第175話 ドラゴンに乗って空の旅

 大きなトラブルも無く、ドラゴンに乗って大空へと舞い上がったクーヤちゃん一行だったけど、今回も無事に帰るのが一番重要なテスト飛行なのです。


 墜落したら死は免れないという本当に危険な旅でもありますので、少なくとも空の旅に慣れるまでは気を抜くことすら出来ません。



「クーヤ、魔力の方は大丈夫なのか?」

「よゆーよゆー」

「本当なんだろな!?あまり余裕ぶられると逆に心配になるんだが・・・」


 レオナねえも心配性ですね~。


 でも『大丈夫なのか?』って質問はやめて下さい!思わず『大丈夫だ、問題ない』という超絶死亡フラグを口に出してしまうところだったし!


「たぶんだけど、夕方まで飛び続けてから折り返して、夜中に家に帰って来るくらいが限界かな?」

「あ、意外と分かり易い解答かも。でも遠くまで行くと時差があるみたいだから、夕方まで飛ぶって考えはダメだよ?ちゃんと時計を見て時間を測らなきゃ!」


 あーそっか!アイリスお姉ちゃん頭良いな~。

 時差のせいで、夕方が来ないまま魔力切れになる可能性だってあるわけだ。


「えーと、あの真ん中の線まで行くと夕食の時間なんだよね?」

「正解~!大体3時頃空に飛んだから、6時くらいに折り返せば丁度良い時間に帰れるかな?」

「にょあああああ、混乱するーーーーー!!時計ホント嫌い!!



 そうなのです!

 この世界にも時計はあるのですが、地球のと全然違うのですよ!!


 まず地球は1日24時間だったけど、この世界は1日20時間なのだ。

 そもそも1分が60秒じゃないから、根本的な部分から何もかもが違う。


 まず日本でいうところの朝6時が、こっちでは0時。

 日本のお昼の時間でもある12時がこっちの5時で、夕食を頂くのは大体10時。


 ココは外国なのだからと思い込んでも、1日20時間の時点でズレまくりだ。


 ・・・こんなん覚えられるか!!


 どうしても自分の中にある常識が邪魔をしてしまい、この世界の時間設定にまったく馴染むことが出来ないのだ。


 しかもゴンドラに設置されている時計までもが全然馴染みの無いモノでして、形は横に長く伸びた長方形で、一番左が0時で一番右が20時となっている。


 おそらく変な常識が無ければスッと頭に入って来るんだろうけど、こちとら毎日見ていた日本のアナログ時計が骨の髄まで染みついてるんですわ!



 マジでこれだけは無理だ・・・。時計を覚えるのはまた今度ということで!!



「目覚まし時計召喚!」



 時計を見比べながら時間を合わせ、目覚まし時計をテーブルの上に置いた。

 これでクーヤちゃんはあと10年戦える!



「またその謎時計を出したのか!相変わらずまん丸でワケ分からんな」

「ボクが理解出来ればそれでいいのです!」

「字も読めないけど、12個って半端な数なのが特に意味不明だよね!」

「これだけ時計に違いがあったら覚えられないよね~!外国って1時間の長さまで違うのかな?一度もこの国から出たことないから、お姉ちゃんにはまったく理解できません!」

「タマには読める!!これが1で、これが7!」

「そうそう!クエクエをやってるタマねえならば数字も楽勝だね!」



 この世界の1日の長さは20時間だけど、少し前に検証した結果、地球の24時間と数十分程度の違いしか無いことがすでに判明してるので、毎回時計を合わせる必要はあるけどほとんど問題無く使えるのだ。


 ちなみにこの世界の1日の方が地球より若干長かったんだけど、違和感みたいのはまったく無いですね。


 神様が用意したボディーだからか、順応しただけなのかは知らんけど。


 そうこうしているうちに結構時間が経っていたようで、目覚まし時計を見ると12時になるところだった。



「そろそろお昼だけど」

「あっ、向こうに島が見える!」

「ん?島!?」


 タマねえがそう言ってから数秒後、ボク達の目にも島が見えた。


「丁度昼か。ならば今日はあの島で少し遊んでから帰ることにするか!」

「賛成~~~~~!」

「もしかすると人が住んでたりして!」

「ドラちゃん結構速度出してたし、ここまで船で来るのって結構キツいんじゃ?」

「もし人がいたら、船で遭難した人とかかもね」

「意外と大きな島だな。おいクーヤ、ドラちゃんに降りてって言わなきゃ通り過ぎてしまうぞ?」

「そうだった!ドラちゃん、その島に降りてもらえる?」


『ギュア!』


「よしみんな、着陸に備えろ!」

「「了解!」」



 離陸した時のように、全員後ろの壁にへばりついた。



 バサッ バサッ バサッ バサッ



 ドラちゃんも慣れたもので、ボク達が転げ回らないよう優しく着地してくれた。



 ガチャッ



「まずアタシらが行って様子を見て来る!クーヤとタマはそこで待機だ!」

「はーーーい!」

「クーヤはタマが守る!」



 攻撃力ならボクが最強だとは思うけど、防御力がゼロですからね~。もしボクに何かあったら全員帰れなくなるので、過保護になるのも無理はないのですよ。



「よし!クーヤとタマ、降りて来ていいぞーーー!」



 レオナねえから許可が出たので、タマねえと一緒に扉をくぐって外に出た。



「「おおおおおおお~~~~~~~~~~~~!!」」




 ―――――そこは楽園だった。




 まず視界に飛び込んで来たのは美しい大自然だ。


 思った以上に大きな島で、すぐ近くには草原が広がっている。

 左側は岩場が続いていて、ずっと奥地には深そうな森が見える。

 そして後ろを振り返ると、大きな海が広がっているのだ!



「すごく綺麗な景色だね!」

「ここなら住める!」


 レオナねえ達三人も、この島の美しさに感動しているようだ。


「とりあえず第一印象は素晴らしいの一言だな!」

「ちょっと肌寒い季節なのが残念だね~」

「でも人は住んでないような気がする。文明の匂いがゼロだもん」


 確かに砂浜を見渡してもゴミ一つ落ちてませんね。

 生粋の無人島に来てしまったようだ。


「さて、島の探索でもしようぜ!」

「だけど危険な魔物が住んでる可能性もあるよ?」

「手に負えない魔物がいたらココまで逃げてくればいいよ!ドラちゃんを出しっ放しにしておくから!」

「それなら安心ね!」

「一応メルドアも呼んだ方がいいんじゃ?」

「あ、たしかにこういう時はメルドアの出番だ!」



 家でゴロゴロしていたメルドアを一旦消して、無人島に召喚した。



『オン!?』


「あははははははは!ビックリした顔してる!!」

「このメンバーならば、どんな魔物が相手でも大丈夫だろ」

「あ、ちょっと待って!ドラちゃんを休ませてあげたいから、一旦ゴンドラを降ろそうよ」

「あーーーーー!たしかにゴンドラが付いたままじゃ窮屈で休めないよね」

「ドラちゃんごめんね~!気付くのが遅れちゃって・・・」


『ギュア!』



 ゴーレムを数体呼び出し、ゴンドラを地面に降ろした。

 ゴンドラが壊れても大変なことになるので、ハム助を召喚して収納してもらう。



「よーーーし!無人島の探索にしゅっぱーーーーーーーーつ!」


「「オーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」



 こうしてクーヤちゃん一行は、無人島を探検することになったのでした。

 

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