第116話 パンダ工房

 翌日、ベイダーさんと話をするために、ぺち子姉ちゃんと一緒にベイダー工房へとやって来た。


 そして程なくしてライガーさんと合流。

 いつものようにライガーさんが大声でベイダーさんを呼び、事務所へと移動した。



「まずはこいつを見てくれ!」



 ライガーさんがパンダ社長を召喚した。



「なんだこりゃあああああああああああああ!!」

「あーーーーーっ!パンダにゃーーーーーーーーー!」

「え?ちょっと!これってパンダじゃない!!」


「「わあああああ~~~~~~~~~~~~~~~~!!」」



 ライガーさんとクーヤちゃんの登場に何かを感じ取ったラン姉ちゃんも、孤児院の女の子達を連れて事務所に来ていたのだ。



「ベイダーのおっちゃんに紹介しよう。本日をもって工房の社長に就任した『パンダ社長』だ!」


「・・・・・・はあ!?社長だと!?」


 当然ながらベイダーさんは意味が分からず狼狽えている。


「ぷっ!・・・これ絶対クーヤ師匠が入れ知恵したでしょ?だってまったく意味がわからないもの!」

「意味不明なことが起きたら大体ししょーの仕業にゃ!」


 なんかもうこの二人には完全にバレてるな。


「まあ意味が分からんだろうから説明しよう。そして意味が分からないことを言い出すのは大体クーヤだ。俺は代弁してるだけだからな?」


 そう言った後、ライガーさんが昨日話し合った作戦の説明を始める。



 でも怪奇現象が発生した時に、全部クーヤちゃんのせいにされそうなのが納得いきませんぞ!!少なくともぺち子姉ちゃんはこちら側の人間でしょ!



「・・・という理由からだ。しかし工房の名前に関してはベイダーのおっちゃんの判断に任せる!これはただの提案であり、強制してるわけでも頼んでるわけでもないからな?思い入れがあるならば今まで通りで全然構わない」

「いや、実に面白い発想ではないか!工房の名を変えるのも良いだろう。他人の名前になるとかならお断りだが、パンダってのはこの動物のことなのだろう?」

「その通り!」

「わっはっはっはっはっは!『パンダ工房』か!いやこれは面白い!!」


 自分の名が消えてしまうというのに、面白いの一言で済ますベイダーさんもめちゃくちゃ器がでけーっス!


 よし!ベイダーさんが賛成となれば、今日からここは『パンダ工房』だ!


 これなら名前だけでもやる気が出るよね!

 ・・・と言っても自分はたまに遊びに来るだけの5歳児ですけど。


 ラン姉ちゃんの方へ視線を向けると、むしろその隣にいる孤児院の女の子達が、興味津々でパンダちゃんを見つめていた。


「パンダちゃんはとても温厚だから触っても大丈夫だよ!ほら、こっちに来てみんなで触ってみなよ!」

「クーヤ、それはパンダちゃんじゃなくてパンダ社長だ!!」

「うわ~ライガーさん細けーっス!でも確かにウチのと勘違いしてた所もあるので、ご指摘感謝っス!」

「何で変な口調になってんのよ?」

「たまにそういう口調の新人が入って来たりするにゃが、気を許すとずうずうしくにゃるから気を付けるにゃ」

「クーヤ師匠って新人だったの!?これは厳しく教育しないと!」

「新人じゃないっスーーーーーーー!」



 おちゃらけながら孤児院の女の子達をパンダ社長の側に連れて行き、初回サービスのお腹モフモフを体験させてあげた。



「うわ~~~~~!ふっかふかだあ~~~~~~!」

「幸せ~~~~~~~~!」

「可愛すぎる!!こんな動物がいたんだね!」


「いや、それ一応ウチの社長だからな?」

「こんな可愛いのが社長でウチの工房は大丈夫なのかしら?」

「ちょっと儂も触ってみていいか?」

「そういや俺もまだ触ってなかったな・・・。どれ」


 おっさんコンビもパンダ社長の背中を触り始めた。


「おおおおおお!確かにコイツは素晴らしい触り心地だ!」

「凄いな。これほどまでに変化するとは・・・」


 我慢出来ずにラン姉ちゃんとぺち子姉ちゃんまでもがパンダに抱きつき、社長の威厳が一瞬で皆無となった。



「あ、そうだベイダーさん!」

「ん?どうした?」

「工房の改築って結構大規模なの?」

「ガッツリやるつもりだぞ!幸い土地だけは広いから、孤児院の子供達が暮らす為の家も建てようと思っている。馬車を何台も入れる為のデカい倉庫もだな」


 マジかーーーーー!!

 それなら外観も美しくした方がいいよね。


「貝殻って手に入らない?いっぱい大量に!」

「はあ?そんなもん何に使うんだ?」

「工房の入り口なんかに貝殻を砕いて敷き詰めるんだよ!すると真っ白い道になって、すっっっごく綺麗なの!」


 その光景を想像した女性陣の目がキラキラと輝き出した。


「クーヤ師匠、それ採用!!」

「これは意味がわかったにゃ!めちゃめちゃ良い考えにゃ!」

「ほ~~~~~!それは考えたことも無かったな。貝殻で道を作るとは・・・」

「よくそんなにポンポンと面白いことを考えつくもんだ!しかし残念ながらこの街じゃ貝殻が手に入らん。白い石ころでも構わんか?」


 あーそっか!港町でもなきゃ無理だよな。


 前にライガーさんが言ってたけど、この街から海に行こうとしたら馬車で1週間はかかるらしい。


「白い石ころなんてあるんだね!外観を綺麗にしたいだけだから逆にそっちの方がいいかも?貝殻だと雨が降ったら地面がニュルニュルになるかもしれないし」

「うわ、ニュルニュルは嫌ね・・・」

「滑って転んだら、お尻が真っ白ににゃりそうにゃ」


 適当な思い付きで行動したら、予想外な罠にハマったりするんですよね。

 今にして思えば貝殻が手に入らなくて良かったかも。



「じゃあそれで決まりだな!改築が終わるまでには手に入るだろう。さあて、今日から此処は『パンダ工房』だ。そして馬車の販売を開始する時も近付きつつある!皆には気合を入れ直して頑張ってもらうぞ!」


「「おーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」



 ライガーさんの勝利により、ようやく全てのピースが揃いましたぞ!

 後はもう、事業の成功に向かって突き進むのみです!!

 

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