第109話 ラン姉ちゃん、驚愕する

 

「何なのよこの家は!?意味不明なペチコですら意味不明とか言ってたけど、本当に意味不明じゃない!!」


 意味不明って言葉が多すぎ問題。


「だから言ったにゃか。ししょーは理解不能にゃんにゃ」

「『ししょーは』って言ってるけど、意味不明なのはこの家でしょ?」

「ここにある見たことにゃい道具は、大体全部ししょーが出したんにゃ」

「本当に!?」


 ラン姉ちゃんがこっちを見たんで、一応頷いておく。



「何よりも一番意味不明なのはアレよ!!」



 ラン姉ちゃんがビシッと指を差したのは、当然アレです。


『ブモ?』


「パンダにゃね」

「アレはペットなの?あまりにも大き過ぎない?」


 ラン姉ちゃんの手を取って、パンダちゃんの前まで移動した。


「もっふもふでかわいいよ!触ってみなよ」

「いや、あの、噛まない?」

「ウチのパンダちゃんは温厚だから絶対噛まないよ」


 初回サービスなので、ラン姉ちゃんをパンダのお腹にポイッと放り投げた。



 もふっ


 もふもふもふもふもふもふ



 ―――――10分経過―――――



「全然動かなくなったね」

「完全に堕ちたにゃ」


 近くに寄って見てみると、ラン姉ちゃんの顔は『にへら』っと蕩けていた。

 ツンデレの女の子がデレた瞬間である。


 いや、デレたというより、どちらかと言えばアヘった感じですけど。


「クーヤ、いやクーヤ師匠。これちょーだい!」

「ウチのペットだからあげないよ!ってかなんで師匠呼びになったのさ!?」

「じゃあもうこの家に住むわ。この子と離れて暮らすなんて無理だもの」

「なんですでに母親みたいな気持ちになってるのさ!?」


 パンダちゃんはこうも一瞬で人を狂わせてしまうのか・・・。


「あ、そういえば近いうちにライガーさんもパンダを手に入れる予定だから、そうなればベイダー工房にパンダちゃんが住むようになるかも?」

「本当!?あたしの職場にこのパンダちゃんが来るの?」


 ラン姉ちゃんがショタの両肩に手を置き、前後に揺すりまくる。


「にょあああ~~~~~!えーとね、目の前のこのパンダちゃんじゃないんだけど、同じパンダって名前の動物だから見た目はほとんど一緒だよ!

「ああ、意味が分かったわ!パンダっていう種類の動物なのね!?」

「そうそう!」

「職場に可愛らしいパンダがいるなんて最高じゃない!!でもこんな動物なんて初めて見たんだけど・・・。ペチコはパンダなんて知ってた?」

「知らにゃいにゃ。この家でしか見たことにゃいにゃ」

「やっぱり?外国の動物なのかしら・・・?」


 残念ながら、パンダちゃんの情報はまだ教えることができないのです。

 少なくとも、これがポレフィータの中の人だということを世間に知られるまでは。



「ただいま~!」

「クーヤ!タマねえは?」


 お?お母さんとリリカちゃんが買い物から帰って来た。


「二人ともおかえりー!タマねえはまだ来てないよ」

「あ、こんにちはー!ペチコの同僚のランです」


「あら?お客さんが来てたのね~。こんにちは~!」

「こんにちはーーー!!」


『ただいまー!』


 おおおおおお!?タマねえの声だ!なんかみんな一斉に帰って来たな。


 ガチャッ


「みんないた!クエクエⅡができる」


 タマねえはクエクエⅡを楽しみにしてたみたいね。

 でも今日はお客さんが来てるんで、おもてなしをしたい気持ちが・・・。


「あ~、それなんだけどさ!ラン姉ちゃんが遊びに来てるから、初心者おもてなしプランAで行きたいの」


「その赤い髪の人?」


「こんにちは~!」


「こんにちは!じゃあおもてなしプランエーにする。リリカもそれでいい?」

「うん!マリモだよね?」

「そうそう」


「?」


 子供達の意味不明な会話に、頭に『?』を浮かべていたラン姉ちゃんだったが、子供達が全員所定の位置に着いてファミファミを起動すると、『?』の数が10個くらいに増えた。


「何なのよこれ!?」

「ゲームだよ!ボクはちょっとおやつを作って来るから、みんなと遊んでてね!」


 これでラン姉ちゃんもゲーマーの仲間入りだな。


 タマねえだけじゃなくリリカちゃんも、ゲーマーを量産する為に『初心者おもてなしプランA』の手加減プレイをマスターしているのだ。


 しかしゲームセンスが皆無だった場合はプランBに移行し、タマねえがこれ以上無いくらい丁寧に教えながら、リリカちゃんは場を盛り上げる役に徹する。


 ぺち子姉ちゃんも隣にいるので、盛り上げ役として頑張ってもらおう!



 その間に、お母さんに手伝ってもらいながら、ショタは全員分のパフェを作る。



 リリカちゃんは大好物のいちごパフェ。

 タマねえは当然チョコレートパフェだ。

 ぺち子姉ちゃんはどうすっかな?フルーツパフェにしようか。


 問題はラン姉ちゃんなんだけど、あの髪の色からいっても『いちごパフェ』が大好きに決まってる!(独断と偏見)


 そして自分はバナナパフェでお母さんはフルーツパフェに決定。



 お客さんがいるので普段よりも気合を入れて作り、全員のパフェが完成した。



「はいは~い、パフェが出来たわよ~!」

「ぺち子姉ちゃんはフルーツパフェで良かった?バナナパフェでもいいよ」

「おおおーーーーー!パフェが来たにゃ!!ウチはフルーツパフェにするにゃ!」

「やったーーーーーー!いちごパフェだーーーーーーーー!!」

「チョコレートパフェもあった!」

「え?一体何!?」


 ゲームは一旦停止してもらい、みんな一緒にパフェを食べることになった。

 テーブルに移動し、ラン姉ちゃんの前にいちごパフェを置いた。


「うわ~~~~~~~~~~!めちゃめちゃ美味しそうなんだけど!!」

「コレって、今のところウチでしか食べることができないんだよ!」

「パフェこそ最強スイーツにゃ!」


「じゃあ食べようか!」


「「いただきまーーーーーーす!!」」



 パフェを口にしたラン姉ちゃんの目がキラキラと輝いた。



「すごい!本当に美味しいわ!!」



「あ、ラン姉ちゃん!上からどんどん食べていくんじゃなくて、そのまま真っ直ぐ下に進んでみて!」

「真っ直ぐ下に??」


 そしてバニラアイスの部分を口にしたラン姉ちゃんから驚きの声が上がった。


「これはアイスクリームだったのね!!しかもあり得ないほど美味しいわ!!」

「にゃははははははは!パフェは最強にゃんにゃ!!」



 ラン姉ちゃんは心の底から感動しているようで、いちごパフェを食べ終えるまでずっと笑顔のままだった。

 

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