第319話 あひるの王子様

 ポッポちゃん大名行列の大活躍もあり、ようやく泣き止んだ綺麗なドレス姿の女の子と一緒に、美しい廊下を歩いて行く。


 お城で暮らしているお姫様なのか、たまたま遊びに来ていた貴族のお嬢様なのかはわからないけど、仲良くして悪いってことはないよね。



「こっちこっち!」



 ガチャッ



 そう言いながら、女の子がこれまた豪華なドアを開けて部屋の中に入って行ってしまったので、よくわからないままついて行った。



「お姉ちゃん、みてみてーーーーー!!」


「ぶッ!」



 広い部屋の中央に置かれた丸いテーブルに着いていた女性が、モルモットを掲げる女の子を見て、飲んでいたお茶か何かを噴き出した。


 でもたぶんモルモットじゃなく、女の子の後ろを追いかけて行った『ポッポちゃん大名行列』を見て驚いたんだと思う。



「な、なんなのよそれ!!」


「すっっっごく可愛いの!!」



 女の子がテーブルの上にモルモットを置いてから、驚いている女性の対面の椅子に座った。


 あの女性も綺麗なドレスを纏っているので、さっき仲違いしたとか言っていたお姉ちゃんなのかも?



「確かに可愛いけど、見たことのない動物ね・・・。それより後ろの鳥は何なの!?一体どこで拾ってきたのよ!」

「クーヤが出したんだよ!」

「クーヤ?」


 お姉さんと目が合った。


 ガタン!


「え?なにあのすごく可愛い子!!」

「だからクーヤだってば!」

「あの子がこの動物の飼い主なの?」

「うん!」



 黙って見ているのも変な感じなので、テーブルの近くまで歩いて行った。



「初めまして!クーヤちゃんです」

「動物よりもこっちの方が可愛いじゃない!あっ、私はロゼフィーナよ!」


 ひょいっ


「わぷッ!」


 なぜか初対面のお姉さんに抱きかかえられ、大きなおっぱいに埋もれた。

 このままじゃ窒息してしまうので、上を向いて気道を確保。


「ぷはあ!」

「この帽子の顔は雛鳥かしら?とてもよく似合っているわ!」


 っていうか、何で動物じゃなくてボクの方に来るのさ!?

 でもキレイな人だな~。タイプ的にはクリスお姉ちゃんに似てるかも。


「えーと、ロゼお姉ちゃんって呼ぶね!」

「はうっ!」


 そう言った瞬間、彼女の目が潤んで、はぁはぁと呼吸が荒くなった。


 違う、クリスお姉ちゃんじゃねえ!

 この雰囲気は、真正ショタコンのレミお姉ちゃんの方だ!


 そう気付いた瞬間、キスの雨が降ってきた。



「にょわ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!」




 しばらくの間ぺろぺろされ続けたけど、相手が高貴な身分の女性ってのもあり、誰も助けてくれなかった。


 そして、隙をみてメルお姉ちゃんに聞いてみたところ、やっぱりこの姉妹はハイドリムドのお姫様だということが判明。


 ・・・そんな高貴な御方と、ボクみたいな庶民が一緒にいて大丈夫なのかなあ?


 先にお姫様姉妹だと聞かされていたお姉ちゃんズはこっちに近寄ろうとはせず、壁の方にあるソファーに座って寛いでます。なんかズルい!



「もうすぐ8歳になるよ!」

「8歳・・・」


 ロゼお姉ちゃんが『ぐぬぬ』って顔になったけど、一瞬で立ち直った。


「私は8歳から25歳までの人と結婚するって決めていたの。こうなったらもうクーヤちゃんと結婚するしかないわね!」

「だめーーーーーーーーーー!クーヤはアンナと結婚するの!!」

「アンナは16歳から26歳までって言ってたわよね?」

「6歳から26歳までオッケーっていったの!!」


「「ガルルルルルルルルルルルルルルル!」」



 お姫様と結婚とか絶対嫌なんですけど・・・。



「いやいや!平民がお姫様と結婚なんてできるわけないじゃないですか!」



 それを聞いたロゼお姉ちゃんが、驚いた顔でボクの顔を見た。



「平民ですって!?こんな可愛らしい子が・・・、嘘でしょ!?」

「マグロのおっちゃんに無理矢理お城に連れて来られただけの庶民ですよ!」

「アンナは気にしないもんねーーーーー!」

「いえ、そうはいかないわ!平民との婚姻なんて、お父様とお母様が許してくれるわけないもの」

「やだやだやだやだーーーーーーーーーー!」

「私だってショックなのよ。せめて伯爵家のご子息とかなら・・・」



 ふ~、助かった。お姫様と結婚なんてマジで洒落にならんですし!

 こんな息苦しいところで暮らすなんて絶対無理です。



 ガチャッ



「此処だったのか!まさか姫様のいる部屋で休んでいたとは!」



 あ、マグロのおっちゃんだ。

 お偉いさん達との話し合いが終わったのかな?



 とててててててて



「作戦はどうなったの?」

「それを伝えに来たのだが・・・」


 マグロのおっちゃんがキョロキョロと室内を見渡した。


「姫様だけならまあいいか。なんか二人で言い争ってるみたいだし・・・。えーとだな、軍隊が一斉に動き出したら敵に気付かれてしまうので、明日は一日掛けてこっそりと東門から出て、街の外で隊列を組み、そのまま進軍することになった」


 なるほど~、この街に密偵が放たれているのは間違いないもんな。

 それでも怪しまれるとは思うけど、城から軍隊が出て行くよりは全然マシか。


「向こうと連携する必要があるので、クーヤ達は明後日動いてもらいたい。悪者二人から聞いた話だと、ジグスレイドのアジトは全部で五つあるそうだ。街の中で魔物の大群を走らせたとしても軍が邪魔することは無いから派手にやっていいぞ!」

「ジグスレイドのアジトって五つもあるの!?」

「その内の一つは本拠地だから、おそらくそこの難易度が一番高いだろう」

「なるほど・・・」


 ならば新選組を五つに分けて、各個撃破してくしかないか。


「じゃあジグスレイドの本拠地は、新選組局長であるボクと副長のレオナねえと総長のペカチョウで攻めよう!」

「タマは?」

「一番隊のタマねえは、七番隊のライオンと一緒に二つ目のアジトを落としに行ってもらえる?ああ、紙に書いて説明するね!」



[ジグスレイドの本拠地]

・局長クーヤ

・副長レオナねえ

・総長ペカチョウ


[二つ目のアジト]

・一番隊タマねえ

・七番隊ライオン


[三つ目のアジト]

・二番隊プリンお姉ちゃん

・五番隊クマちゃん


[四つ目のアジト]

・六番隊アイリスお姉ちゃん

・四番隊レグルス


[五つ目のアジト]

・八番隊ナナお姉ちゃん

・三番隊メルドア



「それぞれの隊長の下には、戦力を均等に分けた召喚獣達が付くからね~」



 ボクが書いた表を見たお姉ちゃん達の口端は上がっていた。



「こいつぁ面白くなってきやがったぜ!」

「すごくやる気出てきた!」

「腕が鳴りますね!!」

「じゃあ明日は、それぞれが攻めるアジトの偵察をしに行こうか?」

「この服装じゃ目立つから、偵察は一般的な服に着替えて行った方がいいね」

「偵察で怪しまれるわけにはいかねえからな。その案でいこう!」



 こうして第二次ジグスレイド討伐の布陣が決定した。

 軍隊同士の激突の方がメインだろうけど、こっちはこっちで大事な戦いなのだ!

 

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