第118話 類は友を呼ぶ

 ドMチンチクリンを草むらの上に正座させて熱心に教育していると、後ろから知ってる声が聞こえた。



「なんか可愛い声が聞こえると思ったら!クーヤくん、今日は公園で遊んでたの?」



 振り向くと、そこにいたのはティアナ姉ちゃんだった。

 まあ家の近くの公園だから、通りがかりに異変を察知したのでしょう。


 こっちに近付いてきた。


「ティアナ姉ちゃんお帰り~!」

「ただいまー!ん?なんで女の子が地面に座って・・・え!?モコピじゃない!」

「ああーーーっ!ティアナだ!!」


 えええ?この二人って知り合いだったの!?


「何でこんな所にいるの??しかも地面に座ってるし!」

「それは、え~と・・・」

「モコねえは放っておいたら犯罪者になってしまうから、教育してたのです!」

「わーーーわーーーわーーーー!言わないでえええええええええええええ!!」

「何なのよ?一体・・・」



 今日のこれまでの出来事を、包み隠さずティアナ姉ちゃんに説明した。



「わたし悪くないよね!?こんな可愛い子を見つけたら、誰だって追いかけるに決まってるです!!」

「ぐぬぬぬぬ・・・、気持ちはわかるよ。クーヤくんの可愛さは飛び抜けてるし」

「そんな可愛い子がすぐ目の前に現れたら、つい抱きかかえて公園に逃げ込んでしまっても仕方ないです!!」

「たしかに私でも我慢できないかも!抱きしめてクンクン匂いを嗅ぐくらいならギリギリ許されるかな?うん、モコピは無罪ね」


「ティアナ姉ちゃん、お前もかーーーーー!!」



 ドMチンチクリンの隣にウチの変態姉ちゃんも正座させた。

 そして陰キャを拗らせると犯罪者になってしまう危険性を二人の脳に叩き込む。



「ところで二人はどういう繋がりなの?」

「モコピはお姉ちゃんの親友だよ!」

「同じ学校に通ってるです!ティアナとは話が合うから、一緒に部活をしている仲間なのですよ!」

「へーーーーーーー!!どんな部活なの?」

「漫画を描いてるんだよ!」



 ・・・・・・なんかすごく嫌な予感がしません?



「一応聞いておきましょう。どんな漫画?」

「女性が可愛い男の子と恋に落ちる漫画だよ!!」

「それだけじゃないです!少年同士が恋愛する漫画とかも描いてるですよ!」

「BLじゃねえか!!思いっきり腐女子仲間やんけーーーーー!!」



 やっぱりコイツら変態道を突き進んでやがった!!


 前からティアナ姉ちゃんからは、腐ってる匂いを感じてたんだよな~。

 おねショタとBLを同時進行していたとは・・・。


 こりゃもう手遅れか!?



「ビーエルって何?」

「ん?ああ、えっと・・・、考えただけで脳が腐りそうなので本当に嫌なのですが、仕方ないので説明しましょう。少年同士の恋愛のことを他国の言葉で『ボーイズラブ』と言うのですが、それを略して『BL』なのです」

「略になってない気がするけど『ビーエル』ってのはなんか良い言葉ね!」

「フジョシってのは何です?」

「少年同士の恋愛とかいう腐りきった話が好きな変態女性のことを、畏敬の念を込めて『腐女子』と呼ぶのです!」

「これは何だか馬鹿にされてる気がするよ!」

「蔑まれてる感じだけど、この道を引くつもりは無いですよ!!」


 このドMチンチクリン、開き直りやがった!!


「とまあ質問には丁寧に答えましたが、クーヤちゃんは寛大なので、腐女子が嫌いなわけではありません。他人に迷惑をかけなきゃ好きにやっていいと思います!」

「流石はクーヤ様なのです!でも最近行き詰ってるであります!」

「行き詰ってるって言っても『BL』だよね?元々女性にはわからない世界なんだから、想像するしかないんじゃない?」

「ムムムム・・・、どこかに愛し合ってる少年達とかいないですか?」

「知らんわ!!」


 もうBLは嫌っスーーーーーーー!!

 そろそろこの話を終わらせたい・・・。


「そうだ!モコピって暇?ちょっとウチに寄って行きなよ!」

「ティアナの家って近いの?」

「すぐそこだよ!」

「おおおーーーーー!ティアナの部屋は見てみたいですよ!!」

「よし、じゃあ決まりね!」



 なんか知らんけど、モコねえがウチに来ることになったようだ。

 もう夕食の時間だけど、自分ちに帰らなくていいんだろか?




 ◇




「うぇえええええええええ!?なんかデッカイのがいるですよ!!」

「パンダちゃんだよ。ウチのペットなんだ」



 当然ながら初めて来た人にとって、この家は『ビックリハウス』だ。

 もう慣れたけど、質問が止まらなくなるのも恒例行事です。



「もふもふで幸せなのですよ~~~~~~~~~~!!」

「自慢のペットだからねー!」


「この四角くて大きいのはなんです!?」

「ゲームだよ!」


「アイスクリームだったですか!!美味しすぎるーーーーー!!」

「フルーツパフェって名前だよ!私も大好きなんだ~」



 そして夕食までの接待が終わり、お風呂で身を清めた後は、全員がアイテム召喚に備えて所定の位置に着く。


 どうやらモコねえはウチに泊って行くようで、今日は特別ゲストとしてティアナ姉ちゃんの隣に座っている。



「今日はお客さんもいることだし、良いモノをお願いします!アイテム召喚!!」



 ヴォン



「目がああああああああああ!目がああああああああああ!!」



 後ろからアニメ映画に出て来た大佐のセリフみたいなのが聞こえて来たけど、家族のみんなはもう慣れっこです。眩しいことに変わりはないのですが。



 ―――そして光が消失した後に出現していたモノを見て愕然とする。



「BL漫画じゃん!これ絶対その二人のせいでしょ!!」



 ティアナ姉ちゃんとモコねえの方を指差した。



「「ビーエル漫画!?」」



 もの凄い食いつきで迫って来た変態コンビにBL漫画を奪われた。



「フォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

「うわ~~~うわあ~~~!すっごい綺麗な絵!でも文字が読めない!!」


 ティアナ姉ちゃんがこっちを見た。


「クーヤくん、これ翻訳して!!」


 ナニイイイイイ!?BL漫画の翻訳とか絶対嫌なんですけど!!


「いや、BL漫画はちょっと・・・」


「これは行き詰った私達に神様が授けて下さった贈り物なの!!クーヤくんお願い!終わったらお礼に膝枕で耳かきしてあげるから!」

「いや、それってティアナ姉ちゃんのご褒美みたいなもんじゃ・・・」

「お願いよおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

「あ~もうわかったから泣かないで!やるから!!やらせて頂きますから~~!」



 結局ティアナ姉ちゃんに泣き落とされ、『BL漫画の翻訳』という地獄のような仕事をすることになりました・・・。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る