第108話 にゃーにゃー攻撃
お姉ちゃん達が乗り気になったのでベイダーさんにそう伝えると、時間は大丈夫ということで早速二人の面接が始まった。
「接客の様子はクーヤがしっかり見たのだろう?」
「うん!そこは飲食店だったけど、売るのが馬車でも何とかなると思う」
「そうだな。馬車の良い所をしっかり把握してもらって、お客さんの質問に答えることが出来れるようになればそれでいい」
ベイダーさんとラン姉ちゃんが細かい話をし始めたので暇になった。
ぺち子姉ちゃんはラン姉ちゃんの話が終わり次第面接が始まるので、少し緊張している様子。
暇潰しに事務所をうろついてたんだけど、真剣な表情のラン姉ちゃんを見ていたらイタズラがしたくなったので、ふらふらとベイダーさんの横まで歩いて行った。
そして、後ろを向いて鼻メガネを装着してからクルっと振り向いた。
「ブホッ!!くクっ、あーーーっはっはっはっはっは!!」
「何だ!?」
突然笑い出したラン姉ちゃんに面食らったベイダーさんだったが、いつの間にか隣にいたクーヤちゃんに気が付いた。
鼻メガネでベイダーさんを見上げる。
「ぶわーーーーっはっはっはっはっはっは!!」
「にゃははははははははははははは!!」
面接という少し緊張感のある室内が、ショタのせいで一瞬にして崩壊した。
「おいクーヤ!お前が犯人だったのか!何事かと思ったぞ!!」
「ちょっと!!本当にやめてよね!大事な面接なのに」
「アホししょーにゃーーーーーーーーーーー!!」
流石は鼻メガネだ!一発ギャグの破壊力は見事としか言い様が無い。
本当に一発目しか通用しないのが残念だけど。
あ、ぺち子姉ちゃんには二発目でも通用したな。元々笑い上戸だからかな?
そしてラン姉ちゃんの面接が終わり、続いてぺち子姉ちゃんの面接が始まったんだけど、意外と簡単に採用が決まった。
「連れて来てこう言うのもなんだけど、本当に大丈夫なの?さっき話した通り、理不尽を強いる先輩とかムカツク客とかに絡まれるとボコボコにする習性がある、ちょっとした問題児だよ?」
知り合いを悪く言うのは嫌なんだけど、ちゃんと事実を教えておかないとベイダー工房に迷惑かけちゃうからね・・・。
「もちろん不安はあるし何か酷いことをやらかしたら即クビにするぞ?だが悪い奴ではない。要は使い方次第というわけだ!」
「ん-ーー、届け物とかもダメだよ?途中で寝たりするから」
「なにッ?使えんな!!いや、それでも適材適所というものがある。デカい商売を始めると、そのうち嫌がらせをして来る奴等が現れるだろう。それらが力技で来た時に此方にも対抗手段が無いと、やられっぱなしになってしまうのだ」
なるほど!すなわちお抱えの用心棒ってわけね。
ぺち子姉ちゃんだけじゃ不安だけど、ウチにはレオナねえ達もいるわけだし、いざとなれば悪そうなお兄さんにでも声を掛けるか。
持つべきものは必要悪だね!
「にゃっ!悪者を叩き潰すのは得意にゃ!!」
「ウム。だが今はそういう敵もおらぬから普通に働いてもらうぞ?有事の際に警備員へと移行してもらう感じになる」
「わかったにゃ!」
今にして思えば、ぺち子姉ちゃんって意外と万能なのかもしれない。
様々な職種を経験してるから大体何でも出来るし、勤務態度も真面目だ。
毎回大暴れしてクビになるってだけで・・・。
◇
面接も無事終わって、お姉ちゃん達と一緒に外に出た。
「仕事は明後日からかー。明日一日暇になったわね」
「それにゃら
自分ちみたいに言ってるけど居候ですからね?人のこと言えんけど。
「ペチコの家ってどの辺にあるのさ?」
「西区にゃ。でもししょーの家族がいっぱいいるにゃ」
「えっと、一体どういう繋がりなのよ??」
「弟子が師匠の家でお世話ににゃるのは普通にゃ。でも満員だから寝るのはタマししょーの家にゃ」
「まったく意味が分からないんですけど!!突然新しい師匠が出て来たし!」
ぺち子姉ちゃんって説明が下手ですね。
新情報がガンガン出て来るから、相手がまったく理解出来ないでしょうに。
「でもししょーの召喚が始まるのは夜だから一泊した方がいいにゃね。タマししょーにお願いするにゃ!」
「えええええ!?知らない家に泊まるとか絶対嫌なんですけど!」
「ししょーが関わった時点で、成功は約束されたようにゃもんって言ったにゃか」
「えーと・・・、馬車事業が成功するかどうかって話よね?」
「それにゃ!職場の未来がどうにゃるか、気ににゃらにゃいにゃ?」
にゃらにゃら言いまくってるけど、何とか意味はわかるな。
「これから働く職場なんだから、そりゃあたしだって気になるけど・・・。でもその家に行けばわかるってのが意味わかんないのよ!」
「ここでにゃーにゃー喚いてたってしゃーにゃいにゃ!とにかく行くにゃよ!!」
「にゃーにゃー言ってるのはペチコの方だし!あ~もう、わかったわよ。行けばいいんでしょ!」
ぺち子姉ちゃんによる『にゃーにゃー攻撃』で、難攻不落のラン城もとうとう陥落か。話の通じない相手と言い争うのが面倒臭くなったんだろうけど。
「一泊するのならば、一度家に寄ってお風呂に入ってから行きたいんだけど」
「向こうについたら、ししょーに洗ってもらえばいいにゃ!」
「ハッ!?それってもしや、指使いが上手くて毎日天国とか言ってたヤツ!?」
「そうにゃ!」
ラン姉ちゃんが頬を赤く染め、何かを期待した目でショタを見つめた。
「いや、ウチはそういうお店じゃないんで!!」
またあの飲食店で変態紳士の噂が流れたらどうすんのさ!このバカ猫が!!
とにかく彼女が一泊することに決まったので、ラン姉ちゃんの家に着替えを取りに寄ってから、我が家へと向かって歩いて行った。
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