第174話 まいあがれ、そらたかく!
リリカちゃんが不死鳥ラーニャンに乗って世界を飛び回ってから二ヶ月ほど過ぎ、もう季節は秋になっていた。
そんなある日のこと、ボクとリリカちゃんが通う学園とタマねえが通う小学校の休日が重なる日に合わせて、レオナねえ・アイリスお姉ちゃん・ナナお姉ちゃん・タマねえ・そしてクーヤちゃんの五人は、オルガライドの街のずっと北までやって来た。
「さすがにココまで来れば、街の人達にドラゴンを見られる心配は無いだろう」
「南にさえ行かなきゃオルガライドの人達に見られることは無いと思うけど、西に進んでも国中大騒ぎになるよ?」
「そっちもダメだよね。でも北にはドラちゃんが怖がるほどの大きなドラゴンがいるんでしょ?それに未開の地だから危険だし」
「地上からドラゴンの姿が見えないほど高く飛べば西に行っても大丈夫だとは思うけど、初めての空の旅で無茶な行動は避けるべきだ。いきなり海上を飛ぶのも正直怖いが、やっぱり東に進むのが無難じゃないか?」
少し前に冒険者ギルドの一室に連れて行ってもらい、かなり大雑把な世界地図を見せてもらうことができたんだけど、そこで初めてボクが出現した場所が『ミミリア王国』の北東に位置する『オルガライドの街』だってことが判明しました!
ミミリア王国そのものが大陸の北東にある国なので、北東の超北東にある街といった感じですね。
北に未開の地があるくらいなので、この領地を任されている『オルガレイダス伯爵』は、おそらく辺境伯と呼ばれる身分なのだと推測される。
この街を襲った魔物のスタンピードも、北に未開の地があるからこそ発生した現象らしく、だからあれほどまでに大量の魔物が襲い掛かって来たのです。
もしこの街が壊滅していたらミミリア王国全体に被害が及んでいたかもしれないのだから、無能なんじゃないかと思ってたオルガレイダス伯爵だけど、実は結構頑張ってた方なのかもしれないと考え直した。
というか、それ以上にこの街の冒険者達が実力者揃いなんだと思う。
未開の地を切り開く冒険者達なんだから、そりゃ強くて当然だよね!
でもってオルガライドの街周辺の地形なんだけど、北に進むと広大な未開の地があって、そのもっと奥まで入り込むと強力な魔物が数多く存在するらしい。
ドラちゃんの話では、住んでた島をデカいドラゴンに乗っ取られたとのことなので、北の未開の地を越えた先には海があるんだと思う。
ああ、でもオルガライドの東に大きな海が広がってるらしいから、もしかするとドラちゃんは北東の辺りから来たのかもしれないね。
飛んでる魔物に北も東も関係ないだろうから、何となくこっち側から来たってくらいの感覚だろうしな~。
思えばボク達が本気を出せば、かなり正確な地図を作ることも出来るのか・・・。
まあそういうのは気が向いたらだね~。
でもって、ずっと西に行くと隣の国があって、ずっと南にも違う国があるんだけど、残念ながら字の勉強をしている最中ですので、字を読むのがだるくなって適当にスルーしました!
とにかく西方面と南方面には国がいっぱいあるのです。
ミミリア王国以外にならドラゴンを見られても全然構わないので、空の旅に慣れたら是非そっち方面にも遊びに行きたいですね!
世界のあちこちを冒険するにしても、やっぱり知らない国に行ったりするのが楽しいのですよ。まだこの街しか知らないボクには過ぎたる冒険ですけどね~。
ゴンドラを設置していたレオナねえ達三人が、ロープを使ってドラちゃんの背中からスルスルと降りてきた。
「準備が出来たぞ!」
「飛んでいる最中にゴンドラが外れるなんてことは無いハズだよ」
「ようやく、人の目を気にすることなく自由に飛び回れるんだね!」
「うわ~緊張してきた!」
「楽しみ!」
ボク達だけじゃなく、久々に空の散歩に行けることにドラちゃんも楽しそうにしている。なんか散歩に行く前の犬みたいでかわいい。
「ドラちゃん、今まで不自由な思いをさせてごめんね。今日は思う存分、大空を飛び回れるから!」
『ギュア!』
「よし、ゴンドラに乗り込むぞ!」
「「オーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」
ゴンドラの扉を開けて中へ乗り込み、全員が正面の壁にくっついた。
そして空を飛ぶ時の定番となった、あのセリフを全員で叫ぶ。
「「舞い上がれ、空高く!この大空は、お前のもの!!」」
『ギュア!』
ドラちゃんが翼を広げ、大空へと舞い上がった。
すかさず体勢を入れ替えて、前後に並んでいる二つのソファーに全員が着席し、手前に設置してある手すりに掴まった。
「よし、大丈夫そうだな。速度を上げてもらっていいぞ!」
召喚士と召喚獣を繋ぐパスを使い、ゴンドラの中からドラちゃんと会話をする。
「ドラちゃん、大丈夫そうだから自分の飛びやすい速度まで上げていいよ!」
『ギュア!』
その瞬間、今まで体験したことのないG(重力加速度)がかかったけど、それほど強いモノでは無かったので、すぐに慣れることが出来た。
「速度を上げると、押さえつけられたような感覚になるんだな!」
「ビックリしたよ!でもちょっと慣れてきたかも」
「なんて美しい景色なんだろう・・・。これは感動だよ~」
「本当にすごい!!」
ナナお姉ちゃんの言葉を聞いて視覚に意識を戻すと、正面に設置されている強化ガラスの向こうには素晴らしい景色が広がっていた。
「うわ~~~、これは感動するね!!」
「やっと今までの苦労が報われたって感じだな!」
「テスト飛行の時とは、何もかもが全然違うよね!」
「私達、本当に空を飛んでいるんだね~」
「あ、海だ!」
「・・・え?どこ?」
タマねえは視力が化け物クラスなので誰もすぐにはわからなかったけど、数秒後、視線の先に大きな海が出現した。
「うおーーーーーー!もう海に出るとか、どんだけ速度出てんだよ!?」
「なんか思ったよりも怖くないよね?」
「そうそう!凄い速度で飛んでるんだろうけど、全然怖くないの!」
それだけこのゴンドラの出来が素晴らしいってことだろうね!
・・・さてと。
まっすぐ東に飛んでいるとも限らないから、街の各地に散らばっている召喚獣の位置をしっかりと覚えとかなきゃな。
オルガライドの住民達には絶対見られるわけにいかんので、ショタの仕事は結構責任重大ですよ?
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