第236話 モコねえがウチに泊りに来た
満を持して、とうとうヤツが動きました。
・・・そう。
ティアナ姉ちゃんが強化合宿をするとか言い始めて、モコねえがウチに泊まりに来ることになったのだ!
何を強化するのかはさっぱり分からんけど、連休を有効利用してティアナ姉ちゃんの部屋に2泊する予定らしい。
まあ腐女子の強化合宿なんて、BL漫画を描いたり語ったりするだけだとは思うんだけどさ、モコねえがウチに来るとアイテム召喚が怖いんだよな~。
というわけで、張り切って我が家にやって来たモコねえは、朝からティアナ姉ちゃんの部屋に閉じ籠り、ずっと何かの作業をしていたようだ。
そういった理由から、モコねえが家に来た割には比較的平和に過ごせたんだけど、夕食が終わった直後から雲行きが怪しくなってまいりました。
せっかく泊まりに来たのだからと、ティアナ姉ちゃんとモコねえが最初にお風呂を使うことになり、ついでにショタも連れて行かれました。
「だから、ボクには一番最後にプリンお姉ちゃんの湯治に付き添う使命があるのですよ!」
「まあまあまあまあ、たまには2回お風呂に入るのも乙じゃないですか~」
「湯治は2時間かかるから、クーヤちゃんがふやけてしまうのです!」
「たまにはふやけるのも乙じゃないですか~」
「絶対テキトーに言ってますよね!?」
とまあ文句を言いながらも、腐女子二人の身体を洗ってあげた。
ただ生意気にも、モコねえがBカップくらいありました。
チンチクリンが全員つるぺただと思ったら大間違いってことですね!
そしてモコティー先生の接待が終わった後、少し休憩してからまたプリンお姉ちゃんとお風呂に入り、ホッカホカ状態でアイテム召喚の時を迎えた。
バッ!
振り返って、モコねえに一言だけ宣言しておく。
「今日はBL漫画が出ない予感がします!例えどんな結果になっても、ガッカリしないでください!」
「エーーーーーーーーーー!メチャメチャ期待してるのですよ!クーヤ様なら絶対呼び出せるハズ。わたしは信じてますから!!」
「いや~、いくらクーヤくんでも狙って呼び出すのは難しいんじゃないかな?」
「絶対BL漫画は出ないのです!今からその証拠を見せましょう!」
「ぐぬぬぬぬぬぬぬ!!」
もうBL漫画の翻訳は嫌なのです!今日こそチンチクリンに勝ってみせる!
「たまには電化製品とかでいいのよ?いっけーーーーー!アイテム召喚!!」
ヴォン
リビングが強烈な光に包まれたけど、もうみんな慣れたらしく、誰も悲鳴をあげなかった。
そして光が雲散し、目の前に出現したモノを見て普通に驚いた。
「これってモニター?え?もしかしてノートパソコン!?」
モニターの大きさは17インチくらいかな?でもよく見たらキーボードの場所がのっぺりとしていて、少し思ったのと違っていた。色は黒だ。
あっ!もしかしてコレって、『ポータブルDVDプレイヤー』じゃない?
買ったことも使ったこともないから確信は持てないけど、通販サイトでこんなのを見たような気がする。マジで電化製品が出ちゃったよ!
ただ開いた状態で出て来たので、おそらく新品ではないと思う。でも見た感じ綺麗だから、中古品といってもまだ買ってからそれほど経ってないんじゃないかな?
えーと・・・、どうせこのままじゃ動かないからストックしようか。
このままストックしても問題はなさそうかな?
「ストック!」
召喚獣リストの文字化けを、『ポータブルDVDプレイヤー』に書き変える。
「ポータブルDVDプレイヤー召喚!」
無事召喚獣となった『ポータブルDVDプレイヤー』が目の前に出現した。
そして中央の四角い部分がDVDを入れる部分だろうと思い、イジェクトボタンらしいヤツを押したら蓋が開いて、案の定、中にはDVDが1枚入っていた。
中古ならワンチャンあると思ったんだよね!
―――――しかし、そのDVD表面のレーベル印刷を見て固まった。
そこには、美男子がもう一人の美男子の肩を抱いている絵が描かれていて、更に女性っぽい字で『抱きしめて!僕の王子様』と大きく書かれていたからだ。
「うっひょーーーーーーーーーーーーーーー!ティアナ!神の絵がココに!!」
うおっ!いきなり隣にモコねえが出現しおった!
「神の絵!?」
そう言った直後、反対側にティアナ姉ちゃんが瞬間移動して来た。
「わああああああああああああああああああ!!何これ!?格好良すぎる!!」
なんてこった・・・。
よりにもよって、こんなとんでもないブツを腐れコンビに見られてしまった。
・・・ハッ!?
もしかして、またモコねえがこの腐った一品を呼び寄せたというのか!?
BLアニメDVDとか、BL漫画よりも更にパワーアップしとるやんけ!!
それはともかく、ポータブルDVDプレーヤーの持ち主の腐女子さんごめんよ!
お宝が消えてしまうとか、本当に可哀相なことをしてしまった・・・。
「クーヤ様!この神の一品について詳しく!」
「クーヤくん!コレって、とんでもない大当たりなんじゃない!?」
大ハズレですよ!!しかし興奮してる彼女らにそんなことは言えない。
「えーとですねえ・・・、ボクの国には『アニメ』というのがありまして、漫画のキャラクターが喋ったり動いたりするのです」
「「な、なんだってーーーーーーーーーーーーーーー!?」」
「しかもおそらくこのアニメは普通のアニメではなく、イケメン男子達の愛を描いた作品ですね・・・。モコねえの腐ったオーラがこんなモノを呼び寄せおった!」
「「イケメン男子達の愛キマシターーーーーーーーーーーーーーー!!」」
腐ったオーラとか言ってんのに、完膚なきまでガン無視されました。
もうそれ以上にBLアニメDVDに夢中なのでしょう・・・。
「クーヤ様!作品タイトル名は!?」
「くっ、何という真っ直ぐな瞳なんだ!!『抱きしめて!僕の王子様』って書いてありますね・・・」
「「『抱きしめて!僕の王子様』キターーーーーーーーーーーーーーー!!」」
他のお姉ちゃん達も腐女子コンビの食い付きにはついていけないらしく、ただただ困惑している。
「で?で?で?」
「クーヤくん!そのアニメってのは、どうやったら見れるの!?」
「・・・どうしても見たいですか?」
「「うん!!」」
なんてキラキラした瞳なんだ・・・。クッ、仕方あるまい。
ココまで来たらもう、BLアニメを再生しなければ収まりがつかないだろう。
ポータブルDVDプレーヤーは、ボクも初めて使うのでよく分からんのだけど、とりあえずDVDの蓋を閉めてから起動ボタンらしいヤツを押してみた。
「あ、動いた。上に読み込み中って出てますね」
「なんか映ったですよ!?」
「あっちの大きなテレビと似てるね?」
すると特別な操作などすることなく、自動的にDVDが再生され始めた。
BLアニメなんてのは見たことがないから、どんな始まり方をするのかちょっとだけワクワクしますね!
とか思っていたら、いきなりクライマックスっぽいシーンから始まり、超絶イケメンが真剣な表情で主人公らしき美少年に顔を近づけていた。
『泣くな。必ず俺がお前を守ってやる』
「ゴフッ!」
「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」
クーヤちゃんが甚大なダメージを受けて吐血している間にも美男子達の会話は進んでおり、キスする寸前で画面がパッと変わってオープニング曲が始まった。
カッコイイ曲が始まり、主人公とその王子様、そして何人もの妖艶な男性キャラの絵が次々と切り替わっていき、殴り合ってるシーンもあって意外とバイオレンスなアニメなのかなって思ったけど、想像してた以上にみんな距離感が近くて、やはりBL全開なオープニングだった。女性なんか一人も出てこねえし!
「「おおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ~~~~~~~~!」」
「神はココにいた・・・!もうすでに涙が止まりません!!」
「うわあああああああ!格好良すぎるよ!!何これ?凄すぎる!!」
BLアニメとはいえ、確かにボクから見ても完璧なオープニングだったので、腐女子コンビだけじゃなく、他のギャラリー達からも歓声が上がった。
「「でも何しゃべってるのか全然わからない!!」」
うん、やっぱ問題はそこですよね・・・。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます