第173話 不死鳥ラーニャン

 今日も一日学園で字の勉強を頑張り、帰宅した後は夕食とお風呂を済ませ、そうこうしているうちにアイテム召喚の時間となり、全員が所定の位置に着いた。


 もう長いこと続けているから、本当に色々なアイテムを手に入れてきたわけだけども、お菓子類が全然出て来ないことにボクは不満を感じていた。



「そろそろお菓子とか美味しい物が欲しいです!アイテム召喚!!」



 ヴォン



 いつものように眩しい光が室内を照らし、光が雲散したあとに出現していたモノを見て、思わず飛び上がりそうになった。



「うわああああああああああ!馬の頭が出たーーーーーーーーーーーー!!」



「うぇっ!?ちょっと待てや!そりゃいくら何でも洒落になってねえぞ!」

「う、嘘でしょ?そんなの怖いから早く捨ててよ!」

「生き物の頭だけ出ちゃったの!?」



 当然ながらギャラリー達も大騒ぎだ。

 まさかこんなモノを召喚してしまうなんて、ボクが一番ビックリだよ!!



 ・・・・・・ん?



 よく見ると、この馬の顔ってちょっとアホヅラすぎませんかね?


 手に取ってひっくり返してみた。



「あーーーーーっ!コレってアニマルマスクじゃん!!」



「アニマルマスク?何だそりゃ?」

「えーと・・・、魔物の生首じゃないってこと?」

「うん。頭にかぶって遊ぶオモチャだよ!」



 数歩前に出てから馬マスクを装着し、みんなの方を振り返った。



「ぶわーーーーーーーっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!」

「あはははははははっ!顔だけ怖い子供だ!本当にアホすぎるから!!」

「何なのよ、その気持ち悪い被り物は!!」

「クーヤちゃんが全然可愛くないのよ~」

「うわーーーーーーーー!クーヤ、こわいからこっちみないで!!」

「格好良い!クーヤ、それちょっと貸して!!」



 なぜか格好良いと評価したタマねえに馬マスクを渡した。

 すると彼女は躊躇なくそれを装着。



「馬の鼻と口から前が見える!!」



「「あーーーーーーっはっはっはっはっはっはっはっは!!」」



 そのシュールな姿に大爆笑が巻き起こったけど、タマねえはどうやら馬マスクがとても気に入ったらしい。



 この感じだと、時折馬少女を見かけるようになってしまうかもしれませんね!






 ************************************************************






 馬マスク騒動の翌日、学園から帰宅した子供達はクエクエに勤しんでいた。そして仕事の疲れを癒すのに休暇を取っていたレオナねえも、何となく後ろで見ていた。




「「*わたしたちは」」

「「*たまごを、まもっています」」

「*6つのオーブを、それぞれのだいざにささげたとき」

「*でんせつのふしちょう、ラーニャンがよみがえりましょう」



 勇者リリカ一行は、六つある台座に一つずつオーブを捧げていった。



「*ああ・・・」

「*このひをどんなに、まちつづけていたことか!」

「*さあ、いのりましょう」

「*いまこそめざめのとき!」



 リリカちゃん、クーヤ、タマねえ、そして後ろで見ているレオナねえの興奮が最高潮にまで高まる。



「*まいあがれ、そらたかく!このおおぞらは、おまえのもの!」



 タマゴが割れたと思ったら、不死鳥ラーニャンが画面上をくるくる回り出し、どこかへ飛び去ってしまった。



「クーヤ!どっかいっちゃったよ!?」

「大丈夫だよ!たぶん外に飛び出していっただけだから!」


 勇者リリカが急いで神殿の外に出ると、昔のゲームだからちょっと分かりづらいけど、不死鳥ラーニャンがすぐ近くにいるのが見えた。


「あっ、上にいる!!」

「いたーーーーーーーーーーーーーーー!!」


 勇者リリカ一行が、不死鳥ラーニャンに乗り込んだ。


「えーーーーー!なにこれ!?」

「みんなで不死鳥ラーニャンに乗ったの。移動してみて!」


 リリカちゃんが上に移動すると、不死鳥ラーニャンは今まで行き止まりだった海を通り抜け、どこまでも羽ばたいて行った。



 ♪テーーーーーーン テーレレーーーレーーーレーーー テレレレレーーーン



 シリーズでも一番美しいとされる雄大なBGMが流れ、不死鳥ラーニャンはどこまでもどこまでも飛んで行く。



 その光景を見ながら、自分が涙を流していることに気付いた。

 いや、ボクだけじゃなく、みんな泣いていた。



 リリカちゃんは感受性の強い子なので、ゲームに感動して泣いているんだと思うけど、ボクとタマねえとレオナねえの三人は、それとはまた少し違う涙だった。



 ―――――これが夢物語じゃないってことを知っているから。



 まだボク達は世界の果てまで飛んだことはない。

 けれど、もう少しで夢が叶う所まで来ているのだ。



「・・・レオナねえ、やっぱり隠すのなんて無理かも」

「ぐしゅっ、ああ、わかってる!でも今すぐってわけにゃいかんな。絶対に安全だと確信を持ってからだ」

「祝福の儀までに一度乗せてみるべき。意外と重要なことかもしれない」


 タマねえの言葉に、ボクとレオナねえはハッとした。

 言われてみると確かに、学園に通っている理由ってのがまさにそれなのだ。


 大事なのは、知ること。経験すること。


 無知では平凡な職業にしか辿り着けないが、知ることで得る職業の可能性は無限に広がるのだ!もしかすると、空を飛ぶことで稀有な職業を授かるかもしれない。


「クーヤ!いわのうえもいけるよ!」

「不死鳥ラーニャンは大空を飛んでるから、海も岩も飛び越せるみたいだね!」

「すごーーーーーーーーーーーーーーい!!」



 ちなみに今やっているのはクエクエⅢだ。クエクエⅡはもうすでにクリアしていて、続けてシリーズ最高傑作とも言われているクエクエⅢを始めていたのです。


 ファミファミで遊べるのはクエクエⅣまでだから、Ⅲをクリアしたら少しペースを落とした方がいいのかな?


 アイテム召喚でスーパーファミファミを手にれることが出来れば、その先のⅤやⅥなんかも遊べるんだけどな~。


 本体だけじゃなくゲームも手に入れなきゃならんから、ちょっと無理っぽいけどさ!



 しかしドラゴンに乗れるようになった途端、リリカちゃんが不死鳥ラーニャンに乗ることになるとはね・・・。


 これも運命の悪戯ってヤツなんでしょうか?

 

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