第320話 キュピン!
第二次ジグスレイド討伐は明後日決行することになったので、ボク達はメルお姉ちゃんに連れられて大部屋に移動した。
ベッドが八つも置いてある部屋なんて初めての経験だけど、お城には貴族の団体様が泊まったりもするので、こういう部屋も用意されているのだそうだ。
もちろん『そんな部屋に庶民が泊まってもいいの?』と聞いたんだけど、他国の人が戦争の重要な役目を請け負っているのだから歓待されるのは当然とのこと。
まあボク達は王様の家来でも何でもないしね。
ただ、お姫様姉妹がショタと一緒に寝ると言い出し、奪い合いが勃発したのには本当にまいった。
平民を傘に難を逃れたけど、なぜそんなに気に入られてしまったのか・・・。
「あ、そうだ!寝る前にアイテム召喚しなきゃ!」
お風呂から上がって、ふかふかのベッドでキャッキャしてたお姉ちゃんズがこっちを向いた。
「城の客室であの強烈な光を出して大丈夫なのか?」
「カーテンをしてても窓から光ったのが見えそうだよね?」
「気にしすぎだよ~」
「兵士が来たら『何でもない』と追い返せばいいだけかと」
「クーヤは光る生き物。城に連れて来る方が悪い」
「「わーーーっはっはっはっはっはっはっはっは!」」
食べ物とかが出て部屋を汚してしまう恐れがあるので、絨毯の上に移動してブルーシートを敷き、ボクだけその上に座った。
「じゃあいくよ!アイテム召喚!」
ヴォン
お城の豪華絢爛な客間が強烈な光に包まれたが、光は一瞬で雲散した。
そしてボクの目の前には、予想外なアイテムが出現していた。
「なにィ!?これって・・・パトランプ??」
どう見ても赤い
パトカーに付いている長いタイプじゃなく、直径10cm高さ15cmくらいのヤツだ。
ただパトランプから長いコードが伸びていて、その先には手のひらサイズの小さな箱が付いている。そして小さな箱にはボタンが二つ。
何でこんなモノが・・・と思ったけど、とりあえずストックして文字化けした名前を『パトランプ』に変更し、すぐに召喚し直した。
「で、何なんだそりゃ?」
「パトランプって名前なんだけど、ピカピカと赤く光るだけのアイテムですね~」
「おお~~~~~!光らせてみて!」
タマねえが興味津々なので、小さな箱に付いているボタンを押してみた。
キュピン!
「「!?」」
なにィ!?思ってたのと違うぞ!!
光るのかと思ったら、なぜか『キュピン!』って鳴ったし!
もう一つの方のボタンを押してみた。
ペカッ!
「なるほど!本物のパトランプじゃなくて、コレはたぶんオモチャだ!」
ボタンをもう一度押すと光が消えたので、今度は同時押ししてみた。
ペカッ! キュピン!
「ぷぷっ!にゃはははははははははは!これは面白いかも!!」
トンッ タタタタタタタタッ
なぜかタマねえがベッドから飛び降り、自分の荷物を漁り出した。
そして馬マスクをかぶってから、ボクのいる方へ歩いてきた。
「クーヤ!頭の上にその赤いヤツ置いてみて!」
「おお!それは素晴らしいアイデアです!!」
馬少女の頭の上にパトランプを乗せ、リモコンを渡した。
ペカッ! キュピン!
「「あーーーっはっはっはっはっはっはっはっはっは!」」
キュピン!キュピン!キュピン!
「「ぶわーーーーーっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!」」
馬少女の頭の上に乗ったパトランプが赤く光り、クルクル回りながらキュピンキュピン鳴っていて、これ以上無いほどのアホっぷりに笑いが止まりません!
彼女が馬の頭を光らせようとしてたのは知ってたけど、むしろこっちの方が面白いじゃんね!タマねえも天下無双の一発ギャグを手に入れてしまったようです。
・・・とまあ、今日はお城に連れて来られたりお姫様に狙われたりと色々あったけど、最後は大爆笑して気分良く眠りについたのでした。
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一夜明け、朝から馬マスクの頭にパトランプを接着剤でくっ付ける作業を頑張ってから、貴族級の豪華な朝食をご馳走になり、マグロのおっちゃんに用意してもらった一般の服に着替えて城の外に出た。
ハイドリムドの首都・リムディアースを観光しながら、ジグスレイドのアジトを一つ一つ偵察していく。
「このスイーツ美味いな!」
「これも当たりですね!」
「もうお土産は甘い物だけでいいんじゃない?」
「鳥の丸焼きもいっぱい買ったし、あとはスイーツだね!」
「プルータムも売ってたから、あの街に戻らなくても大丈夫」
「タマねえよく覚えてたね~。色々あったから、もう名前とか完全に忘れてた」
ただのグルメツアーに見えますが、これでもしっかり偵察中なのです!
メルお姉ちゃんから街の地図を貰ってきたので、地形もしっかり把握してます。むしろ遊んでるようにしか見えない方が、怪しまれないというわけです。
たった一日で首都まで飛んで来たから、ボク達のことを知ってる人もいないし、目立たない服装ならまず疑われることもないでしょう。
街の中にはレヴリオス公爵のスパイなんかもいるので、周囲を細かくチェックはしているものの、ボク達もそれっぽい会話など一切しません。
ただ明日のことで頭がいっぱいだから、街を歩いててもさすがにそこまで楽しめてはいませんね。まあ本格的に遊ぶのは全部終わってからだな~。
豪華な夕食が待っているのでスイーツは程々にし、少し余裕をもって夕方くらいにお城へ帰って来た。
当然のように門兵と一悶着あったものの、グリフォンを召喚したら『あ、どうぞ』と通してくれたので城内へ入った。
そして今度はお城の中で迷子になったけど、兵士に聞いたら迷子センターみたいな場所に連れて行かれ、しばらく待ったらメルお姉ちゃんが迎えに来てくれたので、ようやく昨日泊まった部屋へと辿り着くことに成功した。
「城に帰ってからの方が疲れたぞ・・・」
「ちょっとお城の中広すぎだよ!」
「でも夕食には間に合ったんじゃない?」
お姉ちゃん達がへこたれていると、メルお姉ちゃんが口を開いた。
「ジグスレイドのアジトの場所は分かりましたか?」
「バッチリだ!地図の印が付いてる所に担当する隊長の名前も書いたし、あとは殲滅するだけだ!」
「でも無抵抗の女性と子供達は攻撃しないようにね~」
「もちろんだよ!」
「そういえば、救出した人達はどうすればいいの?」
「拉致被害者などがいましたら諜報部隊で保護しますので、殲滅後は我々に丸投げして下さい!」
「「了解!」」
そうだった!
ジグスレイド討伐のことしか考えてなかったけど、こっちにも拉致被害者がいるかもしれないんだよね。諜報部隊が街に残るのなら、後始末は全部任せちゃおう!
さあ、暴れるぞーーーーーーーーーー!!
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