第184話 家族にドラゴン騒動の全てを打ち明ける
「クーヤ、めちゃめちゃ大漁!」
「たいりょーーーーーーーーーーーーー!!」
「こんだけ獲れたら、もう十分かな?」
「今日食べる分には十分だけど、お土産に持って帰りたいからもう少し頑張る!」
「なるほど~。一泊二日の旅行ってことで来てるから、海のお土産があっても全然不思議じゃないのか。よし、リリカちゃん!アイリスお姉ちゃんやナナお姉ちゃんにもお土産を持たせてあげたいから、ボク達も頑張ろうか!」
「うん!!あっちにまだいっぱいあったよ!」
レオナねえと一緒に行動することが多いから、つい忘れそうになるけど、アイリスお姉ちゃんやナナお姉ちゃんにも家族はいるのだ。
二人とも遠慮しがちなとこあるから、こっちで勝手にお土産を用意して持たせてやるくらいで丁度いいのです。
パンダ工房へのお土産となると数時間で集められる量じゃ全然足りないし、それはまた次回って感じかな?あそこって、ちょっと人数多すぎなんだよね~。
◇
用意してあった箱の中に貝をドッサリ入れて浜辺に移動すると、お母さんやクリスお姉ちゃんもレオナねえ達の後ろにいて、海釣りを応援していた。
「貝獲って来たよ!」
「大収穫祭!」
「リリカも、いーーーーーーっぱいとったんだよーーーーー!!」
タマねえが貝の入った箱を砂浜に置くと、お母さん達が驚きで目を大きくした。
「まあ、こんなに沢山!」
「凄いわね~!でもちょっと多すぎないかしら?」
「えーとねえ、食べきれなかった分は、タマねえとアイリスお姉ちゃんとナナお姉ちゃんの家族のお土産にするの!」
その声が聞こえたみたいで、アイリスお姉ちゃんとナナお姉ちゃんが急いで駆け寄って来た。
「うわ~~~~~本当に大漁だ!三人共がんばったね!!」
「私達のお土産のことまで考えてくれてたなんて、お姉ちゃんは感激です!」
「おい!ナナの釣り竿、引いてる引いてる!!」
「えええええ!?うわ、ちょっと待ってえええええええええ!!」
「目を離した時に限って魚がかかったりするんだよね~~~!」
どうやら海釣り班も大漁だったみたいだ。
レオナねえ達が釣った魚を見ると、名前は知らないけど脂の乗った大きな魚ばかりで、これにて『海づくし』が最高のモノになることが約束された。
ティアナ姉ちゃんも、三人に負けず劣らずの奮闘だったらしいぞ!メチャメチャ楽しかったようで、今度来た時はもっと大物を釣ってみせると張り切っております。
そして、前回来た時にログハウスまで引いてあった川の水を使いながら魚を捌き、暗くなる前に夕食の用意を終わらせることが出来た。
◇
ジュワー パチパチパチパチ
鉄串に刺して焼いている魚の匂いと、炭火の上に置かれた焼き網に並べられた貝に醤油を垂らした時の爆発的な匂いにより、新メンバー達は昇天寸前だった。
しかしクーヤちゃん・リリカちゃん・タマねえの三人は、爆発的な匂いよりも、隣の鉄板の上で焼かれている謎のまん丸に釘付けだった。
―――――地球には存在しない何かがココにある。
どう見てもこれは魚ではない。じゃあ一体何なんなのか?
「・・・何これ?」
「わかんなーーーーーい!」
「タマも初めて見た」
そんな子供達の姿を見たレオナねえが側まで歩いて来て、コイツの正体を教えてくれた。
「そいつは『バルバル』って魚の卵だ。ちなみに釣ったのはアイリスだぞ」
「卵を釣り上げたの!?っていうかデカくない?」
「えーとだな、このまん丸の中に小さな卵がいっぱい入ってんだ。んで、生で食っても普通に美味いんだが、焼くとスゲー面白い食いモンになるんだよ!」
これって魚の卵だったのか!
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・え?説明の続きは?」
「後は食ってのお楽しみだな!」
「肝心なとこだけ教えてもらえなかったでござる!!」
「レオナねえはそんなに甘くない」
結局食ったらどうなるのか不明なまま、『バルバル』の卵が焼き上がった。
レオナねえがまん丸の上の方をちょん切った後、オタマを入れて中に入っている卵を掬い、それを子供達の小皿に入れていく。
見た目は『イクラ』ですね。焼いたことに違和感があるけど普通に美味そう。
「いっただっきまーーーーーーーーーす!」
どう見てもイクラだったので、スプーンで5粒ほど掬って口の中に入れた。
「流石はクーヤだな・・・、躊躇なく口に入れやがった」
「この前自分のことを慎重な男だとか言ってたけど、行動に慎重さの欠片も無い」
焼いたわりには全然熱くなかった。
じゃあ噛んでみるかと思った時にその現象が起こった。
ボフッ!
『もごッ!?』
パチン! ペチン! ボフッ! バチン!
『もごごごごごッ!?』
「キターーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
「なんかパチンパチン鳴ってない!?」
「このおとって、クーヤからなってるの?」
痛いってほどじゃなかったけど口の中で破裂したぞ!!
なんだこりゃーーーーーーーーーーーーーーー!?
「ちょっ!口の中で爆発したんですけど!!」
「わははははははは!おもしれーだろ!?」
「どういうこと??焼いてる時は破裂してなかったよね?」
「しらん!熱するのと唾液が関係してるのかもなー」
スゲーな!流石は異世界卵だ。唾液に反応して爆発したのかよ!
でも味はそのまんま『イクラ』だった。爆発さえしなけりゃ普通に美味い。
もっかい食ってみよう。
パチン! ペチン! ボフッ! バチン!
美味い。口の中が煩いけど、これ結構好きかも。
「なんかあの黄色、爆発を気にせず食ってるんだが・・・」
「タマも食べてみよう」
「リリカもーーーーー!!」
パチン! ペチン! ボフッ! バチン!
「もごごごごッ!?」
「むっくーーーーーーーーー!リリカこれきらい!!」
「うえ~~~!爆発した瞬間口の中に充満する卵臭・・・タマもこれ苦手」
「わはははははは!でも好きなヤツは好きなんだぜ?」
三人の視線がショタに向く。
パチン! ペチン! ボフッ! バチン!
「二人とも、食べないのならその小皿もらっていい?」
「クーヤ凄い!全部あげる」
「あげるーーーーー!!」
「100人中99人が嫌がるような食いモンを平気な顔して食うとは・・・。やっぱコイツ只者じゃねえな!」
とまあ、『海の幸』を前にいきなり変な方向に行ってしまったけど、その後はみんな普通に美味しい魚介類を堪能しました!
そして暗くなったのでログハウスに移動。
魔道具の光に照らされながらまったり寛いでいると、いつの間にかリリカちゃんが遊び疲れて眠っていた。
一早く気付いたお母さんがリリカちゃんをベッドに寝かせ、そこでようやく家族にドラゴンの話ができる状態となる。
◇
「ドラちゃんは悪くないの。怖いドラゴンから逃げて来た方向に、たまたまボク達の街があっただけなの」
「それで、逃げて来たドラゴンから逃げて来た魔物達が、一気に街に雪崩れ込んで来たというわけなのね・・・」
「うん。でもボク達にとっては命に関わる大事件だから、また北に戻ってもらおうと思って、タマねえと一緒にドラゴンを誘導しに行ったんだ」
そして、障害物に阻まれ逃げ切れなくなって、結局ドラゴンを倒して帰って来た所まで全部話した。
その結果、話を聞いて涙腺が崩壊したお母さん達三人に、ボクとタマねえは抱きしめられた。
「うわーーーーーーーーーーーーーーーん!二人とも本当に頑張ったんだね!」
「凄すぎて言葉が出ないわ・・・。私達は小さな二人の英雄に守られていたのね」
「クーヤちゃん、タマちゃん、街を守ってくれてありがとう!!」
そんなボク達の姿を見て、一緒につられ泣きしてしまったレオナねえ達だったが、話の終わりに、ドラゴンのことを隠さなきゃいけない理由を説明した。
「理解したわ。というか、よくそこまで先を読んだわね!確かにドラゴンのことは隠すべきだと思う」
「なるほど・・・。大き過ぎる力は災いの元かあ~」
「小さな英雄さんのことは誰にも話せないけど、二人は家族みんなの誇りです!!」
・・・とまあ、そんな感じで最後はしんみりしてしまったけど、愛する家族に大きな隠し事を打ち明けることが出来て、ようやく胸のつかえが取れた気がした。
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