第317話 玉座の間に連れて行かれる
カツッ カツッ カツッ カツッ
マグロのおっちゃんを先頭に、お城の豪華絢爛な廊下を歩いて行く。
しかも向かっているのは玉座の間ということで、一歩進むごとに衰弱していく。
場違い過ぎて、お姉ちゃん達も泣きそうな顔をしています。
手錠を嵌められている悪者二人はもっと泣きそうな顔をしてるけど。
「マグナロックだ」
「兵達から話は聞いています!お通り下さい」
ギィーーーーーーーーーーッ
2人の守衛に両開きの大きな扉が開かれ、ボク達は玉座の間へと入って行く。
吐きそう。
―――――玉座の間は、圧巻としか言い様がなかった。
もう視界に入るすべてが輝いていて、豪華絢爛の一言。
この部屋だけでどんだけ金使ってんだよとツッコミたくなりますね。
今から中央の絨毯の上を歩いて王様の近くまで行くと思うんだけど、その両側にはフルアーマー姿の兵士がずらっと並んでおり、少しでもおかしな行動をとったものなら、その場で取り押さえられるのでしょうな・・・。
そしてもちろん奥には大きな玉座があって、やたらと豪華な衣装を纏った王様が座っているのが確認できた。
隣に王妃様用と思われる玉座もあるんだけど、王妃様はいないようだ。
カツッ カツッ カツッ カツッ
場違い過ぎて、お姉ちゃん達と一緒にプルプル震えながら、マグロのおっちゃんの後ろについて行く。もうヤダ!ボク帰る。
スチャッ
マグロのおっちゃんが立ち止まり、その場に片膝をついた。
「緊急の報告があり、馳せ参じました!」
カツ カツ カツ カツ カツ
あ、メッチャ派手な紫色のドレスを着た女性が向こうから歩いてきた。
でもって隣の玉座に座った。やっぱりあの人が王妃様だったのか!
「その者達は?」
「協力者で御座います。牢に囚われていた私を救ってくれた恩人でもあります!」
「ほう。続けなさい」
なぜか王様じゃなくて王妃様と会話しているのですが・・・。
もしかして王妃様じゃなくて女王様だったり?
「レヴリオス公爵が裏切りました。全軍で王都に迫って来ております!」
ガタン!
「「何だと!?」」
おっちゃんの報告を聞いて、後ろの兵士達が騒ぎ出した。
「静まりなさい!」
「「ハッ!!」」
やっぱり女王様っぽくない?隣の王様風よりも威圧感が半端ないです!
「詳しく説明なさい」
「ハッ!」
マグロのおっちゃんは、レパーナの街でジグスレイドに捕えられて拷問を受けていたことから話し出し、ボク達の活躍によって悪党どもが全滅したこと、地下室でクーデターの証拠を掴んだことなどを報告し、最後に首都リムディアースに来る途中でレヴリオス公爵の数万の兵が進軍してるのをこの目で見たと伝えた。
「クーヤ、証拠の品を全て出してくれ」
「あい!」
ハムちゃんを召喚し、レヴリオス公爵がジグスレイドに送った密書などの証拠を全部床にぶち撒けた。
すぐに側近の人達がそれを回収し、王様と王妃様の所へ持って行った。
「これは・・・」
あ、王様風がしゃべった!
「レヴリオス公爵め、とうとう王家に牙を剥きましたか!許せません!!」
「王都を焼き払うだと!?信じられぬ。しかしこれはレヴリオスの刻印で間違いないか・・・」
「公爵を返り討ちにし、首を刎ねてくれましょう!」
「いや、それはやり過ぎだ!あれでも余の弟なのだ。もう少し穏便に・・・」
「貴方の弟君であろうとも関係ありませんわ!国家反逆罪は死刑です!」
「あ、はい」
王様よわっ!!でも自称が偉そうだし、やっぱり王様なのかな?
「テスマリア様!僭越ながら私からご提案がございます」
「申してみよ」
「レヴリオス公爵から王都を焼き払う命令を受けているジグスレイドですが、此処にいる協力者達が叩き潰すと申しております。あ奴らの処分はクー、ゴホン!この者達に任せ、移動で疲労している公爵軍に全軍で総攻撃をかけるのです!」
「気でも狂いましたか?たった数名で3000のジグスレイドを?下がりなさい!」
「狂ってなどおりません!レパーナにあるジグスレイドの屋敷を鮮やかに制圧した驚異的な力を、私はこの目でハッキリと見たのです!奴等を叩き潰せるという証拠をこの場で見せることも可能です!」
マグロのおっちゃん!!アンタ何てこと口走っちゃってんのさ!
王家の前で手の内を晒して、良いことなんて一つも無いよ!
ミミリア王国の王家じゃないから、家族に迷惑はかからないとは思うけどさ。
「ほう。ならばその力とやらを見せてみなさい」
「ただ、見せると必ず城内が大混乱に陥りますので、何が起きても剣を抜かないと兵士達に命じて頂きたいのですが・・・」
「大混乱に?・・・良いでしょう。此処にいる全員に命じます!今から何が起きようとも剣を抜くことを禁じます!」
「「ハッ!!」」
マグロのおっちゃんがボクの顔を見て一つ頷いた。
ウム。じゃないよ!!ボクが国家反逆罪で牢屋にぶち込まれたらどうすんのさ!
もうどうなっても知らないからね!?
しかも王妃様を納得させるほどの力を見せる必要があるのか・・・。
となると、インパクトのあるクマちゃんは絶対だな。
よし、アレでいくか!
「新選組・五番隊召喚!」
シュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュッ!
グリフォンでのフライト中に召喚獣リストをいじって作ってあった、クマちゃん隊長率いる『新選組・五番隊』のメンバーで、玉座の間が埋め尽くされた。
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―――――???視点―――――
「ふぅ、憂鬱だわ・・・」
毎日同じことの繰り返し。
そろそろ結婚して子を成さなねばと、焦る気持ちだけが大きくなっていく。
でも正直、これだ!って思う男性がいないのよね・・・。
王家にさえ生まれなければ、出会いなど無限にあったのでしょうけど。
国内ならばやはり伝統ある名家でなければならないし、他国に嫁ぐならば王家ということになるのでしょうね。
「もう!どこかに素敵な王子様はいないの!?」
顔が私好みで、優しくて、背が高くて、礼儀正しくて、統治する国が豊かならば、どんな国にでも行く覚悟はあるんだけどな~。
「でもあまり年上は嫌ね。若すぎるのも好みじゃないから、18歳から25歳の間くらいがいいかしら?礼儀正しい美少年なら17歳でもいいかな?」
「そんなだからお姉ちゃんは結婚できないんだよ。はむはむっ」
テーブルの対面に座っている10歳になったばかりの妹が、口にいっぱいお菓子を頬張りながら茶茶を入れてきた。
「お子様は気楽でいいわね~。甘いお菓子を食べているだけで幸せなんでしょ?」
「アンナだって考えてるもん!16歳から26歳までオッケーだから、お姉ちゃんよりも広いもんね!結婚なんてよゆーよゆー」
ムカッ!私より範囲を広げて対抗してくるなんて生意気な!
「どうせ貴女も苦しむことになるわよ。王家のお姫様と釣り合う男性なんてほとんどいないんだから」
「いるもん!もうすぐ格好良い王子様がお城に遊びに来るんだもん!」
「そんな都合のいい話なんて夢物語もいいところね。それにもし素敵な王子様が現れたとしても、アンナじゃなくて私と結婚することになるでしょうし」
「だめーーーーー!アンナと結婚するの!!」
「だって貴女まだ子供が産めるような歳じゃないでしょ。10年早いわよ」
ガタン!
「うわあああん!アンナと結婚するんだもん!お姉ちゃんのブスーーーーー!!」
たたたたたたたたたた バタン!
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ピキッ
そこは普通『お姉ちゃんのバカーーーーー!』じゃないの!?
ブスって叫びながら走り去るとは、我が妹ながらムカツクわね!!
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