第69話 鍛冶屋へGO
翌日、俺とレオナねえはライガーさんの馬車の中で揺られていた。
向かっているのは、ライガーさんが懇意にしている鍛冶屋だ。
「この馬車は座るところを柔らかくして乗り心地を良くしてるけど、サスペンションを取り付けたら、そもそも馬車が揺れないの」
「地味にスゲーな!そんなの作ったら貴族連中がみんな欲しがるんじゃねえか?たぶん飛ぶように売れるぞ!」
「でも馬車に取り付けるのが大変かも?」
「あーーー、確かにな!だったら人を雇ってそれも商売にしちまえばいいんだよ。いや待てよ?いっそのこと高級馬車を作って売っちまえばいいのか!まあ何にせよ、その『サスペンション』ってのを作ってからの話だな~」
なるほど・・・。
取り付ける業者がいなきゃ、サスペンション単体じゃ売れないよな。
職人を育てるところから始めなきゃならないのね。
しかしサスペンションを売るんじゃなくて高級馬車を作って売るってのは、めっちゃ良いアイデアなんじゃないの!?
なんか、思った以上にデカいプロジェクトな気がする・・・。
サスペンションさえ完成すれば、成功が約束されてるようなもんじゃん。
ライガーさんが喜ぶと思ってサスペンションの話をしたんだけど、ちょっと思ったのと違う方向に進んでますね・・・。
馬車が止まった。
鍛冶屋に到着したのかな?
ガチャッ
「着いたぞー。さあ降りてくれ!」
レオナねえと一緒に馬車を降りると、目の前に大きなレンガの建物があった。
中から何かを叩く音が聞こえてくるので、ここが鍛冶屋で間違いなさそう。
ライガーさんと三人で鍛冶屋の中に入って行く。
「おーーーーーーーい!!ベイダーのおっちゃーん!客だぞーーーーー!!」
いや、ちょっと待てや。
またプロレスラーみたいな名前が聞こえたんですけど!
なるほど、そう来ましたか・・・。
分かりやすいから、そういうの嫌いじゃないよ?
少し待つと、髭もじゃのマッチョが登場した。
身長はライガーさんよりかなり低いが、喧嘩は間違いなく強いと思う。
年齢は50歳くらいかな?ちなみにライガーさんは35歳くらいだ。
「なんだ、やっぱりライガーか。こちらの二人は?」
「ああ、前に作ってもらった道具の元所有者だ」
「筋肉を鍛えるアレか?いや、どっちも筋肉を鍛えてるようには見えんぞ。こっちのちんまいのなんか5歳くらいだろ。隣の嬢ちゃんの付き添いか?」
「おはようございまーーす!えーと、ベイダーさん!」
「ああ、おはよう!なぜ名前を・・・、ああコイツが叫んでたか」
「その子供が元所有者のクーヤだ」
「・・・はあ!?こっちの嬢ちゃんじゃないのか?」
「アタシじゃなくてクーヤの持ち物だぜ?初めまして!クーヤの姉のレオナだ」
「ああ、よろしくな!」
意外と物腰が柔らかくて良い人っぽいね!見た目は怖いのに。
「それでだ、今日はまた違う道具を作ってもらいに来たんだが、実物を知ってるのはその子だけだから、その子の指示通りに作ってもらいたいんだよ」
「はあ!?」
「もし成功すりゃ稼げるぞ?」
「・・・・・・詳しく聞かせてもらおうか」
稼げると聞いて目を光らせた所は流石商売人といった所か。鍛冶屋だけどね。
工房の入り口じゃ落ち着かないので、詳しい説明をする為に場所を変えた。
◇
「・・・・・・これは思った以上に、規模のデカい話だぞ」
「成功すればの話だからな?すべておっちゃんの腕にかかっている」
「う、うむ。しかし設計図を見た限り、おそらく上手く行くだろう。このサスペンションが衝撃を吸収するってのは、構造を知れば大体理解できる。しかし量産化となると・・・」
「いや、その先の話はまず試作品を作ってからだ」
「あ、ああ、そうだな!」
おっちゃん二人が設計図を広げて難しい話をしているのを横目に、俺はレオナねえと一緒に絵を描いていた。
「あーっはっはっはっはっは!似てるけど、なんかアホっぽい顔だぞ!」
「こんな感じだったと思うんだけどな~」
ちなみに描いてるのはパンダちゃんの顔だ。
商品を作った時にロゴを付けて売ることで、それが一つのブランドとなり、信頼へと繋がるわけですよ。
なので、特許を出願する時にロゴも商標登録してもらうつもりで奮闘中。
それでレオナねえとどんなマークにするか考えてたんだけど、あひるポンチョのあひる顔にすると、商品とクーヤちゃんの繋がりが一目でバレてしまうので、パンダちゃんの顔にしよう!って話になったのです。
「これでいいや!」
「じゃあ色を塗ってくからな~」
レオナねえが、黄色の円を黒で縁取り、円の中に描かれたパンダちゃんに色を塗っていく。そしてパンダの顔の下に、この世界の文字で『パンダ』と書いてもらう。
ガサツなレオナねえにしては丁寧な仕事で、満足のいくロゴが完成した!
「完成ーーーーー!」
「レオナねえ、お絵描き上手いね!文句無しだよ!」
「結構単純な絵だからな~。でもこういうのは単純な絵の方が良いんだ。これくらいならハンコにも出来るだろ」
「なるほど!」
この世界って地味にハンコの性能が良いんですよ。
魔法で簡単に作れるらしくて、水に濡れても流れないインクなんかも普通にある。
とにかくお絵描きが終われば、こっちのお仕事は終了なのです。
おっちゃんズの話は長引いたけど、レオナねえとチョコレートを賭けて遊んでたので退屈しないで済んだ。一人じゃなくて良かったよホント。
「待たせてすまなかったな。じゃあ後は役所に行って終了だ!」
「やっとか、待ちくたびれたぜ!」
「絵描いたよ!」
「どれ・・・、ふハハハ!何だこりゃ!!」
「ウチにいたパンダちゃんの顔だぞ」
「パンダちゃん?ああ!そういやアレって何の動物なんだ?あんなの今まで一度も見たことねえぞ!」
そういやライガーさんが聞いて来なかったから、何も教えてないんだよね。
5歳にして召喚士だってこと、白状した方がいいのかなあ・・・。
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