第198話 グリフォンに乗って飛行訓練

 人に見られると大騒ぎになるのが明白なので、ドラちゃんにお礼を言ってから一旦謎空間に帰ってもらった。


 召喚士に呼び出されるまで、召喚獣達はその気持ちいい空間でポカポカと眠っているらしい。すぐに意識が無くなるから、寂しいとかそういうのも感じないそうです。



「よーーーし、飛行訓練の開始だ!もしグリフォンから落ちたとしても、パンダ2号を召喚して着地するつもりだから、タマねえはここで見ててね~」

「すごく心配だけど、そういう作戦なら変に助けに入らないようにする」

「・・・と思ったけど、乗る時だけ手伝ってください!!」

「わかった」



 ボクなら落下してもパンダクッションを出せるから、まずは一人で飛んでみて、攻略法を見つけ出すことにしたのだ。


 タマねえにポイッと投げてもらい、グリフォンの背中にしがみついた。



「じゃあグリフォン、飛ぶ時みたいにゆっくり羽を動かしてみて!」


『クルルッ』



 バサッ  バサッ  バサッ



 なるほど・・・、羽がこう動くのならば頭の後ろ辺りに乗れそうな気がする。

 問題なのは、飛行形態の時に頭が水平になってしまうかどうかだな。



「はいストップーーーーー!絶対落ちると思うけど、飛んでみてください!」



 グリフォンが空に舞い上がった。



 バサッ バサッ バサッ バサッ



 おお!?それほど頭が水平にならないぞ!


 うおっ!スピードが上がってきた!

 くおおおおおお!ヤバイ、踏ん張り切れない!


 これは無理ーーーーーーーーーーーー!!



「にょあ~~~~~~~~~~~~~~~~~~!」



 ショタのコンパクトボディーでは風圧に耐えきれず、空中に放り出された。


 ってあんまり高く飛んでないじゃん!地面近いって!!



「パンダ2号召喚!!」



 もふっ!


 なんとかギリギリで、パンダちゃんのお腹の上に着地することが出来た。



 あっぶねーーーーーーーーーーーーー!

 ドラゴン戦の時と違って高度が無いから逆に危険だ。



「グリフォン戻ってこーーーーーい!あとゴーレム1号召喚!」



 ゴーレムに手伝ってもらい、再びグリフォンに乗る。



「ウーーーム、どうしようかな?」



 やっぱグリフォン用の鞍を作るしかないのかなあ・・・。

 でも理想としては、パッと召喚してパッと乗れるのがいいんだよね。


 何となくグリフォンの羽毛を調べてみると、座ってる辺りの毛はカラスの羽みたいな感じではなく、ただの白くて長い毛だった。


 これならば、毛を縛って輪っかに出来そうな気がしますよ?



 輪っかを二つ作って、そこに掴まってみた。



「これなら踏ん張れる気がする!グリフォンくん、飛んでみて!」



 グリフォンが再び空に舞い上がった。



 バサッ バサッ バサッ バサッ



「おおおーーーーー!これなら何とか耐えきれる!・・・って、足が浮いてるうううぅぅぅ!にょあ~~~~~~~~~~~~!!」



 両足が宙に浮いた状態で、更に握っていた輪っかも両方ぶっ壊れ、またもや空中に投げ出されてパンダちゃん2号のお腹の上に着地した。



「クーヤが落ちてきた。そろそろ交代する?」



 どうやらタマねえの近くに落下したようだ。



「ボクにもう一度チャンスを!次で成功する予定なのです!」

「なんか嘘くさい」

「いや本当に本当!足が浮かなければ耐えきれるハズ!でもタマねえに一つお願いがあるのです」

「お願い?」



 タマねえもグリフォンの上に来てもらい、右手用・左手用・右足用・左足用の四つの輪っかを、壊れないようにガッチリ作ってもらった。


 再召喚すれば毛並みなんかは元に戻るから、解けないほどキツく縛っても問題ないのだ。もちろんグリフォンが痛がるようならダメなんだけどさ。



「今度こそボクは空を支配してみせる!」

「タマも乗りたいんだから、これが最後の挑戦」

「くっ、大丈夫!次こそは絶対成功させます!」



 タマねえが降りた後、再びグリフォンが空に舞った。

 三度目の正直だ。失敗は許されない。



 バサッ バサッ バサッ バサッ



「うおおおおおおおおお!タマねえが縛ってくれたからフィット感が違うぞ!輪の中に手を突っ込んで変な握りにしたのは英断だった!これなら落ちない!!」



 さっきの3倍以上の距離を飛行し、悠々とタマねえの元まで帰還した。



「大成功です!」


「やったーーーーーーーーーーー!」



 グリフォン2号の背中にも長い毛を縛った輪っかを四つ作り、さっき発見した握り方をタマねえに伝授した。



 そして黄色と黒コンビは、満足するまで空の散歩を楽しんだのでした。




 ◇




 バサッ バサッ バサッ バサッ



「うおっ!ラムシュクルームが!!」



 さっきの門兵が驚いて槍を構えた。



「ボクだよ!」

「忘れ物を取ってきた」


「ああっ!さっきの子供達じゃないか!!いやいやいやいや、なぜラムシュクルームなんかに乗って・・・、まさか忘れ物ってそいつのことなのか!?」


「うん。かわいいでしょ?」


「可愛い!?いや、可愛いとかそういう問題ではなく、ラムシュクルームをテイムしているヤツなんか初めて見たぞ!空飛ぶ大きな魔物をどうやって2体も・・・」



 初めて見たってことは、グリフォン持ちのテイマーや召喚士がこの街には一人もいないってことか。なかなか良い情報を聞けたぞ!


 かわいい顔してるけど大きいし、やっぱ強いのかな?ドラちゃんがサクッと捕まえてきたから、強さなんてサッパリわからないんだよね。



「じゃあボク達は宿に戻るから、またね~~~~~!」

「またねー」



 バサッ バサッ バサッ バサッ



「ちょっと待て!お前ら今度は角の生えた馬を忘れてきてないか?オーーーーイ!」



 後ろからごもっともなツッコミが聞こえてきたけど、聞き流して宿屋へ向かって飛んで行った。




「あのバカタレコンビは、どこに行きやがった!!」

「置手紙には魔物を狩ってくるとしか書かれていなかった」

「昨日街に入った門から外に出たんじゃない?」

「もう、クーヤちゃんは勝手なんだから!」



 バサッ バサッ バサッ バサッ



「「ただいまーーーーーーーーーーーーーー!!」」



 宿屋の前で話し込んでいたレオナねえ達が振り向いた。



「なんだそりゃ!!」

「・・・俺はもう突っ込まねえぞ?」

「不思議生物が空から帰ってきたーーーーーーー!」

「クーヤちゃん!誰にも相談しないで魔物を狩りに行っちゃダメじゃない!」



 空の散歩に夢中になって、ちょっと帰って来るのが遅れちゃったから、ボク達を探しに出るところだったみたい。ギリギリセーフ!!


 ただですね、みんなの反応は予想通りなんだけど、ナナお姉ちゃんだけちょっと感覚がズレてないですかね?

 

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