第182話 家族みんなでリリカ島へ(社畜を除く)

 レオナねえ達三人とタマねえが、ドラゴンの背中から縄梯子で降りて来た。


 少し前からタマねえもゴンドラの装着を手伝うようになったのだ。

 毎回レオナねえ達に任せていたら、いつまでも成長出来ないからって。


 それを言ったらクーヤちゃんもなんだけど、圧倒的に筋力が足りなくて邪魔なだけでした!うん、ボクは下で大人しくしています。



「よしみんな、ゴンドラに乗り込むぞ!」


「「オーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」


「やっぱりこれに乗るんだ・・・」

「本当に大丈夫なのかしら・・・」

「お母さんね~、全然意味がわかりません!」



 全員がゴンドラに乗り込んでから、ドラちゃんに重くないか聞いたんだけど、どうやらいつもと変わらんらしい。多少人数が増えたところで、巨大なドラゴンにとっては誤差の範囲なのだろう。


 そして、レオナねえの指示で全員壁に貼り付いてもらった。飛ぶ時のドラちゃんは姿勢が変わるので、フライト中は張り付いてる方向が足場になるのだ。


「リリカ、ラーニャンが空を飛ぶには、あの言葉を叫ぶ必要があるんだ!」

「あのことばってなあに?」


 隣にいたリリカちゃんに耳打ちすると、彼女はゲームの内容を完全に思い出したようで、『ぱあぁ~~~~~~~!』っと笑顔になった。


「よし、みんな準備はいいな?じゃあ始めるぞ!!」



「「「まいあがれ、そらたかく!このおおぞらは、おまえのもの!」」」




 ―――――その言葉を合図に、不死鳥ラーニャンは大空へと舞い上がった。




 ◇




「新メンバーの四人は前の席だ!速度を上げる時に少し危ないから、ちゃんと手摺りに掴まっていてくれ!」



 全員がソファーに座り、しっかり手摺りに掴まったのを確認してから、ドラちゃんに速度を上げるよう指示を出した。


 少しして、G(重力加速度)に慣れてくると、ようやくみんな空からの景色を眺める余裕が出てきた。



「うわ~~~~~~~~!私たち空を飛んでるよーーーーーーーーーー!!」

「凄いわ!これがドラ、違った!飛んでいるラーニャンが見ている景色なのね!」

「本当にすごいわ~~~。まさか空を飛ぶ日が来るなんて・・・」



 お母さん達三人は初フライトにすごく感動しているけど、リリカちゃんは目を大きくしたまま、カルチャーショックであわあわ言ってるだけの状態ですね。


 そして少し落ち着いた今のタイミングこそ、この日の為に練習を積み重ねてきた例の作戦を決行する時!



 精神を集中し、音量を抑えめに、静かに田中くんのリコーダーを吹き始める。



 ♪ピーーーーー ピープピーーピーープーー プピピププーー ピーープーーー



 そして竪琴のような楽器を手にしたタマねえが、ボクのリコーダーに合わせて美しい音色を被せていく。



 ♪テレレレレレレレ テレレレレレレン テレレレレレレレ テレレレレレレン



 タイミングを見計らい、レオナねえ・アイリスお姉ちゃん・ナナお姉ちゃんの三人も、別々の楽器で美しくも壮大な曲に加わり、盛り上がりは最高潮となった。


 そう。ボク達が演奏しているのは、不死鳥ラーニャンの曲のオーケストラバージョンなのだ!たった五人の演奏だから小規模オーケストラですけどね!



「わああああああ~~~~~~~~~~~~~~~~!!」



 突然後ろから聞こえてきた演奏にお母さん達も驚いていたけど、感動しているリリカちゃんの姿を見て、何も言わずに大人しく最後まで演奏を聞いてくれた。


 曲が終わると同時に、ゴンドラ内は拍手と歓声に包まれる。


 思わぬ演出に喜んでいるリリカちゃんや、涙を浮かべているクリスお姉ちゃんらの姿を見て、練習して良かったと心から思いました!



「あ、海だ!!」

「ホントだ!もう海まで来ちゃうなんて凄いわね!・・・ところで私達はどこへ向かっているのかしら?これって一泊二日の旅行なのよね?」

「目的地は『リリカ島』だぞ!とても美しい島で、しかも魔物が1体もいないという、本当に素晴らしい島なんだよ!」

「まあ!島にリリカちゃんの名前を付けてくれたのね~!」

「リリカのしまなの?」

「名前は『リリカ島』だけど、ココにいるみんなの島だぞ!」

「ほえ~~~~~~~~~~」


 我が家にあったコンポを呼び出し、今度はクラシック音楽を流した。


「優雅でいいわね~」

「でも音楽を聴くと、コーヒーが飲みたくなってくるのよねぇ」

「作り置きでよかったら飲めるよ!」


 そこそこ揺れるので、コーヒーを淹れるのが少し難しいのもあり、予めコーヒーや紅茶を作ってハムちゃんに持たせてあったのだ!


「ハムちゃん、左から、紅茶→果実水→紅茶→コーヒーです!」


『チュウ!』


 ハムちゃんが、ソファーの前にあるテーブルの窪みの中に、それぞれの飲み物が入ったコーヒーカップを置いていった。


 もうハムちゃんも慣れたもので、百発百中で窪みの中にコーヒーカップを出すことができるようになったのです!


「テーブルの窪みって、飲み物を置く場所だったのね!」

「そこに置かないと、カップが揺れて倒れちゃったりするのです。だから飲んでる最中もカップは窪みの中に置いてね!」

「わかったわ!」

「「はーーーーーーーーーーい!!」」



 ところでクーヤちゃんのテーブルには、レミお姉ちゃんにこの世界仕様で作ってもらった目覚まし時計が置いてあるんだけど、タマねえやレオナねえ達が定期的にチラチラ見ていることに気が付いた。



「何でみんなこっちの時計を見るの?備え付けの時計の方が見やすいと思うけど」


 ショタの指摘に、後部座席にいる全員がたじろいだ。


「いや~、最初はすげー違和感満載だったんだけどさ・・・、クーヤの時計の方が、一瞥しただけでパッと時間がわかるんだよ!」

「そうそう!」

「お姉ちゃんね~、この時計の良さがわかってきたかも~!」

「針が真上に来たらお昼ってのがすごくわかりやすい!」



 これって地味に、すごい検証結果じゃない?


 レミお姉ちゃん、上手くやれば時計で稼ぐことが出来るぞ!?

 こりゃあもう特許を取らせるしかないっしょ!


 なるほど・・・、彼女と繋がりを持たせるには時計だったんだ!

 一度ライガーさんに会わせる必要があるな・・・。



 ゴンドラの中ではそんなまったりとした会話をしていたが、ドラちゃんは依然として高速飛行を続けており、ゴンドラ内でのイベントとは関係なしに、何だかんだいつもとほぼ同時刻に『リリカ島』に到着した。

 

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