第199話 もう全員分捕まえるしかないでしょう
怒りを鎮めるにはコレしかないと、グリフォンから直接ナナお姉ちゃんのおっぱい目掛けてダイブし、どうやって捕まえたのか詳しく説明した。
久しぶりのスキンシップが功を奏したのか、危ないことは何もしていないとわかったナナお姉ちゃんの怒りも静まり、デレデレモードに突入。
・・・ふっ、チョロいわ。
その代わり、今度は悪そうなお兄さんとタマねえの冷たい視線を浴びてますけど。
「ドラちゃんに狩りを頼むのはなんかずるいぞ!しかし、あのデカいのを倒したのもクーヤなわけだから、当然の使い方ではあるのか・・・」
「まあ倒す順番がおかしいってだけだな。最強の召喚獣を先に手に入れてしまったから違和感があるのだろう」
「それにしても大きな鳥だね!コレって私達でも乗れるんじゃない?」
「たぶん乗れる。タマが乗ってても全然余裕そうだった」
「マジか!乗ってみてえぞ!!」
怖いモノ知らずのレオナねえなら乗りたいって言うと思った。
他の人達はどうなんだろな~。
ああ、ボクですか?
マスコットキャラとして、ナナお姉ちゃんのおっぱいと戯れるのが今の仕事ですので、忙しくて会話に参加できません。
でも今日はグリフォンに乗って遊ぶ流れになった感じです。
香辛料を爆買いするにも、資金源となる魔物を捕まえるのには失敗してるからね。
結局もう一度魔物を狩りに行く必要があるから、ちょうど良かったのか。
いや待てよ?どうせなら・・・。
「じゃあ今日は全員分のグリフォンを捕まえることにする?」
「グリフォン?」
「ああ、その鳥にグリフォンって名前を付けたの!最初は『ラムシュクルーム』って名前だったよ」
「ほうほう、『ラムシュクルーム』にしても知らない名前だな。ミミリア王国にはいない魔物なのかもしれん。って、コレを全員分だと!?」
レオナねえほどの冒険者でも知らない魔物がいるのか~。
「ええええええええええええ!?全員分ってことは、あと4体も捕まえなきゃならないんだよ?」
「空を飛ぶ魔物なら私達にはどうすることも出来ないし、ドラちゃんに任せるしかないよね」
「いいかもしれねえ・・・。ドラちゃんだと人目を気にしながらの移動になるが、その辺を飛び回ってる魔物ならば、人に見られても大きな騒ぎにはなるまい。長距離移動には向かないだろうが、街から街への移動には最適と言えよう」
「面白え!!しかし空から落ちたら怪我どころじゃすまねえぞ?クーヤもタマもよく平気な顔して乗ってたな?」
「クーヤは空から2回落ちてる」
「・・・クーヤちゃん?」
イカン、またもやナナお姉ちゃんからの冷たい視線が・・・。
「パンダクッションがあるからボクは大丈夫なの!じゃあグリフォンを捕まえながら、街の外でみんなの飛行訓練をしようよ!」
「パンダクッションって何だよ!?」
「ほら」
パンダちゃんを仰向けに召喚した。
「ああ、そういうことか!」
「空から落下しながらコイツを召喚するのか?いや、結構際どいだろ!!」
「大丈夫なのです!もう安全な乗り方を確立させましたので!」
「嘘くさい」
「どうも信用できないな~」
「まあとにかく街の外に向かおうぜ。一度乗ってみりゃわかるだろ」
というわけで、グリフォンを一旦消してから、トナカイに乗り換えて街の入り口に向かって歩き出した。
ちなみに、好奇の視線は慣れっこなので誰も気にしてないけど、通りすがりの住民達はグリフォンを指差して大騒ぎしてました。
◇
「いや、おかしいだろ!なぜ普通に角の生えた馬に乗っているんだ!あのラムシュクルームはどこへ行ったんだ!?」
「クーヤはちょっと頭がおかしいんだ」
「酷いこと言いますね!」
「頭がおかしいとかそういう問題じゃなく、物理的におかしいと言っている!」
とまあ門兵をそんな会話をした後、ドラちゃんを飛ばしても平気そうな場所まで移動した。別にいつのも場所に拘る必要はないのです。
「じゃあドラちゃん、昨日の大きな鳥をいっぱい捕まえてきてください!」
『ギュア!』
バサッ バサッ バサッ バサッ
元気良く『任せとき!』と関西弁で言ったドラちゃんが大空へと舞い上がった。
もちろん嘘です。なんかそれっぽかったので関西弁で翻訳しました!
「クーヤの狩りは楽でいいな・・・」
「召喚士ってズルくない!?」
「普通の召喚士の場合、もし強い召喚獣を手に入れられたとしても、魔力不足で苦労するんじゃないかな?クーヤちゃんは余裕そうだけど」
「召喚士つったら、俺も不遇すぎる噂しか聞いたことねえぞ」
確かに最初は、メルドアを1体出しただけで魔力がカツカツになったもんな~。
身体の成長によって魔力が増えても、精々倍くらいまでだと思うんだよね。でも魔力を増やす画期的な方法があるかもだから、ボクだけが特別だとは思ってない。
「グリフォン1号2号召喚!」
まずは1体しか使わないと思うけど、一応2体呼び出しといた。
「おお、デカい鳥キターーーーー!」
「グリフォンって名前みたいだよ?」
「確かにこれなら私達でも乗れるかも!」
「しかし空から落ちたら最悪死ぬぞ?」
「じゃあ、この中で一番死ななそうなレオナねえから乗ってみる?」
「当然アタシからだ!でもさっき安全な乗り方を確立させたとか言ってたよな?それってクーヤ限定の乗り方なのか?」
「タマねえも同じ方法でやって落ちなかったよ。でも体重が重くなるとグリフォンが痛がるかもしれないので、一度乗ってみてどうなるかですね!」
「痛がる??」
タマねえと一緒にグリフォン2号の背中に乗って、毛を縛って輪っかを作り、それに掴まって身体を安定させる方法を実践してみせた。
ゴーレムの手の平に乗ってそれを見ていたレオナねえ達も、この作戦には納得いったらしく、同時に『痛がるかも?』と言った意味も理解した。
「確かに一度やってみないことにはわからんな。もしグリフォンが痛がって飛べないようなら、作戦を変更しよう」
「待て!命綱はあった方がいい。中央に輪っかをもう一つ作って、自分の胴体と紐で繋ぐんだ。一度でも落下したら海外旅行どころの話ではなくなるぞ!」
「賛成!」
「うん。安全には特に気を使わなきゃね!」
なるほど・・・、命綱のことなんかスッカリ忘れてましたよ。
悪そうなお兄さんって意外と冷静ですな。
手持ちのロープを切っちゃうのはもったいないので、ビニール紐を召喚し、それを何重にもして使うことにした。
それで輪っかも補強したので、もう簡単には壊れないと思う。
グリフォン1号の輪っかを大人用の配置にし、万が一に備えて、タマねえをグリフォン2号を使っての救出班に任命した。
1号の下を飛び、訓練中の誰かが落ちたらキャッチするのだ。
難しい任務だけど、タマねえは救助のプロですから安心して任せられます。
「んじゃ始めっか・・・。飛べ、グリフォン!」
グリフォンが空に舞い上がった。
それを追うように、タマねえもグリフォン1号に続いた。
バサッ バサッ バサッ バサッ
バサッ バサッ バサッ バサッ
「うっひょーーーーーーーーーーー!こりゃすげえ!!」
空の上からレオナねえの喜ぶ声が聞こえてきた。
・・・うん、なんか余裕そうですね!
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