第117話 チンチクリン
クルッ! ササッ
「やっぱりいる!」
パンダ工房からの帰り道。
ぺち子お姉ちゃんは仕事なので、ショタ一人で我が家に向かってテクテクと歩いていたのですが、出ましたよチンチクリンが!
前回はクリスお姉ちゃんの会社からの帰り道だったから街の中央区に出没したハズなんだけど、西区でしか行動していない時に現れたってことは、このチンチクリンは西区の住民なのかもしれん。
メガネのチンチクリンな女性にコソコソ尾行されているだけだから脅威とかは無いと思うんだけど、こんなストーカーみたいなのに家の場所を知られるのはマズイぞ。
面倒臭いけど、今すぐ対処せねばなるまい・・・。
クルッ! ササッ
やはりついて来てるな。
ならば勝負はこの先の
そうそう、アルファベットの『T』を用いて
T字路でも間違いじゃないんですけどね。クーヤちゃんの豆知識講座でした。
とてててててててて
追いつける速度で少し走ってから、
タタタタタタタタ
焦って追いかけて来たチンチクリンが目の前に現れた。
「ボクに何か用?」
「え?・・・わわわわっ!!」
当然ながらチンチクリンはパニックになった。
―――そう。人は混乱すると思わぬ行動をとる時があるのです。
がしっ!
「ふぁっ!?」
タタタタタタタタタ
「にょわ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!」
チンチクリンはショタを抱えて走り出した。
◇
どうやら、クーヤちゃん
「や、やっちゃった。どうしよう!!」
思わぬアクシデントが、少女に間違いを起こさせてしまいました。
彼女は誘拐犯になってしまったのです。
でもクーヤちゃんも鬼ではありません。助け舟を出してあげましょう。
「元の場所に返してくればいいんでない?」
「あ、そうか!元に戻せば全部無かったことに!」
チンチクリンと目が合った。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
ぎゅ~~~~~~~~!
「うっひょーーーーーーーーー!可愛すぎいぃぃぃぃぃ!!」
「にょわ~~~~~~~~~~~~~!」
ダメだこの女!
腕の中にショタがいたことを思い出して、理性が吹き飛びおった!
「ハアハアハアハアハアハア、これを返すなんてとんでもないですよ!」
「返さなきゃ逮捕されますぞ!!いいのですか?一時の気の迷いで『変態誘拐犯』と呼ばれることになるのですよ!?」
「・・・くっ!変態は認めるけど、誘拐犯は嫌ですうううううううう!!」
「変態は認めるんかーーーーーーーーーーーーーーーーい!!」
とにかく彼女をこの場で説得しないと、これが切っ掛けで立派な犯罪者に育ってしまいそうな気がする。変態を認めた人間にはもう怖いモノなど無いからな。
しかしまだ中学生か高校生くらいの年齢で刑務所暮らしはキツかろう。
よし!ここは一つ、被害者的目線からの助言をしてやろう。
「チンチクリンのくせに変態だったことには大変驚きましたが、ウチにも一人変態がいるのでそこは大目に見ましょう」
「変態はいいですけど、チンチクリン呼ばわりは酷いですううううう!わたしよりもチンチクリンな子にチンチクリンと蔑まれ・・・、あれ?興奮するですよ!?」
イカン!これは逆効果だ!!
ドMを開花させてしまうと、とんでもないことになってしまう。
「ところでお名前は?ボクはクーヤだよ!」
「クーヤちゃん!?すっごく可愛い名前です!いや、クーヤ様!!」
「いや、様とかホントにやめて!っていうか名前は!?」
「あっ、モコピレーナですよ!呼び捨てにして下さい!」
「しないから!!じゃあ長いから『モコピ姉ちゃん』って呼ぶね!」
なんかすごく異世界を感じる珍しい名前が出て来たな~。
「姉ちゃんとかいらないです!モコピでいいです!いや、ちょっと違う?小さな子に荒々しく『モコ!』って呼ばれる方が興奮しますですよ!」
「だから呼び捨てにはしないってば!じゃあ『モコねえ』で決まりね!!」
「モコねえ・・・ほうほう!悪くない響きです!」
うわ~面倒臭いなあ、このドMチンチクリンは!
・・・おっと助言するんだった。
「モコねえが変態なのはもう十分わかりましたが、こういう人気の無い場所に連れ込んではダメです!そのやり方では犯罪者になってしまいますからね!」
「犯罪者って呼ぶのだけは勘弁してほしいですううううううう!」
「ボクくらいのショタになると、お姉ちゃん達にはむはむされるのは日常茶飯事です!しかしそのお姉ちゃん達は逮捕されていません。なぜなら、はむはむしても犯罪者にならない方法があるからです!」
「ええええええええええええええええええ!?詳しく!!」
「人目のある場所で正々堂々とやるのです!陰キャは人目から逃げようとするからダメなのです!」
「クーヤ様!『インキャ』ってなんです?」
あ!また地球言語が出てしまった。
「おっと失礼。人間ってのは二種類いて、皆でワイワイ楽しく騒ぐ『陽キャ』と、ワイワイ騒いでる陽キャの輪に入れず一人孤高の道を歩む『陰キャ』に分かれているのです」
「それ!!すごく分かりますですよ!美男美女が集まってウェーーーイしてる輪の中になんか入れるわけないです!!」
「ボクも昔は陰キャでした。だからその気持ちは十分わかります!」
「昔って、クーヤ様は5歳くらいじゃ!?」
しまった!生前の21年間を陰キャで過ごしたというのに、言うことが出来ん!!
「シャラーップ!細かいことを気にするからモコねえは陰キャなのです!!」
「ハッ!?クーヤ様のお言葉は絶対でした!やっぱり陰キャのわたしなんか呼び捨てでいいです。一生ついて行くです!」
「だから呼び捨てにはしないし、一生とか重すぎだから!!」
「じゃあ3日ついて行くです!」
「そんなこと言ってずっと居付いてる変な猫がいるから、その流れは却下!!」
ダメ猫だけならまだしも、ドMチンチクリンまではさすがに無理っスーーー!
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