第157話 『メメトンカツゼロ』

 レオナねえはナナお姉ちゃんの家に行っているんだけど、今夜はアイリスお姉ちゃんとナナお姉ちゃんがウチに泊るらしい。


 時間はまだ午後2時くらいなので、今から行動すれば夕食までに十分間に合うということで、何か美味しい料理を作ることになりました。


 昨日お母さんのハムちゃんに、ボク達が持ち帰ったお肉を移したので、手元にメメトンゼロの高級お肉がたっぷりあるのですよ!


 ならばもうアレしかないでしょう!

 満を持しての『トンカツ』だーーーーーーーーーー!!


 正確にいうと『メメトンカツ』ですね。いや、ここは敬意を表して『メメトンカツゼロ』って呼んだ方がいいのかな?メメトンカツの最上級バージョンってことで。



「ねえお母さん!こういう料理知ってる?」

「ん?一体何かしら~?」



 別に難しい料理じゃないので、作り方をザっと説明した。



「なるほど、お肉を油で揚げるのね?完成品を見なくちゃ何とも言えないけど、たぶん一度も食べたこと無いんじゃないかしら~?」

「絶対美味しいから作ってみようよ!」

「そうね~。じゃあお母さんが作るから、クーヤちゃんは作り方を説明してね~」

「わかった!でもパン粉が必要だから、先にパン粉から作るよーーー!」

「乾燥させたパン粉ならあるわよ~!ハンバーガーを作ることが多くなったから、ウチでは欠かせない必須アイテムなのよ~?」

「そうだったのかーーーーー!!」


 最初は普通のパンをフードプロセッサーで木っ端微塵にして使ってたんだけど、いつの間にか、生パン粉から乾燥パン粉にパワーアップしてたんですね。


「必要な材料は、塩・胡椒・小麦粉・卵・パン粉、それと大量の油です!」

「大量ってどれくらいかしら~?」

「えーと・・・、肉がすっぽり油に埋まるくらいなんだけど、ああ!フライパンのこの辺くらいまで入れれば大丈夫!でね、使った油に変な味がほとんど付かないから、次回の料理にも普通に使えます!」

「使った後に捨てなくてもいいのね~!」

「あとは~、縦に細かく切ったキャベツもいっぱい欲しいです!」

「お野菜もたっぷり使うのね~!わかったわ~」


 もちろん地球のキャベツとは若干違うし、名前も違います。

 でもまあ似たような野菜なので、ボクの頭の中ではキャベツなのだ。


 ちなみに塩や胡椒も、知ってる味に近いからそう認識してる感じかな?



 先にキャベツを大量に刻んでから、メメトンゼロの高級肉を丁度いい大きさに切ってもらった。


 そして肉に軽く塩・胡椒を振ったら、小麦粉→卵→パン粉と順に付けていき、それを十分温まった油の中に投下!



 ジュワーーー ボコボコボコボコ



「あは~!面白いわね~これ!」

「そして色が変わって浮いて来たら、ひっくり返しま~す」


 お母さんと会話をしながら細かく指導していると、次第に音が変わっていき、ショタのつぶらな瞳はトンカツの完成を見抜いた。


「最初は『ボコボコ』鳴ってたけど、それが『パチパチ』って音に変わって、上の方まで浮いたら完成です!油から出して下さーい!」

「はいは~い!」


 横向きだと油が抜けにくいので、大きなトレイの側面に、トンカツを立て掛けるように置いてもらった。


 最初のが生焼けだと全部台無しになるので、ザクザクザクと一口サイズに切ってもらい、ちゃんと火が通っているか確認。


「バッチリです!じゃあ、どんどん揚げて行きましょう!」

「成功したのね!?よ~し、じゃんじゃん行くわよ~~~!」



 トンカツが美味いのはわかってるから、試食はしないでおく。

 みんなと一緒に感動を味わいたい気持ちもあるからね。


 お母さんに油で火傷しないよう注意だけしてから、ゲームをヤメてこっちに来たタマねえと一緒に、みんなのお皿にキャベツを盛り付けていく。


 残念ながらゴマっぽいアイテムは無いので、自家製ソースだけで食べる感じになるけど、そこまで本格的にしなくとも十分美味いハズだから問題なし!



 そして夕食の時間までに、有り余るほどの『メメトンカツゼロ』が完成しました!




 ◇




 丁度良いタイミングでお姉ちゃん達が帰宅。

 予定通り、アイリスお姉ちゃんとナナお姉ちゃんもやって来た。


 当然ながらテーブルの上の珍しい料理を見て質問責めにされたけど、食べてからのお楽しみってことでスルー。


 全員着替えたりしてから食卓に着いた。



「せっかく良いお肉が手に入ったので、今日はお母さんに『メメトンカツ』を作ってもらいました!正確にはメメトンゼロの高級肉を使ってるから、『メメトンカツゼロ』です!」


 ワーーー パチパチパチパチ!


「この茶色がメメトンゼロなのか・・・」

「それにソースをかけて食べてみて下さい!キャベツにはマヨたっぷりで!」

「初めて見る料理だわ!クーヤくんも自信ありげだし期待できるわね!」

「メメトンゼロってだけで幸せだよ!お腹ペコペコだし!」


 とまあ、食べる前からすでに大騒ぎだったけど、冷める前にとっとと頂きましょうってことで実食。



「「いただきまーーーーーーーーーーす!!」」



 メメトンカツは全て一口サイズに切ってあったので、そのままソースのかかった肉を箸で摘まんで口に入れる。



「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」



 プリプリの肉を咀嚼しながら全員が無言になった。


 やべえぞこれ・・・。


 森で食べたステーキも美味かったけど、家の落ち着いた環境で食べる、違うベクトルの美味さが全身を駆け巡る。



「うんまああああああああああああああああああああああああ!!」

「うめーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

「何なのこれ!?すっっっっっっっっごくサクサクで美味しい!!」

「すごいねこれ!ハンバーグにかかってるソースと一緒のハズなのに、あの味とは何かが違うよね!?」

「このお肉とお野菜がすごく合うのよ~~~~~!」

「おいしーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

「クーヤ、これが最強料理になったかもしれない!!」

「メメトンゼロのお肉だから美味しいってのもあるかもだけど、この料理って普通のメメトン肉で作っても美味しいんじゃない?」

「そう思う!たぶん普通のお肉でも美味しいのに、私達はその更に上の美味しさを体験してるんだよ!」



 とまあ『メメトンカツゼロ』は、全員が大絶賛でした!


 ぺち子姉ちゃんもいれば良かったのに、まだ仕事が忙しいからパンダ工房に泊まり込み状態なんだよな~。帰って来たら食べさせてあげなきゃだね!

 

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