第318話 ただの庶民ですから!
「うわあああああああッッッ!」
「ヒイッッ!」
「ま、魔物だあああああああああああああああ!!」
突如玉座の間に出現した魔物の大群に、ボク達以外の全員が慌てふためいた。
まあ驚くなって言われても絶対無理だよね。
チャキン ガシャッ
「剣を抜くなって言われただろ!!」
レオナねえの怒号に兵士達が命令を思い出したようで、剣を鞘に引っ込めた。
「こ、この魔物!もしかしてローグザライアでは・・・」
え?なんでメルお姉ちゃんが驚いてるの?
ああ!焼き肉パーティーの邪魔になるから召喚獣は消してあったんだっけ。
ちょうど見逃してたんだな~。
「ローグザライア?リナルナにいる魔物か!いや、ローグザライアは真っ黒だろ」
「パルラ山にいるローグザライアは白いって聞いてます!」
「なんだと!?そんな危険極まりない魔物を、こいつは『クマちゃん』と呼んでいたのか!!」
「ず、随分と可愛らしい名前を付けられているのですね・・・」
クマちゃんの可愛さがわからないとは残念な人達です。
「Aランク冒険者ですら討伐を諦めていたアレを倒したってことだよな?」
「しかも一人で倒したわけですよね?意味が分かりません!」
「俺はもう考えるのをやめたぞ。気にしたら負けだ」
ローグザライアくらい、ドラちゃんにかかればチョチョイのチョイなのです!
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
王様も王妃様も完全に固まっています。
「魔物がピクリとも動かん。そうか!これらはテイムされた魔物なのだ!」
「なんだと!?」
「驚いたな・・・。これほどまでの魔物を従える凄腕
「本当に大丈夫なのか?この魔物共が暴れ出したら抑えきれぬぞ?」
お?王様に近い位置に立ってる偉そうなおっさん連中がしゃべり出したぞ。
宰相とか文官とか宮廷魔術師とか、そんな感じの身分が高い重臣達なのかも。
「いや待て。この魔物共は突然目の前に現れたのだぞ?」
「・・・あ」
「まさか
「そんな馬鹿な!これほどの数の
「ではこの状況をどう説明する!」
「いや、しかし・・・」
「恐ろしいほどの魔力の持ち主なのは間違いあるまい」
「それほどの魔力を持つ者など、ハッ!?まさか・・・」
「王家の血筋の者ならばもしかすると・・・」
そこで謎解きするのヤメてもらえませんかね!?
それにクーヤちゃんはただの庶民ですから!勘違いしないでよね!!
「・・・・・・・・・・・・・・・」
なんか王妃様がボクを見てるんですけど!!
「そこの貴方、お名前は?」
「庶民代表のクーヤちゃんです!近所の奥様方から『あの子はこの街一番の庶民ね!』と噂されるほどの永世庶民です。おはようからおやすみまで庶民です」
(クーヤちゃんが全身全霊で庶民アピールしてるよ!)
(嫌な予感がしたんだろな)
(でも不敬じゃない?大丈夫?)
「・・・この魔物の大群を
「どうやらそうみたいですね」
「
な~んだ、本当に3000の悪者を滅ぼせるのか確認してるだけか。
それならちゃんと答えてあげなきゃダメですね。
「この数倍くらい?ジグスレイドをボコボコにできるのは間違いないです」
「わかりました。
「あい!」
召喚獣を全部消した。
「おお、消えた!」
「ふ~~~」
「しかし、あんな子供が術者だったとは・・・」
「連れの女性等も只者ではあるまい。見ろ!あの奇抜で斬新な服装を」
「この国の者ではないな」
「まさか、ロズモ帝国か!?」
「それはわからんが・・・」
いや、全部聞こえてるし!変に勘違いされても困るんですけど。
怖い王妃様の眉間に皺が寄ってるし!
「帝国出身なのですか?」
「全然違いますし!ミミリア王国の庶民ですから!!」
「ほう、ミミリア王国・・・、それならば問題ありませんわね」
しかしなんで王妃様が顎に手を当てて考えているのか?
これが王様の行動ってんならしっくりくるんだけど・・・。
なんかこの国、すごく変じゃない?
「ファリーメルテ、この子等をどこか休める場所へ。マグナロック、貴方は残って先程の作戦をもう一度詳しく説明なさい」
「「ハッ!」」
メルお姉ちゃんに連れられ、ようやく息苦しい空間から抜け出すことができた。
◇
「めっちゃ疲れたーーーーーーーーーー!!」
「あはは、お疲れ様でした」
「王様に謁見なんて、もう懲り懲りだぜ・・・」
「けどレオナ、剣を抜いた兵士達を一喝してたよね?」
「玉座の間にいる兵士達って、みんな身分の高い貴族様なんじゃ?」
レオナねえの顔が一瞬で青くなった。
「やべえ・・・、不敬罪で牢屋行きとかならんだろな!?」
「悪いのは剣を抜いた兵士の方なのですから大丈夫かと」
「クーヤちゃんが脱獄の名人らしいから大丈夫だよ」
「そんなことしてたら首都が火の海になるだけ」
マグロのおっちゃんだけ残されて作戦会議に直行したけど、あまり部外者に聞かれたくない話もするから玉座の間を追い出されたのかな?
息苦しくて死にそうだったから、むしろ追い出されて良かったんだけどさ。
「うわあああああああああああああああん!」
なんだ!?向こうから女の子が泣きながら走って来たぞ。
「アンナ様!どうなされましたか?」
「お姉ちゃんがいじわるなの!!」
「まあ。ロゼフィーナ様と仲違いしちゃったのですね」
「うわあああん!ぐすっ、ぐすっ」
女の子がなかなか泣き止まないので、『ポッポちゃん大名行列』のメンバーを召喚して、彼女の周りをクルクル回らせた。
『クルックー』
『チュイッ』
『チュイッ』
『チュイッ』
『チュイッ』
『チュイッ』
『チュイッ』
泣いてた女の子の顔がぱあ~っと笑顔になった。
「わあああ~~~~~!なにこれ可愛い!!」
「ついでにモルモットも召喚!」
女の子に両手を差し出してもらって、その上にモルモットを乗っけた。
「モコモコして可愛い!!」
「小っちゃいから優しく持ってね~」
「うん!」
なんかよくわからんけど、とりあえず笑顔になったんで良かった~!
綺麗なドレスを着てるし、もしかしてお姫様とかだったりする?
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