の方は・・・。



 パクッ



「・・・・・・・・・・・・・・・」



「あ、食べた!!」

「なんか固まってない?」

「泣いてねえか?」



「うんまーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」



 パクッ モシャモシャ ごっくん!


 その美味さと懐かしさに、一気に食べ尽くしてしまった。



「あーーーーーっ!全部食べちゃった!」

「さっき『ストック』って言ってたから、チョコみたいに何度でも出せるのかも?」

「見てよ。あの幸せそうな顔・・・」

「アレは本当に美味い物を食った時の顔だ。こりゃあ期待出来るぞ!!」



 極楽浄土へと飛んでいた意識が、ようやくショタの小っちゃい身体へと帰還した。



「ハンバーガー召喚!」



 食べてすぐだったけど、初回は全員にサクサクと回していかなきゃならないので、10分のインターバルは無しだ。


 そして再召喚により、満腹感が消失したのがわかった。



「思った通りだ!究極のダイエット食品が爆誕です!!」


「なんか意味不明なこと言ってるけど・・・」

「クーヤくんって興奮すると外国語が混ざるのよね」

「でもほら!ハンバーガー?ってのを手に持ってるぜ?」


「じゃあ・・・、よし!ここはレオナねえからにしよう!!」


 レオナねえにハンバーガーを渡した。


「お?何か温かいぞ!!」

「うん!電子レンジで温めてから召喚獣にしたの。だから呼び出すたびに温かいんだよ!とにかく食べてみて!ああ、外側の紙は食べられないからね」


 レオナねえが包装紙をめくる。


「おおーーーーーーーーーー!これは絶対美味いだろ!!」


 パクッ


「・・・・・・・・・!?」


 パクッ モシャモシャ ごっくん!


「うんめえええええええええええええええええええええええ!!こんな味付けの料理なんて初めて食ったぞ!あ、でもマヨが入ってるのか!?」


「正解!!じゃあ次の人に回さなきゃだから一旦消すね」


 ハンバーガーを再召喚した。


「あーーーっ!口の中から味とか全部消えちまった・・・」


「そうそう!召喚獣にすれば何度でも食べられるんだけど、次のを呼び出した時に食べた物が体の中から消えちゃうの。でもね、痩せたい時や太りたくない時とかに良いと思わない?」


 その言葉を聞き、クリスお姉ちゃん・ティアナ姉ちゃん・お母さんの3名が、ハンバーガーを持つショタを取り囲んだ。


「いくら食べても太らない・・・ですって!?」

「ほ、本当にそんな夢のような食べ物が!?」

「クーヤちゃん、次はお母さんが食べてみていいかしら~?」



 そして、この場にいた全員がハンバーガーを絶賛し、寝るまで争奪戦が繰り広げられることとなった。



 夕食後にも関わらず飢えた狼のような状態ってことは、みんな基本的にセーブしながら食べていたのかもしれないね。


 そこに突如現れた『食べても太らないハンバーガー』。


 うん。

 ナイスバディーを維持したい女性にとっては、奇跡の食べ物なのかもしれない。


 しかしあの温厚で控え目なお母さんまで争奪戦に加わるとは・・・。

 チョコレートの時といい、俺はなんて恐ろしいモノを召喚してしまったのだろう。

 

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