第176話 無人島の調査

 

 クワア クワア クワア



 探検隊のメンバー5人は速やかに草原を突破した後、岩場はスルーして森の前までやって来た。


 この島の脅威を知っておく必要があるので、今日やらねばならんのですよ。


 いくら美しい島とはいえ、死ぬほど危険な魔物がわんさかいたら、気軽に何度も遊びに来るなんて無理ですからね。


 とりあえず鳥の鳴き声が聞こえるから、生き物はいるみたいだ。



「なんか・・・、思ったより全然危険な感じがしねーな」

「私もそう思った」

「メメトンゼロの森は、ココよりもっとピリピリしてたよね~」


 あ、やっぱり?

 ボクもこの森からは嫌な感じがしないなーって思っていたのです。


 いつからか魔物の接近なんかがわかるようになったんだけど、今のところ全然魔力を関知できないんですよね。


「ムムム・・・、魔物の気配がしない」

「この島の魔物を何体か召喚獣にしたかったんだけど、いないなら別にいいや」


 この島で捕まえた召喚獣をそのまま無人島に置いておけば、次回来る時に島が見つけやすくなるからね。


 でもそれは別に電子レンジみたいな家電でも構わないのだ。もちろんそんな有能な家電じゃなくて、もっと使い物にならんようなヤツを置いてくけどさ。


「まあとりあえず森に入ってみようぜ」

「ゴーゴー!」



 危険な森じゃなさそうだってことで、無人島探検隊は軽い気持ちで森の中へと入って行った。




 ◇




「あっ、メメトンだ!」

「メメトンゼロ?」

「普通のメメトンだよ。魔力がほとんど無い普通の動物の方だね~」



 なるほど・・・。


 魔物の生態はよくわからんけど、元々メメトンゼロってのは普通の動物で、なんらかの原因で魔力を持つようになって、大きくなっていったのかもしれないね。


 あと魔物ってのは人間を見ると襲い掛かって来るんだけど、今見つけた全長1メートルくらいのメメトンは、ボク達を見てビックリして逃げて行ってしまった。


 魔物と動物とでは狂暴性も違うのかもしれない。



 そして更に奥まで進むと、今度は地面を歩く鳥を発見した。



「あの鳥走って逃げてったけど、なんで飛ばないの?」

「えーとねえ、『クーピー』は鳥なんだけどなぜか飛べないんだ~。立派な羽が生えてるのにね!街に売ってる鶏肉はほとんど『クーピー』のお肉なんだよ」

「へーーーーーーーーーー!!」


 それって鶏じゃん!今見た『クーピー』はオレンジ色だったけど、たしかに食い物として見たら美味しそうな予感がする。


「川だ!」


 タマねえが指差す方を見ると、小川が流れているのが見えた。


「試しに水を飲んでみっか?」

「お腹が痛くなっても『ハムみず』の一気飲みで治せるし、試すしかないっしょ!」

「それもすごく嫌なんですけど!!」



 小川の近くまで行くと、思った通りの綺麗な水が流れていた。

 これは飲んでも大丈夫な感じですよ?



 ゴクゴクゴクゴク


「うめーーーーーーーーーーーー!!この美味さなら腹を壊しても悔い無しだ!」



 レオナねえが躊躇なく飲みやがりましたね。

 ボクも飲んでみよう!



 ゴクゴクゴクゴク


 みんな探検して喉が渇いてたようで、結局全員が小川の水をがぶ飲みした。



「しかしこの島って、マジで大当たりじゃね?まだ全部調べたわけじゃないけど、動物が暮らしてるのに魔物は全然いねえし水も綺麗だ」

「十分暮らせるよ!ここに引っ越して余生を過ごすのも全然アリ!」

「まだ若いのに気が早いよ!でも本当に素晴らしい島だね~」



 あとは海の幸次第かな?


 ここも気温はオルガライドと一緒でどちらかというと寒い地域だから、魚にも期待出来るような気がする。


 そういや、この前アイテム召喚で出したリール付きの本格的な釣り竿で海釣りを試せるじゃん!運の良いことに、釣り針やオモリといった投げ釣り用の仕掛けが付いた状態のが出てくれたのですよ!


 ただ筋力皆無のショタには難易度が高いから、他の誰かにやってもらおう。



「ねえねえ!もうそんなに時間が無いから、最後に海で魚を釣ってみない?」

「それは良い!」

「ああ、そういやこの前釣り竿を召喚して喜んでたな。なるほど・・・、残るは海の幸ってわけか!」

「岩場で貝なんかも獲れるかも!」

「面白そう!行こう行こう!」



 残念ながらいつまでも森を探索してる時間は無いので、最後に海の幸を調べるため、ドラちゃんが待つ浜辺へと引き返した。


 メルドアを呼んだ意味がほとんど無かったな~。ごめんよ!




 ◇




「うっしゃーーーーーーーーーー!大物が釣れたぜーーーーーーーーーー!!」

「レオナねえすごい!!」

「見ただけでわかる。これは絶対美味しい」

「こんなに丸々と太った『イーギラ』を見たのは初めてだぞ!コレって秋が旬の魚だっけかな?いや、この島がスゲーだけかもしれねえな!」


「オーーーーーーーーイ!」

「いっぱい貝が獲れたよ!!」


 丁度良いタイミングで、貝を獲りに行っていたアイリスお姉ちゃんとナナお姉ちゃんが戻って来た。


「よし、じゃあコレを食ったら帰ろうぜ!土産に持って帰ると、どこで買ったのか聞かれるに決まってるから、証拠は全て隠滅するぞ!」

「あーそっか!1日で港町に行けるわけもないのに、言い訳するのが難しいよね」

「しょうがないか~。じゃあ全部食べちゃおう!」


 街で魚介類が買えないわけじゃないんだけど、圧倒的新鮮さに疑問を持たれてしまうと誤魔化すのが大変だからね~。ドラゴンの秘密はまだ明かせないし。




 ジュワー パチパチパチパチ


 アイリスお姉ちゃんとナナお姉ちゃんが獲ってきた『ツブ』みたいな貝に醤油を垂らすと、爆発的な香ばしい匂いが辺りに充満し、マジで気絶しそうになった。



「うおおおおおおおお!醤油の匂いってやべーな!」

「実はこの時をずっと待っていたのです!!」

「あ!これって、この前クーヤが躍り出すほど喜んでた調味料だ」


 ムーンウォークはやり過ぎでした。黒歴史なので忘れて下さい!


「こんなの美味しいに決まってる!全部にかけて!!」

「なぜか涙が出てきたよ」

「いや、それは煙が目に入っただけだろ!」



 そして実食。



「「うまーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」



 ツブみたいな貝も死ぬほど美味いけど、レオナねえが釣り上げた『イーギラ』って魚もめちゃくちゃ美味いし!


 貝や魚をもらったメルドアも美味しそうにガフガフ食べている。ドラちゃんはそれとは関係なしに、自分で狩ってきたサメのような魚に喰らいついてるけどね。



 これでハッキリしました。この島は最強です!



 ドラゴンの旅を想像してた頃は、知らない国を歩く自分を思い浮かべてたんだけど、こういう無人島にやって来て遊ぶってのも最高ですね!


 もうこうなったら家族のみんなも連れて来るしかないよな~。

 この楽しい時間をボク達だけで独占してることに後ろめたさがあるのですよ。


 あとは決行日時の問題ですね。


 冬の無人島なんかに連れて来ても、この楽しさは味わえない気がする。

 リリカちゃんの『祝福の儀』までに間に合わせなきゃだから、春がいいのかな?




 ◇




 ※ショタコレの登場人物紹介&その他のページを作りました!

  見てみると案外面白いかもです。詳しくは近況ノートをご覧下さい。

 

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