第133話 ドラゴンを本気で怒らせる

 召喚獣達の無謀な突撃で何とかドラゴンの北側に移動することが出来たボクとタマねえだったけど、早くも次の難題にぶつかっていた。



「なんかあのドラゴンさ~、スッキリした顔してない?」

「たぶん邪魔な奴らを全部やっつけたせい」



 部屋に入って来たやぶ蚊をようやく退治したって感じ?


 いや、それじゃあ困るんですよ!!

 ドラゴンがココにいると、スタンピードが続行されてしまうじゃないですか。


 北に誘導すれば魔物達も南に逃げる必要が無くなるんだ。

 ボクは何としてもドラゴンを怒らせなければならない。



「アイツをどうやって怒らせようか・・・」

「んー、しつこく攻撃するしかない」

「だよね~~~!でもダメージを与えられないばかりか、一発でやられてしまった特別攻撃隊を何度も呼び出すのは魔力の無駄か・・・」


 ここは魔力消費の少ない召喚獣を大量に呼び出すのが吉とみた。

 ドラゴンに傷を負わせることが出来るメルドアもちょっとだけ休憩だ。



「ハイエナ、狼、蜘蛛、それとゴブリン。全員召喚!」



 合わせると総勢50体以上の軍勢だ!

 よし、これで数だけは揃ったぞ。魔力消費も特攻隊の半分以下だ。



「狼と蜘蛛だけ突撃ーーーーー!他のみんなはドラゴンを挑発して!」

「タマは?」

「アイツの顔にパチンコ玉を投げまくってほしい。しつこく何度もだよ!ボクもカブトムシを1体ずつ飛ばして眼を狙うから、さすがにドラゴンも怒ると思う」


 そしてムカッときたドラゴンの瞳に映るのは、クネクネと挑発ダンスをしているゴブリン達の姿だ。相手は雑魚ってわかってるだろうから、尚更腹が立つハズ!



「カブトくん達、ドラゴンの眼に向かって1体ずつ飛んで行けーーー!」



 タマねえもパチンコ玉を投げ始めた。


 かなり距離があるから当たってもダメージにはならないだろうけど、鬱陶しく感じさせることが出来ればそれでいい。



『ウオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!』



 狼達の雄叫びを聞き、ドラゴンが此方に顔を向けた。


 ターーーーーーーン!


 カブトムシが当たった時にまたもや瞼を閉じたのが見えたけど、続くカブトムシが右眼と左眼を交互に狙い、タマねえのパチンコ玉が顔に雨アラレと降り注ぐ状況に、ドラゴンが苛立ちを見せているのがわかった。


 そして足下では狼と蜘蛛がチクチクと攻撃しており、全然痛くは無いだろうけどストレスを与え続けている。



 ―――その時ドラゴンが大きく口を開けた。



 ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!



「うわっ!火を吐いた!!」

「スゲーーーーーーーーーー!アレがドラゴンのブレス攻撃なのか!!」



 足下にいた狼と蜘蛛が炎で一掃されてしまった。

 でも残念!煩い虫は何度でも蘇るのだ。



「狼と蜘蛛、全員召喚!突撃ーーーーーーーーーーーー!!」


『ウオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!』



 吠える狼達を見て、ドラゴンがげんなりしたのがわかった。

 そしてその後ろで挑発しまくっているゴブリン達の存在に気付く。



 ドシン! ドシン! ドシン! ドシン! ドシン!



「来たッッッ!タマねえ、ドラゴンが歩いた分だけ下がるよ!」

「わかった!」

「ゴブリンとハイエナ達も挑発ダンスをしながらゆっくり後退だ!」

『ギャギャギャギャギャ!!』


 そして後退しながらも、カブトムシによる攻撃を続ける。



 ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!


 ドラゴンの炎で狼達が一掃され、追いつかれたゴブリン達も前足で叩き潰された。



「ハイエナ、狼、蜘蛛、それとゴブリン。全員召喚!」



 ショタの前方に、たった今死んだはずの魔物がずらっと並んだ。


 それを見たドラゴンが怒声を上げる。



『ギュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』


 ドシン! ドシン! ドシン! ドシン! ドシン!



「よし!ドラゴンが怒ったぞ!!」

「あんなことされたらタマでも怒る」

「ここからが本番だよ!これを繰り返しながら、どんどん北に進んで行くんだ!」

「なかなか大変」



 このパターンを何度も繰り返しながら、ボク達はどんどん北へと進んで行った。




 ◇




「思えば、どこまで北に進んでからドラゴンを撒けばいいんだろな~」

「また街に行っちゃったら大変だし、できるだけ遠くに?」

「そうなんだけどさ、寝ないでこれを続けるのって厳しくない?」

「厳しい。昨日も一昨日もあんまり寝てないし」


 そんな会話をしている時、ハッキリとドラゴンの視線を感じた。


「やばっ!ドラゴンがとうとうこっちに気が付いた!」

「えええええ!?全部クーヤの仕業だってわかったの?」

「たぶん。だって足下で踊りまくって馬鹿にしているゴブリンを無視してこっちを見てるんだよ?」

「狼とゴブリンに飽きたんだきっと」

「くそう!他の召喚獣と入れ替えたりするべきだったか!!」



 ―――――ドラゴンが羽を広げて宙に舞う。



「「飛んだーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」



 そうだったーーー!ドラゴンが飛ぶことをスッカリ忘れてた!!

 どうしたらいい!?



「とにかく全力で逃げるよ!!」

「うん!!」



 しかしいくら足の速いトナカイとはいえ、ドラゴンが飛ぶ速度の方が圧倒的に上だった。低空飛行ですぐ背後に迫ったドラゴンが大きく口を開ける。


 どうする!?


 絶体絶命のピンチに、ショタの小さな脳が回答を見つけ出す。



「ゴーレム12号召喚!!」



 ゴゲアッ ボシュッッッッ!!



「ゴーレム5号6号召喚!ドラゴンに抱きつけ!!」



『ギュアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』



 ドガーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!



 大口を開けたのが災いし、口の中・・・に頭がスッポリ入るよう召喚したゴーレムにより、吐かれるハズだった炎は封殺され、直後に出現したゴーレム2体に抱きつかれたドラゴンは、驚きのあまり悲鳴と共に地面に落下した。

 

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